なぜなに!?イチカおねえちゃんの冒険者こうざー!!
草原で、我が最愛のいもうとたちと、サンドイッチを食べる。
もぐもぐもぐ。
もぐもぐもぐ。
もぐもぐ…。
そうやって、食後に三人で、草原に寝っ転がる。
空には入道雲が流れ、爽やかな風が俺たちを撫でる。
はっはっは、お風さんったら、お茶目だなあ。
すべてが静謐で、何もかもが満たされていた。
「「「あーー」」」
三人で合わせて、一言。
「「「もう死んでもいい・・・」」」
「バカ!おバカ!!!!!」
イチカお姉ちゃんが、三人をゆっくり引き起こして(正しくは二人、俺は蹴り飛ばされた)、
それから話し合いの時間だ。
イチカお姉ちゃんったら、まとめ役だなあ。
◇◆◇
「ほら、『木の棒』、集めてきたぞ!何に使うんだ!こんなもの!!」
草原には、何の変哲もない『木の棒』がずらりと並ぶ。
別にほっぽり出していても良かったのにわざわざ纏めて並べている。
こういうところに、イチカお姉ちゃんの性格が表れるんだなあ。
神様は、細部に宿る!!!!!
「ししょう!何をやるんすか!!」
「おにいちゃん!!おにいちゃん!!!!」
「ははは、慌てるでない、わこうどたちよ。」
大人の余裕。
いや、おにいちゃんの余裕…?
アイドルの余裕…、俺はアイドルではない、プロデューサー・・・?
いや、マネージャーだったのか!?
俺は、俺は・・・
「おい、どこに行っている!?戻ってこい!!」
「はっ!!!」
意識が戻って来る。
「危ない危ない、危うく根源に至るところだった・・・。」
「お姉ちゃん!ありがとう!!!」
「もう、いいから、はやく、せつめいしろ・・・」
イチカお姉ちゃんがぐったりしている。
誰だ!俺たちのイチカお姉ちゃんをこんな目に合わせたのは!!!
許せん!!!!
とまあ、それはそれとして。
「チミたち。チミたちはレベルというものを知っているかね。おほん。」
「知ってるっス!!!個々人のダンスの上手さの度合いを示すものっす!!!」
「別名アイドル係数!!!!」
「しってます!!!!いもうと度を表すパラメータのことです!!!!」
「別名おにいちゃんすきすき指数!!!!」
「そうなの?そうだったのか・・・。」
俺の今のレベルは、LV5。
自分が情けない。
こんなレベルでアイドルを名乗るなど!!
こんなレベルでお兄ちゃんを名乗るなど!!!!
これはもう、何が何でもLVを65534まで上げなくては!!!!
「お姉ちゃんと、いもうとちゃんのレベルを教えて貰おうか、おほんおほん!!」
「わたしはLV5っすーっ!!なんかおおかみさん倒してから、身体の調子が良くなったんス!!」
「わたしはLV3です。今まで生まれてこのかた、スライム以外を倒したことがありません!!!」
「そうだったんだ。」
最弱冒険者の名は伊達では無いという訳か。
「くっ・・・。私もLV3だ。」
ああ・・・。
ニカちゃんに抜かれているではないか。
「これは長女の座を譲り渡す日が近いという訳か・・・」
「ううううっ・・・」
落ち込むイチカお姉ちゃん。
「そんなこと無いっス!!!イチカお姉ちゃんがわたしより弱くなっても、お姉ちゃんはお姉ちゃんのままっス!!!」
「ああ!ニカ!!私の最愛の妹!!!!」
涙ぐむイチカお姉ちゃん。
「いざとなったら、私がお姉ちゃんを養ってあげるっス!!!一生わたしのヒモとして、私がダダ甘やかしてあげるっス!!」
「私も!私も甘やかす!!!おにいちゃんとの子供は、一番初めにイチカお姉ちゃんに抱かせてあげるから!!!!!」
「二人とも…。大好き!!!!」
「わたしもっス!!!!」
「お姉ちゃんたち!!!!」
ガシッ!!!と熱い円陣の中で、お互いを鼓舞し、励まし合う姉妹。
感動的な光景だ。
思わず涙ぐむおれ。
そうだ!!
俺は確かに誓ったのだ!!!
昨日アイドル街道をニカが進むと決めたあの瞬間から!!!!
イチカお姉ちゃんとニカに引きずられながら、いもうとと熱い抱擁を交わしたあの時から!!!!
この子たちを、もう誰にも『最弱冒険者』などど呼ばせないと!!!!!
「うおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
「やるぞ!!やったるぞ!!!!」
「まずはレベルを上げる!!!!まだまだスライムを倒しきっていない!!!」
「スライムの気持ちが分かるまで!!スライムを刈り尽くすのだ!!!!」
「スライムの気持ちになるですよ!!!!!」
燃える俺に何かを言いたげなイチカお姉ちゃん。
「おい、おまえ。」
「うん?」
「スライムを何百匹倒しても、何千匹倒しても、LVはずっと3のままだぞ・・・?」
「・・・」
そうなの?
◇◆◇
「しょうがない。無知なるお前らに、私が冒険者の何たるかを教えてやろう!!!」
三人そろって正座している中で、メガネ(伊達メガネ)を掛けたイチカお姉ちゃんが胸を張る。
大きな胸が、これ以上なく強調される!!!!!
やめてくれ!!
俺はどこに視線を向けていればいいんだ!!!!
このままでは教師と生徒の禁断の関係が始まってしまう!!!!!
俺の思考を全て察してくれたミクいもうとが、手で目隠しをしてくれる。
最高だ。
なんて気が利く、最高のいもうとなんだ!!!!!
