表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

22/54

22話「この馬鹿息子!」ざまぁ回



「この馬鹿息子がぁぁああああっっ!!」


「ぐべぶごぉぉぉぉお゛お゛っっ!!」


玉座の間に入るとへーウィットは待ち構えていた国王にグーで殴られた。


へーウィットの身体は三回転半し床に激突した。


国王は年は取っているが大柄で、今でも軍人に交じり剣の稽古をしている。対するへーウィットは剣術の授業も棒術の授業も仮病を使ってサボる、ひょろひょろのもやし。まるで勝負にならない。


国王の大きな拳で殴られ、へーウィットの目の前にお星様が飛んでいた。


「わしが留守にしている間にリーゼロッテと婚約破棄し、役立たずのミラと勝手に婚約しただとぉぉ!! その上リーゼロッテに贈るはずだったアンドヴァラナウトの指輪をミラごときにくれてやっただとっっ!!」


国王は眉間に深いしわを作り、額に青筋を浮かべ、へーウィットを怒鳴りつけた。


叱られたへーウィットは殴られた頬を抑え、真っ青な顔で小刻みに震えていた。


「ち、父上……ミラごときとはあんまりです、父上もミラをかわいがっていたではありませんか……」


国王はミラを見るたびに、若いのによく働く聖女だ、素晴らしい、気の利いた娘だ、可愛らしい、と称賛していた。


「リーゼロッテの妹だから世辞を言ってやったんだ! それを勘違いしてつけ上がりおってあのあばずれが! あんな出来損ないの聖女! リーゼロッテの妹でなければ視界にも入れんわ!!」


国王はつばを飛ばしながらへーウィットを罵った。


自分の息子でなければ斬り殺してやりたいほど、国王は憤怒(ふんぬ)にわなないていた。


「希少なアンドヴァラナウトの指輪を、なぜミラなんぞに贈った!!」


国王がへーウィットの胸ぐらを掴み上げる。


「ひぃぃぃ……!」


また殴られると思ったへーウィットは顔を自身の腕でガードした。


「あの指輪は一度嵌めたら死んでも抜けぬのだぞ!」


「べべべべべ……弁償しますっ!」


「弁償するだと? アンドヴァラナウトの指輪を作るのにいくらかかったと思っている!」


「へっ?」


国王の問いにへーウィットが間抜けな声を上げる。


「国家予算三年分だ!」


「ひっ……! こっ、こここ……国家予算の三年分……!」


お馬鹿なへーウィットには国家予算がどれほどの額か分かっていない、しかし自分のお小遣いでは足りないことは理解できたらしい。


「国内外からよりすぐりの学者を百人集め、三年の歳月と三年分の国家予算を費やして作ったアンドヴァラナウトの指輪を、選りにも選ってわしの留守中に役立たずの小娘にくれてやるとはな!!」


国王は怒りに任せへーウィットのみぞおちにもう一発お見舞いした。


「お゛げごぶぉぉぉぉっっ……!!」


へーウィットがみぞおちを押さえうずくまる。


「リーゼロッテは普通の聖女の一万倍の魔力量を有している! そのリーゼロッテにアンドヴァラナウトの指輪を付け魔力量を百倍にし、ネーベル大陸中に結界を張る計画だったのだ!」


国王はアンドヴァラナウトの指輪を使った計画について話し始めた。


「アンドヴァラナウトの指輪の製作費用は大陸中に結界を張る事を条件に他国に出させた! アンドヴァラナウトが完成したら各国に結界の使用料として多額の金銭を要求する公算だった!」


国王は眉間にしわを寄せ、奥歯を噛み締めた。


「リーゼロッテがいなくなり、アンドヴァラナウトの指輪が使い物にならないことが他国に知られたらどうなると思う?」


国王の問いかけにへーウィットは答えられない。


「アンドヴァラナウトの製作に掛かった金を返せと他国の要人が借用書を持って押しかけてくる!」


「そんな……!」


「今まで大陸中に結界を張ることを餌に我が国に有利な条件で条約を結んできた! リーゼロッテがいないことが他国に知られたら……戦争になる!」


「せっ……戦争っっ!」


ポンコツで阿呆で鳥頭のへーウィットがようやく事態の深刻さを理解した。




少しでも面白いと思っていただけたら、広告の下にある☆で評価してもらえると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