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会議

 俺たちは、山頂にある丘で街の様子を眺めていた。


 昨日は本当に疲れた。

 ★★★★★★


 濁流は次々と木々を飲み込み、山の上にいる俺たちに

 あと10mというところでようやく止まった

 この山の標高は、おそらく50mはあった。

 それだけの津波だったということだ。

 もし、ミツルの判断が遅ければ、

 途中で走るのをやめていれば……

 考えるのも恐ろしい。



 俺とミツルの目には街が波に飲み込まれ、

 消えてゆく様子が焼き付いていた。

 どれくらいの時間眺めていただろうか。

 水位が徐々に低くなっていく。

 ミツルの「計画を、練ろう」

 その言葉でようやく俺たちは動き出した。





「今後のことを考えよう」

 そう言って、ミツルはリュックからノートとシャーペンを取り出す。


 自転車の横に座りかけた瞬間。



 視界が揺れて周りの世界がスローモーションになる。

「またか」

 ミツルが叫ぶ。


 今度の揺れは大きいが短かった。

 10秒ほどで収まる。

「終わっ…………たのか?」

 そう呟いて立ちあがる。

「おそらく余震だろう」

 そう言って、ミツルは埃だらけの制服をはたく。


 再度ノートを開けようとしたミツルに

「もう、何も起きないよな」と尋ねる。

「何も起きないと信じたい」

 そういってミツルがノートを開ける。


「何も起きないな」

 安心した表情を浮かべるミツル。




 ゴゴゴゴゴゴゴ…………

 不穏な音が聞こえる。

 周りを見渡し、不足の事態に備える。

 ズザザザザザザァァァァ




 土砂崩れが起きた。

 山の斜面が崩れていく。

「ほら、言ったじゃないか」


「そんなこと言ってる場合か?」

 さっき登ってきた方の斜面が崩壊していく。

 慌てて、山頂の向こう側へと逃げる。

「まったく、ひどい目にあった」

 そういう、ミツルの手にはノートが広がられていた。

「これで話が進められる」

「よくこの状況で、そんな器用なことができるな」

 思わず突っ込んだ。

 この状況でノートを閉じない方が不思議だ。



「話をしよう」

 ミツルがそう言って、俺たち2人は地面に腰を下ろした。

「まず、この状況からして、俺たちがいるのは……」

「「異世界」」

 2人の声が揃う。

「さすがだな」

 と、俺にいうミツルだが、

 彼もおそらく気づいている。

「不思議なことがいくつかある」

 そう言ってミツルは俺にノートを見せる。

 ────────────

 身体

 ・何も食べていないのに腹が空かない。

 ・何も飲んでいないのに喉が渇かない。

 ・体力の向上

 物質

 ・食品だけが消えている。

 ・スマホの充電口がない。

 建物

 ・全てがボロボロ。というか瓦礫。

 ・火災にしては破片が大きい。

 ・河川敷から見えるはずの自宅マンションがない。

 ・橋も倒壊している

 ・建物の周囲に内部のものがない。

 ・自動車が一台も無い。

 ・街灯がつかない。


 その他

 ・虫が1匹もいない

 ・空気が美味しい。



 ────────────

 ミツルのノートにはびっしりといろんな推測が書いてある。

「まぁ、今気づいていることはこんな感じだな」

「俺が寝てる間にこんなことしてたのかよ」

 少し呆れた顔で返す。

「まぁ、夢にまで見た異世界だ。興奮していたのもある」

「そうか」

 と、話しているうちに日が暮れる。

「続きは明日」

 そう言って、眠りにつく。

 あまりにたくさんのことがありすぎた。


 ★★★★★★

 そして、異世界に来て3日目の朝を2人は迎える。

「おはよう」

 そんな会話を短くして、2人は山頂に向かう。

 そこに広がっていたのは、津波が引いて何も無くなった更地の街であった。

 そうして冒頭の部分に時は戻る。


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