えいえい。怒った? + 美少女村娘の危機
「えいえい。」
スライムを殴る。
消える。後には銅貨が残る。
「えいえい、怒った?」
別のスライムを殴る。
スライムは何も答えない。
「えいえいえい、えいえいえい。」
スライムをどんどん叩いていく。
スライムは消えて、銅貨だけが残る。
何一つ答えない。
たまにドロップする木の棒は、どんどんポケットの中に入れる。
これを繰り返すことで、ATKがどんどん上がっていく。
スライムを50匹ほど倒した時、俺のステータスはこんな感じだ。
-ケンイチ―
LV5
ATK:7(+32)
DEF:6
AGL:10
PHYSICAL:30/30
XXX:??
XXX:??
装備枠:1/2
『木の棒』
固有魔法 : ”空間魔法 ”
ポケット数 : 2/XXX
銅貨(80枚)
木の棒(15本)
取りあえずスライムを倒しまくったが、どうだろう。
この世界の宿屋の一泊が何円するのか。
ご飯が何円するのか。
分からないから、もう少し稼ぐか。
「お姉ちゃん、これでどうですか?」
「いいな、悪くないぞ!」
「じゃあここをこうしようっス!!」
少し遠くの場所では、女冒険者たちが座って作業をしている。
何かを話し合っているようだ。
ちょっと話してみたいけど、今はスライム倒すのを優先しよう。
「いつもそうやって!!お前たちは何も答えない!!!」
「教えてくれガ○ダム!!!俺は誰を、何を倒せばいい!!!!」
「うわぁぁぁぁぁぁああああ!!」
何かのごっこをしてみる。
やっぱりスライムは何も答えない。
楽に倒せるとはいえ、ちょっと寂しい。
スライムも多分100匹くらいは倒している。
銅貨もいよいよ180枚になった。
日が傾いてきたから、そろそろ移動しようか。
「きゃあああああああああ!!」
女の子の悲鳴だ。
森の方から聞こえてくる。
思わず、反射的にその方向に駆け出す。
「いやあ、いやあああああ!!」
森の奥の方で、女の子が狼みたいなモンスターに襲われている。
スライムとは違う、牙をもつモンスターだ。
一瞬の戸惑い。
それから迷いを振りきって、尚も加速する。
勝てないかもとか考えるんじゃない。
今は女の子を助ける事だけを考える。
恐怖心など抑え込んで、女の子に掛けるキザな言葉だけ考えていろ!!!
「でやあああああっ!」
狼に背後から一撃。
あっさりと倒した。
後には、銅貨とは違う色のお金。
銀貨だ。
それから、狼の牙がドロップしている。
「え、え?」
女の子が戸惑っている。
顔を覗いてみると、恐ろしく顔の整った子だった。
優しい色合いの茶髪を、長く伸ばしている。
純粋無垢なその瞳は、見るもの全てを浄化する。
村娘といった感じだが、その美貌は到底モブでは済まされない。
「やあ、危ないところだったね。」
「あ、ありがとう?ございます。」
「いやあ、女の子の声が聞こえるから、何かと思えば悪いオオカミさんがいるとはね。」
「と、とつぜんオオカミが現れて…」
「でもしょうがないね。君の魅力に、オオカミさんも堪えられなくなっちゃったんだね。」
「そ、そうでしょうか?」
女の子がいきなり褒められて顔を赤くする。
女の子を立ち上がらせてあげて、それから抱きとめる。
「こんなに綺麗な瞳に見つめられたら、俺もオオカミさんになっちゃいそうだよ。」
そういって、至近距離でウインクをする。
どうだ?どうだ!!??
やったか!?
「は、はい。わたし、オオカミさんに食べられちゃいます♡」
決まった!!
やったね。
「俺の名前はケンイチ。君の名前は?」
「わたしは、エミリアです。よ、よろしくお願いします…」
真っ赤な顔を見せながら、恥ずかしそうに笑う。
可愛い。この世の全てを和ませる、無垢な笑顔だ。
「ぜ、ぜひゅーっ!!やっと追いついた…!」
「あし、はやいっす…。疲れたっす。」
「お姉ちゃん、支えて…。」
さっき見かけた女冒険者たちがこっちにくる。
何事だ。
まさかこの女の子を狙って?
「おい、お前ら、何用だ。」
「こ、こわいです。」
エミリアちゃんが、こっちに寄りかかって来る。
カラダを震わせて、怯えている。
絶対に守ってやるからな。
「そ、それを、渡してもらうぞ、ふぅー…。」
「待て。エミリアちゃんには絶対に手出しはさせないからな。」
思わずエミリアちゃんを抱きとめる。
「?何をいっている。というか、誰だ、その子は。ふぅ、はぁ。」
「あたしたちの目的は、ぜひゅーっ。」
女冒険者の一人が、こちらに指を向けてくる。
指さした先には…
「あれ、もしかして、目的って、俺?」
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