改14話「門番」
・いつ
女神暦818年5月7日 夕方
・どこで
ルーデンドルフ帝国、帝都、お城
・誰が
リアーナ、ドミニク、ゲルダ、門番、アルドリック、カイル
・服装
リアーナ→青いドレス(ゲルダの お古)
ドミニク→鍛冶屋っぽい格好、白いシャツに茶色いズボン
ゲルダ→お針子っぽい格好、茶色と緑の普段着用のドレス
アルドリック→黒を基調に、青と黄色を差し色に使ったジュストコール
カイル→薄い紫の軍服
建物
ルーデンドルフ城
赤い屋根、白い壁、4階建て。
城の1階
食堂、キッチン、大広間、ガードルーム、倉庫など
城の2階
ダンスホール、図書館、サロン、謁見の間、ゲストルームなど
城の3階
皇族の寝室、書斎、リアーナの部屋、祈りの間、皇族のバスルーム、皇族の子供部屋など
城の4階
天文台、音楽室、絵の展示室、書斎、展望デッキ
敷地内
噴水、ガゼボ、人工池、バラ園、花壇、薬草園、果樹園、騎士の宿舎、鍛冶工房、騎士の訓練場、魔導士の研修所、魔導士の宿舎、診療所など
城の周りには堀と高い柵。
※ルーデンドルフ城の屋根の色。青から赤に変更。設定を忘れてニクラス公爵家の屋根を青い色にしてしまったため。
途中休憩を挟みながら来たので、馬車はその日の昼下がりに、目的地に着きました。
「リアーナの恋人の住んでる家って……ここなのかい?」
馬車を降りたドミニクさんとゲルダさんは、口を大きく開けて建物を見上げている。
「はい、多分」
高い塀の向こうに赤い屋根の立派な建物が見える。
「いやこれは家っていうか、これは城だろ……?」
アルドリック様はルーデンドルフ帝国の第四皇子。
帝都のお城に住んでるはず。
「俺達はこれでも皇族専属の鍛冶師とお針子だ。
城は見慣れてる。
だから城の大きさに驚いてる訳じゃない」
「リアーナの恋人がお城に住んでる事に驚いてるんだよ。
リアーナの恋人は皇族だったのかい!?」
「そんなわけないだろ!
城で住み込みで働いている、魔導士か騎士か文官の仲に恋人がいるってことだろ!」
「なんだそういうことかい。
城には騎士や魔導士の宿舎があるからね」
お二人になんて説明しましょう?
私の友達がこの国の第四皇子様だと言ったら、ドミニクさんとゲルダさんは信じてくれるでしょうか?
「おい、そこで何をしている!」
門の前でじっとしていたら、門番さんに怪しまれてしまった。
「なんだ、鍛冶師のドミニクさんと、お針子のゲルダさんじゃないか」
門番さんは、ドミニクさんとゲルダさんの知り合いのようだ。
「そんなところにぼけっと立ち尽くしてどうしたんだ?
二人とも休暇じゃなかったのか?
ここは皇族や貴族が通る正門だぜ。
城に入るなら裏に回ってくれ」
怪しい人物だと思われ、捕まるのは回避でき、私は安堵の息を吐いた。
「一緒にいるその少女は二人の知り合いかい?」
門番さんが私をジロリと見た。
「旅の途中で知り合った子だよ。
夫婦でとってもお世話になったから、恩返しがしたくて、この子の恋人探しを手伝ってるのさ」
「この子の恋人は、城に住んでるみたいなんだよ」
事情を知った門番さんが態度を軟化させる。
「そういうことか。
人探しなら俺も力になるぜ。
お嬢さん誰を探してるんだ?
文官かい? 武官かい?
身分証のない人間を城には入れられないが、連れて来ることはできるぜ。
職業柄、城の中に知り合いは多いんだ」
優しそうな門番さんで助かった。
アルドリック様からのお手紙を見せたら、お城の中に入れてくれるでしょうか?
「あの、この手紙を書いた方にお会いしたいのですが……」
私は門番さんに手紙を見せた。
「どれどれ……。
こっ……この蝋印は……!?」
手紙に押された蝋印を見た門番さんが、目を見開き、悲鳴のような声を上げた。
「銀色の髪、すみれ色の瞳……!
よろしければ、貴方様のお名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」
門番さんが姿勢をただし、急に敬語を使い出した。
「リアーナと申します」
「リアーナ様!
もしや家名は……『ニクラス』では!?」
門番さんは、どうして私の家名をご存知なのでしょうか?
手紙の裏面しか見せていないのに。
それにしても門番さんのこの慌てぶりは……?
「そうです……。
というよりそうでした」
実家から勘当されたので、もうニクラスの姓は名乗れない。
「やはりそうでしたか!
気軽に話しかけてしまい申し訳ありませんでした!
どうぞ中にお入りください!」
門番さんはやけに萎縮していた。
門番さんの態度が急変したことに、ドミニクさんもゲルダさんも驚いていた。