1話「リーゼロッテ・ニクラス婚約を破棄される!」
第12回ネット小説大賞コミック部門入賞!
コミカライズ企画進行中です!
改稿前の原稿が1〜27話。
コミカライズの「原作」なとなるのはこちらのお話。
改稿版は私が無駄に手を加えてしまったもの。おまけの蛇足です。
「リーゼロッテ・ニクラス! 貴様は部屋に閉じこもり絵を描いてばかりで聖女の職務をおろそかにした! よって最高聖女の地位を剥奪し! 僕との婚約を破棄する!」
王太子殿下が頭から湯気を上げ私に人差し指を向けそう言い放つ。殿下の青い瞳は怒りの色に染まっていました。
「お言葉ですが殿下、私は最高聖女の務めを果たしております。毎朝水晶に祈り国中に結界を張っております。それに休息時間に絵を描くことは陛下の許可を得ております」
毎朝神殿の水晶の前で祈りハルシュタイン国全てを覆う結界を張るのが最高聖女としての私の仕事。
怪我人の治療をする聖女はたくさんいますが、結界を張る最高聖女は私一人。
結界を張るのは膨大な魔力がいる。一日分の魔力を使ってしまうので他の仕事は出来ない。
結界を張ったら残りは自由時間。絵を描くのが好きな私に、陛下は自由時間に絵を描けるよう絵の具やキャンバスを与えてくださった。
「うるさい! お前が炎を纏ったトカゲだの、八本足の馬だの、老人の生首だの、おぞましい絵を描いている間に、お前の妹のミラが聖女の仕事をしていたんだ! お前が部屋で遊んでいる間に、ミラはずっと怪我人の治療や人々の悩みを聞くなど辛い仕事をこなしていた!」
腹違いの妹のミラが王太子殿下の横にすっと立つ。
怪我人の治療が聖女の仕事なのは知っていました。ですが貧しい人の話を聞くのが聖女の仕事だとは知りませんでした。陛下はいつも「リーゼロッテは結界を張るだけでいい、残りの時間は好きに絵を描いていていいよ」と言ってくださったので。
怪我人の治療は魔力がないとできませんが、人々の悩みを聞くのは魔力がなくてもできました。もう少し陛下に聖女の仕事について聞くべきでした。
「お前よりもミラの方がずっと最高聖女にふさわしい! よって新しい婚約者には君の妹のミラを指名する! 新しい最高聖女にもな!」
王太子殿下がミラの肩に手を回す。
「お姉様、安心してください。お姉様の代わりに私が最高聖女としての役目を果たします。王太子殿下の婚約者としても最高聖女としても、お姉様よりも上手くやってみせますわ」
ミラが私を見てくすりと笑う。
「ですが結界を張る仕事はミラ一人では……」
私は最高聖女として八歳から王宮で暮らし、国中に結界を張ってきた。
それは私の魔力量が人並み外れて多かったから、対して妹のミラの魔力は平均より少し多い程度。ミラの魔力ではハルシュタイン国全土を覆う結界を張れない。
「王太子殿下の婚約者でなくとも構いません、最高聖女としての地位もいりません。ですが今まで通り結界を張るお仕事だけはさせてください!」