「まず、レベルというものはだな、特定のモンスターを一定数倒した時に初めて上がるものなのだ。」
「特定のモンスター??」
「スライムなら、数十匹倒した時に、最大LV3まで上がる。」
「オークなら数匹で最大LV10まで。」
「ドラゴンはー・・・はい、そこのお前!!!」
「はいっス!!3匹倒せれば、LV50まで上がると語りつがれているっス!!!!」
「正解だ!!アメちゃんをやろう!!!!!」
「わーいっス!!!」
口の中でころころと飴玉を転がすニカちゃん。
かわいい。
属性でいうところのパッションというやつだ。
「更に、冒険者の武器もそうだ!!!」
「LV3のわたしとミクは、『木の棒』しか使えない!!!」
「LV10まで上がれば、ようやく『てつのつるぎ』だ!!!!」
「そ・し・て~~、はい、LV50になったら!?そこの手隠しをしている妹!!!!」
「はい!!!!『神剣:アポカリプス』が使えるようになると、ちまたで噂されています!!!!!」
「大正解だ!!アメちゃんを2個やろう!!!!!」
「わーい!!!でも手が塞がっています!!!!」
「気にするな!!私が直々に舐めさせる!!!くちをあーんしろ!!!!」
「あーん・・・」
「あああ!!あああああ!!!!私の妹はなんて可愛いんだ!!!!ちゅーしてもいいか!?いいよな!!これはもう誘ってるんだよな!!!!姉妹だから別にいいよな!!!???ノーカンだよな!!!!?????いいか!?いくぞ!!!!????」
「「駄目だ!!!(です!!!)」」
「なぜだ!!!!!」
「「そんなのは決まっている!!!(ます!!!!)」」
「おにいちゃんと初めにちゅーをしていいのは・・・」
「いもうとと初めにちゅーしていいのは・・・」
「いもうとだけと、世界が決めたからだ!!!!!」
「おにいちゃんだけと、世界が決めているからです!!!!!!!」
「ガ、ガーン!!!!!!」
がっくりとうなだれている(と思われる)イチカお姉ちゃん。
不憫だ。
「くそう!!!くそう!!!!!」
「『お姉ちゃん』より『お兄ちゃん』が偉いなど、誰が決めたと言うのだ!!!!!!!」
「わからん・・・それは人それぞれ、違うからだ・・・」
今の俺には、こう返すしかない・・・
『お兄ちゃん』と『お姉ちゃん』のどちらが偉いかなど・・・
わからん。
わかるはずも無い。
今の僕には、とてもじゃないが理解出来ない。
それでも、いつか本当の雌雄を決める時がくるのだ。
『お兄ちゃん』と『お姉ちゃん』の、運命を決める戦いが!!!!!
永遠に続く、果てしないバトルが!!!!!!
もしこの戦いが起きたとしても・・・
その戦いに、正義など、ない。
あるのは、『いもうとをただ純粋に愛する心』、それだけである。
「ころころころころ、おいひいです。」
口の中でころころと飴玉を転がすミクちゃん。
かわいい。
属性でいうところのキュートというやつだ。
目隠しされたまま、手を挙げる。
「はいはいはいはいはいはいはい!!!質問!!!!質問があります!!!!!」
「うむ!!!積極的に質問をする生徒は、先生は大好物だ!!!!何だ!!!!!何でも言ってみろ!!!先生の今日の下着の色か!!!??」
「そういうLVとか武器の所持制限って誰が決めてるんですか!!!???」
「低いLVの人が『神剣:アポカリプス』を使うとどうなるんですか!!??」
「捕まるんですか!!??」
「爆発するんですか!!!????」
「モンスターのドロップからじゃないと、武器って手に入らないんですか!!!????」
「LVと所持制限はしらん!!!多分神様だろう!!!!」
「捕まりも爆発もしない!!!!重かったり鞘から抜けなかったりいろいろだ!!!!」
「ドロップからだけって、アホ!!!武器屋が街の中にあるだろう!!!!」
「本来なら貴様は落第だ!!!!」
「でも知らないことをどんどん聞くのはいいことだ!!!!頭を撫でてやろう!!!!!」
マシンガン質問に対して、マシンガン回答で対応するお姉ちゃん。
最高だ!!
最高の女教師だ!!!!
これは、次の夏コミの題材は、決まったようなものだな・・・
期日が近い!!!綿密なネームを仕上げなくては!!!!!
もしくは、この世界で『ドキドキ♡イチカお姉ちゃんの個人レッスン♡♡』を開いてみてもいい。
開講1分後に生徒が集まりすぎて、猛烈な人口密度による台風が発生して、世界が終わる。
質問の回答のおまけに、頭を撫でてくるイチカお姉ちゃん。
やさしい。
属性でいうところの巨乳というやつだ。
「だからつくづくお前が『木の棒』を集めさせた理由が分からん!!」
「そんなの集めても、せいぜい薪にしかならん!!!」
「はっはっはっはっはっはっは!!!」
「いいだろう!見せてやる!!」
「俺のとっておきの秘密だ!!!!!」
「いいんすか?とっておきなのに!?」
「おにいちゃん、無理しなくても・・・」
いもうと達が気を使ってくる。
かまうものか。
この世のどこに、いもうとに隠し事をするお兄ちゃんがいるというのだ!!!!!
たとえいもうと達が許したとしても・・・
この俺自身が、許しはしない!!!!!
「うおおおおおおおお!!ひらけえ、ポケットオオオオオ!!!」
無限に続く空間が、俺たちの前に姿を現す。
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