表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/10

我ら、ベイカ街1の最弱3姉妹!!



 改めて、追手の3人を見る。


 中央にいる子は、一番大きな子だ。色々と。


 簡素な服で身を包み、くすんだ赤茶色の髪をしている。



 左の子は、一番小さな子だ。色々と。


 すっとん。


 これまた最低限の武装だけを身に着け、髪色は黒。



 右の子は、保護欲を掻き立てる子。


 美しい金髪の髪が、少し汚れていた。



 正直、3人とも滅茶苦茶美人さんだった。


 とんでもない美人だ。


 名古屋風に言うと、どえりゃあ美人だがね。



 美人さん3人が、一体何用だろうか?


 「何の用だ?」


 「ふう、ふう。」


 「落ち着いてからでいいから。」


 3人とも息を切らせている。大変だ。



 「ふう、落ち着いた。おい!お前!!」


 「何でしょう。」


 「その服を寄越せ!!」


 「服…このジャージ?」



 そういえば、俺の今の格好はジャージだ。

 何で欲しいんだろ。


 「こんなものが、何で欲しいんだ?」


 「決まってる!そんな服見た事無いぞ!!」


 「きっと貴族さま用の高級品に違いないっス!」


 「それを売って、私たちの今日のご飯代にさせてください!!」


 とんでもない事を言い出したな。この子たち。



 「これしか着るものが無いから、俺がすっぽんぽんになっちゃうよ。」


 「心配するな!さっきまでの時間で、服を作っておいた!」


 「お姉ちゃんのマントもつけるっス!裸んぼにはならないっス!」


 「私たちの着てるモノで、頑張って作ったので!!」



 そう言って、手製の服を突き出してくる。


 粗末な布で作られた服だ。

 ボロではあるが、良く見ると繋ぎ合わせた跡が見える。


 それから彼女たちをもう一度だけ見て、納得した。

 自分たちの着ている服を少しずつ破いて、一つの服を作ったのだ。



 さっき草原でやっていたことは、これか。



 「そんな事しなくても、スライムでも倒せばお金を稼げるのに。」



 「ううっ。」


 「?」


 「あんたが、ここいらのスライムを全部倒しちまったんっス!!」


 「私たちは弱いので、スライムしか倒せません…」



 そういうことらしい。

 ちょっと悪い事したかな。



 「そういえば、君たちの名前は?」


 「ふっふっふ。よくぞ聞いてくれたな。」


 一番大きな子から胸を張って自己紹介。


 ちょっと破けた服の中で、大きな胸がぶるんと揺れる。



 「長女のイチカ!!」


 腰に手を当て、ポージング。

 大きな胸がゆさりと揺れる。



 「次女のニカっス!!」


 片手をブイにして、ポージング。

 アイドルポーズを取ってくる。



 「三女のミクです!」


 胸の前で手を合わせて、ポージング。

 可愛い。

 守護らなきゃ。



 「「「三人合わせて…」」」


 「「「ベイカ街1の、最弱冒険者!!!」」」



 3人合わせてポーズを取って来る。

 見事なものだ。

 俺も入りたいくらいだ。



 「か、かっこいい…」


 エミリアが感想を述べる。

 俺も同意見だ。




 「悪いことはいわない!おとなしくその服を渡せ!!」


 「へっへっへ。パンツまでは取らないっスよ!」


 「もうご飯抜きは嫌です!!」



 彼女たちにものっぴきならない事情があるようだ。

 ちょっと知りたいことがある。



 不自然に思われないように、しゃがむ。

 ごくちいさな声で、ポケットと言う。

 狼の牙を拾って、『ポケット』の中に入れながら、会話を続ける。



 「いいぞ、この服やってもいい。」


 「ホント!ありがとう!!」


 「でも一つ条件がある。」


 「なんっスか?」


 「俺と一手、手合わせして欲しい。勝ったら服をやる。」




 ステータスを確認。


 AGL:10(+10)


 ポケット数 : 3/XXX

 狼の牙(1個)



