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3話 神素

*説明回です。

長くなりすぎるので、一旦説明のみで切りました。

少し物足りなくなるかもしれませんが、ぜひ読んでください!

神素(ミール)(もたら)した影響】


 遥か太古の時代、現生生物とは比べ物にならぬ巨大な動物たちが地上を支配していたとされる。その異様な威容と圧倒的な存在感から、発見者たちは彼らを「恐竜」と名付けた。


 言うまでもなく、当時の記録などは現存していない。現在確認されている人類の歴史は、おおよそ30万年前後に留まるとされ、遺跡や文献による推測にすぎない。それに対し、この巨大生物たちが地球上に存在した証拠が明らかとなったのは、実に近年に入ってからのことである。


 発見の契機となったのは、地層魔術学者ノエル・モリエル・グラード博士の研究であった。彼が独自に編み出した秘術〈記録の邂逅〉(メモリエント)は、あらゆる物質に宿る微細な記憶を抽出・解析する魔術体系とされている。


 博士は特定の地層をこの術式により解析し、想像を絶する悠久の過去、恐竜たちが繁栄していた時代の記憶を顕在化させることに成功した。そこに映し出されたのは、天より降り注ぐ無数の光──それは炎の如き破壊の力を伴っていた。


 博士はその現象を〈炎の雨〉(ブレイズレイン)と命名した。この光の正体こそが、恐竜たちを絶滅へと導いた災厄であったのだ。


 更なる解析の結果、博士はその原因となった岩石の存在に着目する。岩石の中には、この世界の自然元素とは異なる特異な成分が含まれていた。それが後に〈神素〉(ミール)と名付けられた外来元素である。


 〈神素〉(ミール)を纏った無数の岩石が天より降下し、この世界の生態系および魔力構造に多大な影響を及ぼしたとされる。


 この現象がいかにして発生したかは未だ解明されていないものの、〈神素〉(ミール)がこの世界に持ち込まれたことにより、新たな魔力要素が誕生したことは疑いようがない。


 今日の知的種族にとって欠かせぬ〈魔素〉(マナ)〈聖素〉(ライト)、さらには特定種族に固有の〈覇素〉(オロエ)〈変素〉(ノイル)も、すべてこの神素の影響下に生まれたと考えられている。


 神素の波動に適応できなかった生物の中には、異常な形態変化を遂げ、魔素を暴走させる存在──すなわち「魔獣」として現れるものも存在する。


 また、魔素(マナ)が長年に渡って奇跡的な条件下で集積された結果、意思と力を持つ存在が誕生した。それが悪魔であり、反対に〈聖素〉(ライト)の集合体は精霊と呼ばれるようになった。


 このように、神素(ミール)は世界の進化と歪曲の両面において決定的な役割を果たしたとされている。


 現在、世界を構成する主な知的種族として、以下のような存在が挙げられる:


 Ⅰ、〈人族〉(ヒューマ):最も人口が多く、種族固有の元素は持たないが、魔素と聖素の双方を巧みに扱う。ごく稀に、神素に適応した〈超越者〉(オーバー)が誕生する。


 Ⅱ、〈獣族〉(ガーマ):動物を祖とし突然変異的に進化した種族。多種多様であり、覇素を操る一方、魔素の適応力は乏しい。


 Ⅲ、〈エルフ族〉(エルフィ):最初に誕生した知的生命体とも言われる。聖素との親和性が高く、自然と共に生きる長寿の種。未確認の種族元素を持つという噂も存在する。


 Ⅳ、〈亜人族〉(ノーマ):人族が他種族と交配、または変異によって派生した種。ドワーフ、小人、ハーフエルフなど多数の分類がある。


 Ⅴ、〈魔族〉(マージ):現在、最も厳しい差別と迫害を受ける種族。変素(ノイル)を操ることができる。


 この他、悪魔族(ダーク)精霊族(スピリット)天使族エンジェル龍神族(ドラゴン)といった精神体存在が記録上は確認されているが、千年以上実体の目撃がなく、その真偽は定かではない。


 これらの知的種族は、度重なる争いと戦争を繰り返してきた。


 中でも歴史上に記された最大規模の戦争が「世界種族間戦争」であり、その中でも特に知られているのが、今から362年前、ミルス暦22年に勃発した〈第4次世界種族間戦争〉である。


 この大戦は、魔族が他種族に対して宣戦布告したことに端を発し、広範な地域と多くの種族を巻き込んだ。戦いは激化し、多くの命と文明を犠牲にしたが、最終的に魔王アミルガードが討たれ、戦争は終結を迎える。


 この戦いにおいて魔王を打倒した英雄こそ、ミルス・サラディン・アノマールであり、彼の生誕年に準じ以後の暦は「ミルス暦」として記されることとなった。


 戦争の原因は、魔族の扱う〈変素〉(ノイル)にあったとされている。変素(ノイル)はその名の通り、あらゆる元素へと変異・干渉可能な万能性を持ち、これを悪用しようとした魔族の行動が、他種族の恐怖と憎悪を招いたとされている。


 だが、筆者としてはこの通説に疑問を抱かざるを得ない。果たして、すべての責任が〈魔族〉(マージ)にあったのだろうか。歴史は常に勝者によって記される。いずれ真実が明かされる日が来ることを願ってやまない。



 ──『神素(ミール)が齎した影響』 ミルス暦384年 刊

 筆者:ガルズ・クエール

 参考文献:ノエル・モリエル・グラード博士『地層の真実 ~外来元素のメモリアル~』(紀元前430年)

第3話も最後までお読み頂きありがとうございます。


次話よりようやく物語の本筋となる本編が始まります。


ヒューマンドラマ要素もある異世界物語をお楽しみください。


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