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妹に全てを奪われた元最高聖女は隣国の皇太子に溺愛される・完結【第12回ネット小説大賞コミック部門入賞】  作者: まほりろ
改稿版

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改11話「魚に襲われた男」


 

「何かあったのか?」

 廊下が騒がしいのに気づき、ドミニクさんがドアを開ける。

 タオルや薬箱を持った船員さんが、甲板に続く階段に向かって走っていく。

 ドミニクさんの質問に、答える余裕もないようだ。

「私、見てきます!」

 先ほど、廊下から「船医を呼べ」と聞こえた。

 もう聖女ではありませんが、私の回復魔法が何かの役に立つかもしれない!

 誰かが怪我してるかもしれないのに、船室でじっとしているなんてできない!

「あたしも行くよ!」

「俺も!」

 二人が一緒に来てくれるなら心強い。

 私はドミニクさんとゲルダさんと共に甲板に向かった。


 甲板に出ると、お腹から血を流して倒れている人が見えた。

 倒れていたのは、船員の服を着た二十代後半ぐらいの男性だ。

 彼の横には釣り竿があり、口が槍のように尖った子供の背丈ぐらいある細長い魚が横たわっていた。

 魚のお腹には複数の槍が刺さり、既に死んでいるようだ。

 彼の周りには不安そうな顔をする船員さんや、その様子を心配そうに眺める乗客が集まっていた。

「何があったんですか?」

 私は近くにいた船員さんに声をかけた。

 声をかけた船員さんは、真っ青な顔をしていて体が小刻みに震えていた。

「あ……あいつと釣りをしていたんだ。

 あいつの竿に魚がかかったんで、釣り上げたら口の尖った魚が出てきた……!

 魚はあいつの腹に突き刺さった……!」

 彼は震えながら、事情を説明してくれた。

 この船に乗るとき、魔物よけの結界を張った。

 口の尖った魚は魔物ではない。

 結界をすり抜けて入ってきてしまったようだ。

「船医はどこにいる!? まだ来ないのか!?」

 倒れている男性の腹部にタオルを当て、止血をしていた船員が叫ぶ。

「そ……それが船医の野郎、食堂で飲んだくれてまして……」

 彼の問いに別の船員が答えた。

「畜生! こんなときに何やってやがる!

 あいつは首だ! 鮫の餌にしてやる!」

 もう黙って見ていられません!

「あの! 私に治療させてください!」

 私は、人混みをかき分け倒れている人に駆け寄った。

「あんた誰だ? 貴族のお嬢様か?

 お嬢様にできることはないから下がってくれ!」

 止血していた船員さんは、私の格好を見て貴族だと勘違いしたようだ。

 怪訝そうな顔でこちらを睨んでいる。

 家を勘当されたので今の私は平民だ。

 そんなことは今はどうでもいい。

「私は貴族ではありません!

 ですが回復魔法を使えます!

 私の魔法なら、この人を助けられるかもしれません!」 

「回復魔法を使えるのか?

 頼む! こいつを助けてくれ!」

 私は、倒れている男性の手を取った。

 脈が弱く、今にも途切れそうだった。

 倒れている男性は、顔から血の気が引き、苦しげに息をしていた。

 お願い! 間に合って!

最大(マクシムム)回復ベッセルング!」

 私が呪文を唱えると男性の体を淡い光が包んだ。

 光が消えると、男性は目を開けた。

 脈が強くなっている。

 顔に血の気が戻り、止血していたタオルをどけると男性の傷口が綺麗に塞がっていた。

「あれ? オレ何してたんだっけ? なんで血まみれなんだ??」

 怪我をしていた男性が、ぼんやりとした顔で上半身を起こす。

 彼が助かったことが分かり、周りから歓声が起きた。

 良かった。

 助けることができた。

 私は治療の為に握っていた手をそっと離した。

「最上級の回復魔法をあんなにあっさりと……。

 あ、あんたはいったい……?

 何者なんだ……?」

 倒れた男性の止血をしていた船員さんが、ポカンとした顔で私を見ていた。

 気付けば甲板に集まった全員の視線が私に集まっていた。


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