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「…そういえば、何で”ばーちゃん”なんて呼ばれてるのぉ?」


場の雰囲気を戻すかのように、おどけた様子で質問してくるアカネ。

急に振られて「うっ」と詰まる。答えようがない。


「…えぇ…っと…。あ、愛称ってやつ…かな…?」


お面で見えないだろうが、目が泳ぐのを抑えつつ 何とか笑顔を作って苦しい答えを絞り出す。くろぶちがニヤケているのが悔しいが、ここでお面を外す程の度胸は無い。なんで素顔のままにしちまったんだか…と嘆いた所で後の祭りなので、これもどうしようもない。


ボォンボォン…


夜の間は鳴らない様になっている柱時計が朝5時を知らせた。

寝室の方で亜里が起き出した音がする。先にも言ったが、この世界の住人は決まったシステムに嵌められている気がする。もし、この柱時計が鳴らなかったら…そのまま眠り続けるんじゃないだろうかとさえ思える。


「あら、嫌だ。もうこんな時間?いつの間にって感じ!タエちゃん、お邪魔しました!アラミス、急いで帰ってお風呂に入らなきゃ。今日もお仕事頑張らなくちゃね!」


立ち上がり、くろぶちを抱き上げるアカネ。アカネはこの世界でも、ちゃんと仕事をしているようだ。逞しいねぇ。


「ばいばい、タエちゃん。また近々、会いましょうねぇ!」


「あ…」


あたしが何かを言う前に 手を振って姿を消すアカネ。


「テレポーテーション…?」


「ばぁちゃん、あり、くる。へんしん」


「お?あ、ああ、そうか」


慌てて変身を解こうとしたが、やはりすぐには解き方が分からずトイレに籠城する羽目になった。あたしってば…本当に、良いトコ無しじゃないか?



それから暫くの間はレベル5が出る事もなかったし、あたしは魔法少女の練習と称して毎晩のように小鉄と家を抜け出しては様々な魔法を試してみた。その結果、出来る事と苦手な事、出来ない事がハッキリと分かるようになった。


所謂、パワー系の魔法は使えない。得意なのは光魔法とマジックアイテムを駆使した戦い方のようだ。まあ、相手がドロドロ系?の”マモノ”という設定なのだから当然と言えば当然なのかもしれないけどね。ついでに言えば、魔法は際限なく使える訳では無くて一応は条件とかあるっぽい。


あたしで言うなら、連続では光魔法を使えない。一度使ったら他の魔法かアイテムを使ってからじゃないと使えないんだ。だから初めての時、二度目の魔法が使えなかったのさ。変な仕様だよ、全く…。

ちなみに、あたしは地味に魔法を発動するけどさ。他の三人はちゃんと技名を言って発動させんだよ。キラキラ~のシャランラ~だよ。くそ…なんであたしは決め台詞すらないんだ…もう一度カード選ぶ所からやり直したい…。お面ヤダ…。


あ、ちなみにアイテムが凄いんだよ!チョーカーは弓…アーチェリーにもなるしボウガンにもなるんだ!一度に使える弾数は40。手首のシャラシャラ金鎖は、両手首を重ねると金の石つぶてがドワーッと出るんだよ。ドワーッと!

これにプラスして、そこそこ魔法が使えるんだから あたしってば優秀なんじゃないかい?


んで、その練習中に同じく魔法少女しているリナとカナコに会ったんだ。

最も、それぞれ別の日に会ったんでね。四人が揃ったのは、あたしがここに来て二度目のレベル5が出た時だった。


その時に初めて、この世界が何なのか。何の目的があって連れて来られたのか。何をすれば終わりなのか を小鉄たちから聞く事が出来たんだが…。


「つまり…”マモノ”のせいで閉鎖空間になっているこの世界の開放が目的で、あたしたちが行動するのはレベル4と5が出る時だけ。現状、活動しているのは この4人だけなんだね?

出現場所にはあんたたちが連れて行ってくれて、帰りも送ってくれる。レベル4を退治すると、そのガラスみたいな欠片が出る事があって それをあんたたちが回収する。欠片の用途は、レベル5を倒す為のアイテムになる。で、合ってるね?」


言葉を切って確認の為にくろぶちを見る。頷くくろぶち。


「更に…あたしたちはレベル5を全部退治しないと元の世界には戻れない、と」


…とても退治出来そうにないんだがね…。

実際、あたしたちの魔法でどうにかなるとは思えないし…。そもそも何体居るのかも不明ってどういう事さ?それにレベル5を倒すアイテムってのが何なのか気になるが、くろぶちも良く分かっていないようで「はつどうじょうけん、あえば、わかる」としか答えてくれないんだ。


「…そう。だから、みんな、がんばってね」


ニマッと笑みを浮かべる くろぶち。


「やれやれ…。これって無理ゲーってやつじゃないのかい?」


「…でも、頑張らなきゃ。私、絶対に望みを叶えるんだから…!」


リナの言葉に、あたし以外の3人が強く頷いていた。

3人には何某かの要望とやらがあって、それをエサに連れて来られたんだね…。あたしは…うん。どう思い返しても「ゆめ、みる?」しか言われてないわ。

…まあ、良いか。この子たちだけじゃ不安だし、あたしも頑張るさ。


「…ていうかさ、大義名分っていうの?”マモノ”から住人たちを守る!とかないの?」


カナコが無邪気な顔でくろぶちに聞いている。くろぶちと小鉄は顔を見合わせてからカナコを見ると、ふるふると首を横に振った。…可愛い…。


「ない。このせかい、もとにもどすのが、もくてき」


「うん。やること、レベル5たおす、だけ」


「なんか…地味だよね?せっかくの魔法も戦闘も見てくれる人がいないなんて、勿体なくない?」


不満げに首を傾げるカナコ…。だけどさ、もう、とっとと倒してサッパリしたいってのが本音だし。余計な事言わないどくれ…。


「…カナちゃん、ちょっと、お話ししましょうか…」


アカネが目が笑ってないけど、めちゃくちゃ良い笑顔でカナコの顔を自分に向けて静かに小言を言い始めた。うん。アカネは実に良い子だよ。

チラと見ればリナとマスコットたちもウンウンと頷いているし、カナコは顔を包まれたままの状態で固まってるし…。コントでもしているような一幕で、あたしは吹き出しちまった。


「ちょっと~?何で笑うのよお?」


「や…アカネ、ごめん!だって、子供を叱るお母さんみたいでさ」


アカネは一瞬「ん?」て顔をしてから、へらりと笑うカナコをポイッと離して両手をパンパン叩いた。


「こんな子、産んだ覚えありません!」


不機嫌な顔をして、プイっと横を向くアカネ。

カナコがおずおずと近付いて「ごめんて!ちょっと刺激が欲しかっただけだし!」と一応 謝っているが…火に油を注いだようで、更に諭されている。


えーと…まあ、確かにね?

人助けして感謝されたり、人知れず大義を成したけど実は皆が知ってて祝ってくれる、とか…途中で濃い敵キャラ来たり、新キャラ出てきたらカッコ良い男だったとかラブイベントとか?そーいうイベントっていうかメリハリっていうか…あったら面白いかもしれんけどさ?


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