【第8話】出会い、そして希望
荷物をまとめたオレたちは、早速旅に出ることにした。
ショートはアイリを探すために。
メイはショートを守るために。
オレは2人を(できれば)守りつつ・・・
ハーレムを作ってこの世界を楽しむために!
目指す場所は“西の国”。
貿易の中心国として色んな人が集まる場所らしい。
ショートのいる村からは乗り物を使って一週間はかかる、
それほど遠いところだそうだ。
この世界の乗り物は飛行機や、電車ではない。
蒸気機関車のようなものはあるようだが、
国と国とを移動することはできない。
“西の国”までは馬車と船を使って行くことになった。
「これは・・・馬、なのか?」
町からしばらく歩いたところに、大きめの停留所と馬小屋が建っていた。
小屋を覗くと馬が何頭も並んでおり、しかもその馬には翼が生えていた。
これはユニコーンというやつか?
でもユニコーンは角があって白くて・・・そんな馬だったような。
オレ達の眼の前にいる馬は毛並みが黒く、翼もカラスのような色をしている。
「そうだよ。あぁ・・・あの世界の馬とはちょっと違うけどさ。
とにかくここの人間はこの馬を使って移動するんだ。ほら、乗って」
「オ、オレ乗馬経験なんてないんだけど!?」
「乗ったらすぐ慣れるよ。普通の馬と違って動きが少ないし、
しっかり手綱を持ってれば落ちることもないし、万が一落ちても大丈夫だから」
「大丈夫じゃないだろ!?」
「落ちた時は馬が助けてくれるのよ。いいから早く乗りなさいよ!」
メイに急かされ、オレはしぶしぶ馬にまたがった。
結構目線が高くなるんだな。
今の時点でも若干の怖さがあるが、空を飛ぶとなると・・・
オレは少し怖くなってきた。
「行くぞ!とりあえず船着き場まで1時間くらいで着くからついてこいよ!」
「まってよショート!」
「えっい、1時間!?うわあっ・・・!」
心の準備が整わないうちに、馬がバサバサと翼を動かしだした。
ブワッと風が舞う。
思ったよりも馬はゆっくりと飛び上がった。
地面からどんどん離れていく感覚。
オレは手綱をギュッと握った。
「よ、ようやく着いた」
「楽しかったわね、ショート!」
「みんなおつかれ!」
1時間の空の旅が終わり、オレ達は船着場についた。
最初の方は空を飛んでいる、という感覚が恐ろしかったが、
数十分も経つと慣れて楽しくなってきた。
飛行機に乗っている感覚に近く、ああいう乗り物もいいなと思えた。
しかし、手の方は・・・地味に痛い。
「タイチの手、大丈夫?」
ショートが心配をして声をかけてくれた。
「慣れないことしたからマメができたみたい。救急箱みたいなのってある?」
「怪我の気配を察知・・・」
後ろから小さな声が聞こえて、驚いて振り向く。
「怪我なら、あたし達が治すよ・・・」
「救急箱はここにあるよ~」
オレのすぐ後ろに、2人の女の子が立っていた。
どうやら双子のようだが・・・。
1人は水色と白色のツートンカラーで、
頭の上で髪の毛をお団子にしている女の子。
もう1人は黄色と黒色のツートンカラーで、
髪の毛を2つのお団子にしている女の子だった。
水色の子が近づいてくる。
黄色の子は救急箱を開けて何やらゴソゴソと探しているようだ。
「大丈夫・・・まかせて」
「ちょっとまってね~!いい薬があるから!」
「・・・誰?」
ショートが首をかしげる。
「あたし達はここのスタッフ・・・」
「怪我の手当をしたら、船までご案内させていただきま~す!
はいっ手出して~」
オレは素直に手を差し出した。
2人がかりでマメに軟膏を塗って、手当をしてくれた。
優しい手付きに少しドキッとしてしまう。
「これで大丈夫・・・あたしの名前はスイ・・・」
「あたしはライ!スイとは双子で仲良しさんなんだ~」
「手当ありがとう。オレの名前はタイチ。西の国ってとこを目指してるんだ」
続いてショートとメイも自己紹介をしていった。
「西の国に行きたいんだね・・・チケット売り場はこっち・・・」
スイにきゅっと手を握られ、つい顔を赤くしてしまう。
メイに睨まれたような気がした。
うっ・・・怖い。少し萎縮してしまう。
「お兄さん、なんか弱々しくて心配になっちゃうよ~」
ライがそう言いながらもう片方の手を握ってくる。
マメのできたところを避けて、小さな手が優しく包んでくれている。
な、なんだかドキドキするというよりも癒やされてきた・・・
「そ、そんなに弱そうに見える?」
「タイチは実際弱いよー」
ショートがオレをからかう。メイもそれに頷いていた。
「・・・オレ、ショートもメイも守れるように強くなりたいんだけどなあ・・・」
そうつぶやくと、メイが顔を真っ赤にしてキャンキャンと叫んだ。
「タイチに守られなくたってメイは強いんだから!」
メイは走って船のほうに向かっていった。
急にどうしたんだ・・・?
チケットはどうするんだ・・・
オレ達が買っておけばいいか。
「無意識にメイのこと女の子扱いしてるじゃん、タイチ」
「そうか?気が付かなかった」
「守れるように強くなりたいっていう言葉、結構メイに刺さったんじゃないかな?
あの子、人から守られたことないっていうか、
むしろ守る立場だったから・・・
照れて走ってっちゃったけど、ナイスタイチ!
これならハーレム完成も近いかもね」
「ハーレムってなに・・・?」
スイが聞いてくる。
「あ・・・いや・・・」
オレが焦っていると、
「タイチは一度でいいから女の子にキャーキャー騒がれたい願望があるんだよ。
ハーレム作ってモテモテになりたいんだよ、なっ!」
と、ショートが言い、バシッと肩を叩かれる。
ショートのやつ、初めて会った女の子にバラさなくたっていいだろ・・・!?
「へ~!おもしろ~い!」
「あたし達・・・ハーレムに入ってみたい・・・興味ある・・・」
2人分のくりくりとした瞳がオレを捉えた。
オレは驚いて立ち止まってしまった。
「えっ!?」
「お!モテ期到来じゃん、よかったな、タイチ!」
もしかして本当に異世界ハーレムが作れるのか・・・・・!?
よっしゃーーーーーー!希望が湧いてきたーーーーーーーーー!!!
オレはこころの中で思いっきりガッツポーズをとった。