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ばーちゃん一人暮らしに戻る

…とりあえず…あたしはアカネの気が済むまで待つか…と思ったが、一つ気になる事が浮上したんで聞いてみた。


「なあ、くろぶち。レベル5は毎回いろんな場所に移動してるだろ?新聞に注意報が出るけどさ、あれって何を基準に移動してるのが分かるんだい?」


レベル5は少しずつ移動してるとかじゃなくって、東北に出たり沖縄に出たり また北海道に出たりとバラバラなんだよね。

新聞に”マモノ”予報まで出てるのに、今更…って?いやさ、その予報だってどうやって出してんだか知らないし。それも、ついでに聞いてみた。


「…ばーちゃん、めんどくさいこと ばっかり…」


くろぶちが溜め息を吐く。…可愛い。


「レベル5、でるとき じば がつよくなる。たぶん それを そくていしてるとおもう。でるばしょは…」


言い淀んで小鉄をチラッと見る。それから少し考えるように黙り込んでしまった。あたしはフウ…と息を吐いて小鉄を抱き上げる。


「分かった。言えないなら、いいさ。さーて!アカネ、そろそろ帰ろう」


サクッと気持ちを切り替えて、次回に備えましょうかね!



…で、さっきの夜食に繋がるんだよ。長くて済まないね!


え?なんか、あたしが偉そうだって?…まあ、さ、この…何というか醸し出す熟年のカホリってやつが…あー、自分で言ってて空しい…。とりあえず、何のかのと遠慮しないで小鉄やくろぶちに疑問を投げかけるのが あたしなもんだから…自然とね、まとめ役的な感じ?になってるだけだよ。


「ごちそうさまでした!」


三人はちゃんと挨拶して、食器を洗って帰って行った。

あたしは漸く変身を解く事が出来てホッとすると、居間に転がった。この時間から布団に入ったら、間違いなく昼まで寝ちゃうからね。野外活動をした日は、仮眠を取って凌ぐ事にしたんだ。


「ばぁちゃん…くろぶち、いってないこと、ある…」


「うん?」


何やら小鉄が思い詰めた感じで言ってきた。

言いたいけど、どうしよう…そんな躊躇が見て取れるので 小鉄が話すのをジッと待つ。


「あのね…レベル5、でる ばしょのこと…あいてむの ことも…」


「んえ?」


余りの事に変な声が出ちまったよ…。


「…えっと…小鉄や、そいつは あたしに言って良かったのかい?」


小鉄は耳をピピピッと小刻みに揺らして あたしを見た。もう、それだけで分かるだろう?「言っちゃダメ」な事だったって。


「う~ん…」


あたしは小さく唸ると体を起こして小鉄を抱き上げた。

柔らかく温かい…旦那が居なくなってからは、この温もりにどれだけ助けられた事か…。あたしにとっては何よりも大切な家族。そんな小鉄が、言っちゃいけないけど あたしに伝えたかった事。まぁね。もしかしたら小鉄の勘違いかも知れないし、単純に…何かの理由でくろぶちが詳細を伝えないだけかも知れない。何となく秘密主義っぽい感じがするしねぇ…あの顔で…いや、アレはアレで可愛いんだけどさ…。


「小鉄や、ありがとうね?きっと、くろぶちにも考えがあるんだろうさ。

あたしの質問はくろぶちにとって面倒な事みたいだし?それに”どんなアイテムになるんだ?”って聞いた時は”条件が合えばわかる”って答えただろう?あの時のくろぶちはニンマリ笑いをしたけど、ちょっとぎこちなかったからね…。多分、くろぶちも分かってないんじゃないのか?って思ったんだけど…」


「…そう、かな…?」


「そう、かもしれない。それに、あたしはねぇ…。小鉄が傍に居てくれたら、いくらでも頑張れるから…」


あたしは小鉄の頭に頬を擦り付ける。この部分の独特の柔らかさは…もう、クセになるよな!ああ、シアワセ…!自分がどんだけお手軽なのかと思いつつも、この幸福感は譲れない!


なんてやってる内に、柱時計が鳴り いつもの生活が始まる。


この日、あたしは決めたんだ。

くろぶちがこの世界の活動の要として動くなら、あたしはくろぶちにイロイロと聞いておくべき事がある。もちろん、あの子たちの事も。今度、呼び出されたら…終わった後にでも、少し オハナシさせてもらいましょってね。


だってさ、あの子たちは目的があって…それをエサにこの世界に放り込まれている。でも、あたしは違う…。恐らく、ここは本当にあたしの”夢の中”で この仮想世界との懸け橋にされているんだと思う。だから”望み”なんて必要なかったんだろう…。なんで”あたし”なのかは分からないけどね。どうせ答えは貰え無いだろうけど、その辺りも聞きたい。


なんて思ってはいるものの…あれからレベル3までしか出て来ないんで、あたしらは日常生活を送っている。その間に亜里の旦那も戻って来た。会社でエアバスを押さえて出向している社員たちを順次 地元へ帰しているそうだ。良い会社だね!


亜里が「夜はウチに来て!一緒に居て欲しいの!」と言うが…正直、一人の方が気楽だからね。亜里の旦那さんも本当に良い人で あたしの心配してくれたんだけどねぇ…。亜里にも旦那さんにも、丁重にお断りして帰したよ。邪魔したくないしさ。…いや、しかし…良いよねえ…本当に好きあってる二人ってのは、見ているだけでもほっこりするじゃないか…。


早々に店を閉めたあたしは、居間に座って深く息を吐いた。

どんな形であれ、いきなり二人の生活を強いられていたんだ。亜里には悪いが、これからは余計な気を遣わなくて済むと思うと…正直ホッとするね…。


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