私
『ねぇ、チホちゃんって知ってる?』
『最近流行ってるよね~3組の子も視たんだって!』
最近どこのクラスもこの話題で持ち切りである。件の【チホちゃん】というのは怪談の一種で、なんでも夢に女の子が出てきて自ら【チホちゃん】と名乗るんだとか。
ここまでなら単なる奇妙な夢で終わる話が、このチホちゃん夢を見た話を誰かにするとその人の夢に伝染するとかで学校中の噂になっている。
私は怪談の類は信用しない性質で、そもそも本人からの直接の報告じゃないと伝染らなく、また聞き等では効果がないというのが明らかにヒトが作った都市伝説の類だと思うからだ。
今回も3組の女子がチホちゃんを見てそれが又聞きの形で彼女達の耳に入った為、伝染の効果は無いという事だ。勿論彼女達の話を聞いた私にも伝染は無い。
「い、岩井さん、「チホちゃん」ってどう思う?」
クラスメイトの一人須藤カナエが話しかけてきた。
「私はこういうのあまり信用しないかな。須藤さんは信じるタイプ?」
「あ、うん、あのさ今日放課後いいかな?」
煮え切らない言い方が気になったが、放課後特に用事もないので学校近くの喫茶店で落ち合う約束をした。
先に喫茶店に着いた私はホットコーヒーを頼み須藤さんを待っていた。この喫茶店はこじんまりしていて中々好きだ。座席一つ一つが区切られていて、勉強や相談をするのに最適だ。営業マンが商談する時にもよく使われているみたいで、店内はスーツ姿の男性をよく見かける。
そんな落ち着いた店内で私が一番好きな店内奥の席に着き待ち合わせまで最近読み始めた小説を読み進めた。