ちょっといねむりした隙に謎の姫が僕に特大バイブを差し込もうとするので、とりあえず寝たふりを続けてみる
五月の良い感じに暖かい日差しを浴びながら、僕はベッドでウトウトとしていた。
ポテチを広げ漫画をパラパラ……そしてウトウト…………
(やっべ……この世の天国だわ…………)
気が付けば僕は船を漕いでいた。
(ZZZ……ZZZ…………)
―――カチ、ヴィィィィン
―――ヴヴ、ヴヴヴヴヴ……!
(ZZ……Z……?)
―――ヴヴ! ヴヴヴヴヴ!!
奇妙な振動音に気が付き僅かに開かれた眼。するとそこにはどちらか存じ上げぬ風体をした姫が一人、僕の部屋でごっついバイブを手にご満悦の笑みを浮かべて座っていた。
(……誰? て言うか何アレ?)
頭にティアラを乗せ煌びやかなドレスを着た女性。その出で立ちは紛う事無き姫スタイルなのだが、如何せんその手でうねりを挙げている特大御バイブが気になって仕方ない…………
(まさか僕の五丈原に城門特攻する気か―――!?)
そんな事をされてはBreakDownは免れない。目覚めの刻が訪れる事間違い無しだ!!
(兎に角分からない事だらけだ! 一先ずこのまま寝たふりを続けよう!!)
僕は薄目を開けたまま寝たふりを続けた。その間にも姫はご満悦の面持ちで、荒ぶる御バイブの躍動を眺めている。
(…………)
―――ヴィィィィン……
(…………)
―――ヴィィィィン…………
(……もしかして僕が起きるのを待っているのか?)
最初から隠密潜入(極太)が目的なら既に仕掛けている筈……さては僕の反応を見るのが目的か!!
僕はバッと跳ね上がる様に飛び起き、壁に背中を付けて城門を死守する構えを見せた。
「:╋★◯⊿〒〒♩☆?」
姫は聞いたことも無い国の言葉で僕に語りかけてきた。
(ははぁん……さては今流行りの【私ガイコクジンなんですが、ちょっとお尻良いですか詐欺】だな!!)
「それは何だ!?」
僕は自己主張の激しい御バイブさんを指差し姫スタイルの麗しき女性に問い掛けた。
「∩? χ⊃⇄*◐◑▽✓♪!」
大きい身振り手振りで説明らしきアクションを取る姫っちだが、まるで何を言っているのか不明だ。
(―――あ!)
僕はマイデスクの片隅から一時期流行りを見せた犬猫用通訳機械を取り出した。
―――ピッ!
『私は異世界から転移してきたアニャルナル姫です。これは同じく異世界から転生したアナアニャル王子です。何かの手違いでバイブーに転生してしまいました……』
どうやらこの二人?話を聞けば聞くほどに事情があるようで、元王子(単二電池二つ)が鍵となり城門を開くことで異世界に帰れるみたいなのだが、未だに錠役が見付からず僕に白羽の矢を立てたそうだ……。
(よりによって【私イセカイから来ました、ちょっとお尻良いですか詐欺】とは―――!!)
「断る!」
『そうですか!』
その後、気が付くと僕は気を失っていた。起きたときには謎の清涼感があり、部屋には誰も居なかった。ポテチは既に湿気って食べ頃を逃し、漫画は床に落ちている。
城門崩壊のリスク……略してオシリスクを無事回避した僕はその後、偶然にもあることに気が付く。それは―――
「やあ、また遊びに来たよ」
『ようこそおいでくださいました♪』
縦笛を城門特攻させて和音を奏でると異世界にワープ出来る荒技を身に付けた僕は、時々こうやって二人の様子を見に来ているのであった。
読んで頂きましてありがとうございました!
(*´д`*)