9/54

9話「お魚料理」

船の食事はお魚料理が多い。お城ではパンとサラダと水しか口に出来なかったので、お魚を食べるのは久しぶりです。

祈りを捧げる聖女は肉や魚を食べない方がいいと言われ、限られた食材しか口に出来ませんでした。

「この白身魚のムニエル美味しいです」

「海藻のサラダもなかなかいけるな」

「スープも魚介のだしが効いてるね」

デリーさんとゲレさんと食卓を囲む。誰かと一緒に食事をするのも久しぶり。いつも部屋で一人で食べていたから。

「リーゼロッテ、食事が済んだらあたしの部屋に来ておくれ」

「えっ？」

「あたしの服をあんた用にリメイクしようと思ってね」

「私の服、そんなにみっともないですか？」

自室で絵を描いているときに王太子殿下に呼ばれ部屋を出て、そのあとすぐ城を追い出されました。

なので私の着ているのは、聖女の使う白いローブの上に白のスモック。絵の具があちこちについていて、お世辞にも綺麗な服とは言えません。

一晩経ち服についた絵の具の匂いが消えたので、昨日ほど臭わないとは思いますが……。

「そういうわけじゃないんだけど、服が余ってるからさ」

ゲレさんが苦笑いを浮かべ言葉を濁す。

「リーゼロッテ気にするな、こいつは職業柄服装にうるさいんだ」

ゲレさんのお仕事はお針子でしたね。

「こんなに素材のいい美人さんが目の前にいるのに、そのままにしておくのはもったいないなくてねぇ」

美人って誰のことですか？

「そういうわけだからあたしの部屋に来ておくれ、決まり」

「……はい」

ゲレさんの勢いに押し切られてしまいました。

少しでも面白いと思っていただけたら、広告の下にある☆で評価してもらえると嬉しいです。