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17話「告白」


「いつリーゼロッテ様が訪ねて来てもいいように、【リーゼロッテ・ニクラス】という名の銀色の髪に紫の瞳の若い女性が訪ねてきたら、すぐにアルドリック様のお部屋にお通しするように、門番にしつこいくらい何度も言い聞かせていたんですよ」


「えっ……?」


なるほどそれで門番さんは私が名乗ったとき動揺していたのですね。門番さんが私の家名を知っていた理由が分かりました。


「いや、それはなんて言うか……! カイル余計なことを言うな!」


「援護射撃です、リーゼロッテ様はほんわかしていらっしゃるので、遠回しの言い方では気づかれませんよ」


慌てふためくアルドリック様と、しれっとした顔で淡々と話すカイル様。お二人はとても仲が良いみたいです。主と臣下というより古くからのお友達のように見えます。


「援護射撃?」


「なんでもない! こ、こちらの話だ」


「そうなんですか」


そういう言い方をされると、仲間はずれにされたみたいでちょっと寂しいです。


「リーゼロッテ様、皇太子殿下はニクラス公爵家に毎年お手紙を送っていたのですよ」


「えっ?」


私が受け取ったお手紙は一通だけでしたが、アルドリック様は他にもお手紙を送ってくださっていたのですね。


「カイル! 余計なことを言うな!」


アルドリック様がキッとカイル様を見据える。


「ごめんなさい、私ずっとお返事も書けなくて」


「よい、気にするな。どうせそなたの手元には届いていなかったのであろう?」


「申し訳ありません。私が受け取ったのは先日アルドリック様がお出しになった一通だけです」


その一通は十年振りに屋敷に戻ったとき、郵便配達の人から直接受け取るという、奇跡のような形で手にしました。


屋敷を出るのがあと五分早くても、五分遅くてもアルドリック様のお手紙を受け取れませんでした。


私は行く宛もなく彷徨(さまよ)い、この世界に絶望し死んでいたかもしれません。


あのときアルドリック様からのお手紙を受け取ることが出来て本当に良かったです。


「そなたが謝ることではない、悪いのはそなたに手紙を渡さなかった公爵家の者たちだ」


ニクラス公爵家に届いたアルドリック様からのお手紙は、お父様かお義母様に処分されてしまった可能性が高いです。


「他国の王太子の婚約者で最高聖女になったそなたに手紙を出した私が悪いのだ、身の程知らずだった。だから気に病まないでくれ」


アルドリック様が私の手に自身の手を重ねる。


「一通だけでもそなたの手に渡ってよかった。その一通がそなたをルーデンドルフ帝国に導いてくれたのだから」


アルドリック様の手が私の頬に触れ、溢れ落ちそうな涙を拭って下さった。


「アルドリック様……」


「リーゼロッテ……」


アルドリック様の顔が近づいてくる……。


「ゴホン! ゴホン! ゴホン!! だ〜か〜ら〜距離が近いです! 皇太子殿下、そういうことがしたいならリーゼロッテ様にプロポーズしてからにしてください!」


カイル様の咳払いでアルドリック様の手が離れていく。


私はうつむいて両手で顔を覆う。


一度ならず二度までも接近し過ぎてしまうなんて、恥ずかしい! 十年間会っていなくても幼い頃の距離感が抜けないものなのですね!


「プロ………何を言っているのだカイル!」


アルドリック様がひどく狼狽えています。


「えっ? 結婚する気もないのにリーゼロッテ様に手を出す気だったんですか? 最低ですね、死んでください……」 


カイル様がアルドリック様に冷たい視線を送る。


「サラッと酷いことを言うな! 私はリーゼロッテといい加減な気持ちで付き合うつもりはない! 真剣だ! 本気なのだ! リーゼロッテのためなら命だって捨てられる!!」


「ならサクッと告白してください、リーゼロッテ様はお美しく優雅で気品があります。リーゼロッテ様は今フリーですから、放っておくと秒で悪い虫が付きますよ」


「分かっている! だがその……こ、心の準備が……」


「心の準備っていつできるんですか? 今日ですか? 明日ですか? 明後日ですか? それとも……十年後ですか? そんなに時間をかけていたら、リーゼロッテ様は確実に他の男のものになってますよ!」


「くっ……! お前容赦ないな」


「ぐだぐだしてる主の尻を叩くのも臣下の務めです」


「分かった、今からする」


「それがいいですね、俺あっち向いてますから」


カイル様が踵を返し窓の方を向く。


「リーゼロッテ……!」


アルドリック様がソファに座る私の前にひざまずき、私の手を取った。


「はい……?」


黒曜石の瞳で直視され、心臓がドキドキと音を立てる。


「幼い頃からそなたのことが好きだった、私と……けっ、けけけけけけけ…………結婚を前提につき合ってくれないか?」



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