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【第9話】アンラッキーな男、ラッキーな男

オレ、ショート、メイ。

そして船着場のスタッフと名乗る双子のスイとライというメンバーで

“西の国”に行く船に乗り込む。


前の世界でいう豪華客船といった感じで、中もかなり広かった。

豪華絢爛な装飾などはなく、素朴だが清潔感のある船内では、

様々な格好をした旅人達でひしめいていた。



「結構人がいるんだな」


ショートに話しかける。


「移動手段が限られてるからね。

 旅行客も、商人もみんな船を使うんだよ。」


ふーん、と相槌を打ち、あたりを見渡す。


「これだけ人がいたら、アイリのやつも見つかりそうな気がする」


「そんな簡単な話じゃないと思うけど・・・

 まあもし見つかったらラッキーだよな」


「ショートって昔から運よかったじゃん。まじであっさり見つけそう」


「そうか?」



ショートと会話をしていると、スイとライが服を引っ張ってきた。



「部屋・・・とったから・・・いこ」

「急な予約で1部屋しか取れなかったけどいいよね~?」



ひ、1部屋!?

ものすごく拒絶されそうな予感がしてチラリ、とメイの方をみる。


「絶対にイヤ!!」


・・・やっぱりな。


「メイ、仕方ないよ。ベッドは人数分あるんだよな?」


ショートがスイとライに質問をした。


「ううん・・・」

「残念ながらベッドというより雑魚寝部屋なんだよね~」


「ざ、雑魚寝・・・」


「ははは・・・」


困ったようにショートが笑った。

案の定メイは更に怒ってしまったようだ。

どうにかして怒りを抑えてもらわないと・・・


「じゃあ・・・オレ一番隅っこで寝るから」


「触ってきたりしないでよね!?」


「さ、触る!?そんなことするわけないだろ!」


「メイ、大丈夫だって・・・」



ショートになんとかメイをなだめてもらいつつ、船舶する部屋に入った。

大きなマットが一枚敷かれており、

端にいくつかのクッションと布団が置かれていた。

それから小さな机、金庫らしき頑丈そうな入れ物が一つ。

こ、これだけ・・・なのか?

豪華客船のような船だったので内装もさぞかし豪華だと思い、

期待していただけに少し面食らった。



「私たち庶民にはこういう部屋しか取れないんだ、我慢しろよ、タイチ」


ショートがオレに声をかけた。


「お、おう・・・」


「安心しろ!ちゃんとご飯付きのチケットとったから、旅中のご飯の心配はない!」


「ここのごはん・・・おいしいよ」

「ライのおすすめはね~ハンバーグなの!」


「・・・ごはんの話してたら、お腹空いてきたわ。ショート、食堂に行かない?」


「そうだな、じゃあみんなで行こうか」



オレ達は食堂へ向かうことにした。

出航の時間までまだ少しあるようだ。

ゆっくりとご飯を食べ、今後の計画を練ることにした。



昼食には少し早い時間帯だからか、食堂には人がまばらだった。

前いた世界と同じようなメニューが並んでいた。

オレはとりあえず焼きそばを注文した。

大きな木の机が並んでいる。

適当に椅子を持ってきて皆で座る。



「うまそー!いただきまーす!」


「焼きそばが本当に焼きそばだ・・・」


「?何言ってるのタイチ」


メイが首をかしげる。


「い、いやなんでもない・・・」


とっさにごまかした。


焼きそばとは名ばかりのゲテモノ料理が出てくるのかと思ったら、

案外普通だった。味も・・・おいしい!



「グラタンと、焼きそば一口交換しよ・・・」

「あっずるい~!ハンバーグとも交換しよ~」



ライとスイがあーん、とスプーンを差し出してくる。

オレは少し恥ずかしく思いつつ、一口ずつ料理をもらった。

うまい!前いた世界の料理とほんとうに変わらないな。



「あ、そのハンバーグに使われてる肉

 なんの肉だと思う?」


シュートがにやにやしながらこっちを見る。


「えっ・・・なんかやばいモンスターの肉なのか!?」



オレは思わず立ち上がった。



「うおっ!」


ガタッと勢いよく椅子から立ち上がってしまったせいで、

偶然後ろにいた人とぶつかってしまったようだ。


「すみませ・・・熱ッ!」


オレはとっさに謝るが・・・足元に熱さを感じて痛みに顔を歪めた。


「すまない、大丈夫か!?」


茶髪のイケメンがさっとハンカチを出す。

どうやらこのイケメンが持っていた料理がオレの足にかかってしまったようだ。

オレ・・・怪我つづきだな。とことんツイてない。


「火傷にならないように・・・はい氷水」

「タイチ大丈夫~?」


スイとライが心配してくれた。


「ど、どっから出したんだその氷水!?」


「魔法だよ・・・スイは水魔法担当なの」

「足見せて~急いで冷やさなきゃ~」


「そうか・・・あ、ありがとう・・・」


魔法ってすごいな。

スイとライで使う魔法を分担してるのかな?

得意不得意とかあるのだろうか。


「ほんとうにすまない・・・わざとでは・・・あれ?」


イケメンがオレの顔を覗き込み驚いたような顔をする。

ん?なんだ?

オレ・・・こいつと会ったことあるような・・・

長身、短めの茶髪に、切れ長の黒い目。

その下には泣きぼくろがある。

ううん・・・見たことあるような、ないような。



「ア、アイリ・・・・!?」



ショートが驚いて大きな声を出す。



アイリだって!?



このイケメンが!?





アイリもこの世界に転生していたのか・・・

ショウトが女として生まれ変わったように

あのアイリも男になっている・・・



しかも・・・



ショウトがこの世界にきたきっかけとなった

原因の人物が・・・



こんなにあっさりと見つかるとは・・・



さすがショウト、ついてるやつはとことんついてる・・・・





オレは驚き固まる2人を交互に見ながら、

心の中でひそかに感心していた。

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