20話「最高聖女ミラの実力」ざまぁ回
一方その頃、ネーベル大陸・ハルシュタイン王国では新しく最高聖女の地位に就いたミラが、初めての仕事に取り掛かろうとしていた。
ミラは最高聖女の職に就いてから一週間仕事を怠け、王太子へーウィットと床を共にし快楽にふけっていた。
ミラは最高聖女になって初めて王宮内にある神殿を訪れた。日はとっくに昇り中天にかかろうとしていた。
リーゼロッテは日が昇る前に神殿に訪れ水晶に魔力を流し結界を張っていたというのに……。
「だる〜い、ぱぱっと結界を張って午後はへーウィット様に宝石商を呼んでもらいましょう、帽子職人と靴職人も呼んでいただきたいわ」
ミラは王国で最近流行しているドレスやアクセサリーで身を包んでいた。
たくさんのアクセサリーをゴテゴテと身につけたので、派手なのだがセンスはなかった。
実はそれらのものは、帝国でかなり昔に流行ったものなのだが、ミラはそれを知らない。
ミラが身に着けているものは、全て王太子へーウィットからの贈り物でした。
リーゼロッテがへーウィットの婚約者だったとき、へーウィットはリーゼロッテにペン一本、ハンカチ一枚贈ったことがありません。
キラキラと輝く派手なドレスに身を包んだミラが水晶に手をかざす。
リーゼロッテが神殿を訪れるときは、白無地の木綿の服を身に着けていた。
それ以外の服が与えられていなかったからだ。
清廉で質素、それが最高聖女であったときのリーゼロッテのイメージだった。
きらびやかなドレスを身にまとい香水の匂いがきついミラは、神殿よりもパーティー会場の方が似合っていた。
神官や聖女はミラの華美な装いを見て眉をしかめた、しかし王太子の婚約者なので誰も何も言えなかった。
当のミラはそんな神官たちの視線など気にも留めなかった。
「今日から私が最高聖女よ、みんな私を崇めたてまつり、ちやほやしなさい」
自信たっぷりな顔でミラが水晶に手をかざす。アンドヴァラナウトの指輪が禍々しい光を放った。
「えっ……? ちょっと……何これ?! 何なの……!!」
呆然とするミラの体から、アンドヴァラナウトの指輪を通じ魔力が流れていく。
「ひっ……! いや……! 誰か……誰か止めてっ……!!」
自分の想像を超える量の魔力が水晶に流れ、ミラが恐怖に顔を歪めた。
「ガァァっ! ゲボォォォッッ!!」
体内にある魔力を全て奪われ、ミラは血を吐いてその場に崩れ落ちた。
しかしミラの魔力を全て奪っても、この国全土を覆う結界を張ることは出来なかった。
ミラが魔力を百倍にするアンドヴァラナウトの指輪を装備し全魔力を注ぎ込んで張れたのは、王都をやっと覆う程度の小さな結界だった。
しかしこれはハルシュタイン王国の崩壊の序曲に過ぎなかった。
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