 「うおおおおおおおおおお!?」


 「な、なんだ!!どうした!!お腹痛いのか!!?」


 「い、いや、何でも無い。ただの気合の掛け声だ!!!」


 「な、なんだ。びっくりした。」



 びっくりさせてしまった。

 ごめんなさい。


 しかし、これは驚くだろう。

 だって、素早さ二倍だぞ、二倍。


 ありえんぞ、こんなの。

 ポ○モンだったら、『すばやさがぐーんとあがった』ってやつだぞ。


 ポケットのなかみはいつもなん時もファンタジー。




 知りたいことがある。

 この子たちは、自分たちを『ベイカ街1の最弱冒険者』といった。


 この世界の冒険者のレベルが知りたい。


 ごく普通の現代人である、俺がどのくらい戦えるのかも。




 「手合わせか・・・分かった、私が相手をする。」


 イチカが前に出てくる。



 「一本勝負だぞ。間違っても当てるなよ。」


 釘は刺しておこう。


 「当たり前だろ!当てるとか怖いこというな!!」


 イチカも迎合する。

 盗賊紛いかと思ったけど、結構いい子たちなのかも。




 「では、いっぽん勝負…」


 審判はエミリアだ。

 付きあわせてしまって、申し訳ない。


 「はじめー!」



 イチカが突っ込んでくる。


 動く俺。


 2つ、分かったことがあった。



 1つめ、イチカの動きが、鋭く、速い。


 最弱なんていっていたが、結構洗練されている。

 この世界は、強い奴がゴロゴロいるのだろうか。



 2つめ。


 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 イチカの動きに合わせて、横に躱す。


 「なにっ!」


 意外だったのか、イチカが驚く。


 「まだまだっ!!」


 イチカが二撃、三撃と木の棒による攻撃をしてくる。


 躱す、躱す。


 動体視力が上がっている訳じゃ無い。


 俺の身体がはっきりと早く動いている。


 軽い、軽い。


 飛ぶように動くことが出来る。



 イチカの攻撃の隙間を縫って、背後を取ることに成功。


 「しまっ!」


 木の棒を軽く振り、イチカに寸止めする。




 「おわり!!」


 エミリアが一本の宣言をする。

 何とかジャージを守ることが出来たか。




 「くっ!駄目だったか…」


 「お姉ちゃん、残念だけど、3人分の今日のご飯は諦めるっス…」


 「わ、わたしのご飯は、イチカお姉ちゃんと、ニカお姉ちゃんで、」


 「馬鹿なことをいうな。私が我慢するさ。二人で分け合って食べろ。」



 悲しい事を言い出す三姉妹。


 …あー、もう!!



 「ほら!!」


 「えっ!?」


 「やる!!ほら、ニカも!!ミクも!!!」


 3人の手に、それぞれ銅貨を握らせていく。

 相場が分からないが、50枚ずつ。


 おかげで俺はすっからかんだ。

 いいんだ、せっかくの異世界初日なんだ。

 納屋かどっか見つけて寝るさ。



 「い、いいんスか…。」


 「いいよ!間違っても返すなよ!!もうやったものだ!!!」


 ご飯くらいはせめて食べたい。

 30枚あれば食べられるかな。



 「お、」


 「お?」


 「おやぶん…」


 うん?


 「おやぶん!おやぶんっス!あんたは私たちのおやぶんっス!!!」


 おやぶん…


 「是非おやぶんさまと呼ばせて下さい!!」


 「ああ、私も呼ぶぞ!親分!!!」


 あのなぁ…


 「親分はやめろよ!盗賊じゃないんだぞ!!」



 「じゃあ、兄貴っすか?なんてよべばいいんスか!?」



 まったく。



 「そもそもお前ら、俺の名前も知らないだろうが。」


 「「「あっ」」」



 気の抜けた奴らだ。



 「俺の名前はケンイチ。よろしく。」



 一人一人と握手していく。

 取りあえず、異世界での知り合いが4人できたか。




 「よかったですね、えへへ。」



 エミリアちゃんが、朗らかな笑みを向けてくる。

 でもまあ、エミリアちゃんが無事で良かった。



 聞きたいことは一杯あるが、まずは



 「街があるんだよな?どっちだ?」



 俺の質問に、4人が揃って同じ方向に指を向けたのだった。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