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【第7話】女の子は難しい

「とりあえず、必要なものはこんくらいかな」


ショートが大きな袋を抱える。



「タイチ、あんた男なんだからショートのこと手伝いなさいよ!」


「うるさっ・・・わかったよ」



メイは相変わらずキャンキャンとオレを攻め立てていた。

あのあと、とりあえず3人で旅にでる、という同意をメイに得て、

旅に必要なものを町で購入することにした。

食料、生活用品、防具・・・そして自分を守る武器。


こういったものはゲームの中でしか見たことがなかったので、

オレは正直いって興奮した。

強そうなダガーナイフや、どこかの民族が作ったような弓矢、

不思議な形をした銃・・・。



ショートがアドバイスをしてくれて、

オレは初心者に使いやすいダガーを購入した。

これを使う日がくるのか。やっぱり異世界って危険なのかな。

今の所痛い目に遭ったのはショートとメイの暴力くらいだけれども。



使い方はメイが渋々教えてくれた。

主に自分を守るための体の動きを覚える。

オレは攻撃の仕方を教えてくれ、と頼んでみたが、メイにきっぱりと断られた。


オレにはまだ早いらしい。

ひょろひょろの中学生だからなのか?

筋トレして鍛えよう、と密かに心に誓った。



「うちへ帰って荷造りをしよう」


ありがたいことに、ショートがテキパキと事を進めてくれる。

メイは本当にショートのことが好きなのか、

あいつの言うことだけは聞くみたいだ。

オレがしゃべることには一切耳を貸してくれないが・・・。



ショートの家に戻ると、慣れた様子でメイが部屋に向かう。

オレが寝起きしていたベッドのある部屋は客用の部屋らしく、

ショートとメイが遊んだり、寝泊まりするときによく使っていたそうだ。

床下収納から丈夫そうな革のカバンを取り出したショートは、

オレに向かってこう言った。


「タイチ、今から魔法使うからよく見とけよ。面白いぞ!」


「ま、魔法!?ショートは魔法が使えるのか!?」


オレはわくわくしてショートの挙動を見守った。

知らなかった。

この世界に転生すると魔法が使えるようになるのか?

一体ショートはどんな魔法を使うんだろうか。



ショートは先程買ってきた荷物の山から小さな石を取り出した。

薄灰色に鈍く光るその石を手のひらで転がす。


「この世界では、魔法石と呼ばれる石を使って魔法を使うんだ。

 これは風魔法を使える石。これで荷物の圧縮をする。」


「真空パックみたいなもんか・・・!?」


「まあそんな感じだな!よっ!」


ショートが革の鞄に石を投げ入れる。

・・・

・・・?

こ、これだけなのか?


「これでカバンの中にどれだけ荷物を入れても大丈夫。

 その分重くなるけど、荷物があふれかえることは無い優れものだ!

 魔法っていう割には驚きも派手さも無いけど・・・すごいだろ?」


「・・・もっとなんか・・・火柱がブワーって燃え上がるとか

 そういう感じの魔法を想像していたよ、オレは」


「ははは!まあそんな魔法が使える魔法石も売ってあるけど、

 めちゃくちゃ高価なんだ。庶民には到底買えるもんじゃねーよ」


「そうなのか・・・

 ま、まあこれがあればデカイ荷物を背負っていく必要も無いから

 便利だよな・・・これを軽くする魔法石はないのか?」


「それは必要ないわ」


メイが割って入ってくる。


「メイが持つから」


「え!?でも女の子だろ・・・?魔法石が無いなら、オレが持つよ」


「お、女の子扱いしたって今更遅いんだからね!」


何故か顔を赤らめながら慌てた様子で部屋を出ていくメイ。

ええ・・・

さっきは荷物を持てって一方的にオレに持たせたくせに、

一体何なんだ・・・?


「メイはドワーフと人間のハーフで、普通の人間よりかなり力があるんだよ

 だから昔から力仕事とか手伝ってくれてて・・・」


「ドワーフってあんなに可愛いのか!?」


オレは驚いて言った。


「普通のドワーフはいわゆるまあ・・・岩みたいな顔をしているやつが多いんだけど、

 メイはハーフだし中でも可愛い顔立ちをしてる方だとは思うな。

 それにしても、さっきのメイ、おもしろかったなあ。・・・フフッ」


と、ショートが笑った。


「・・・笑ってる場合か。意味わかんねえよ、女の子ってのは」


「メイはあんまり女の子扱いに慣れてないんだよ。

 だから、優しい態度で接してたら

 意外とお前のことすんなり好きになってくれるかもしれないな。

 あ、でも頭ポンポンはやめたほうがいいぞ。

 あれで喜ぶ女の子なんてほとんどいないし・・・何よりメイの場合は」


「わかってる。

 手を近づけたら背負投げしてくる女の子なんてオレ初めて会ったよ・・・

 もう二度とメイに近づかないことを誓う」


あれは痛かった。

ほんとうに。骨が折れて無くてよかった。


それにしても。


「女の子が頭ポンポンで喜ばないって本当なのか・・・?」


「あれで喜ぶのはよっぽど仲がいい女の子か、彼女くらいだな。

 普通は引かれるからやめといたほうがいいぜ」


「・・・でもラノベでは・・・」


「ラノベは現実世界じゃないからな。

 この世界もまるで現実じゃない不思議なところだけど・・・

 女の子はどこも同じ感じっていうか・・・まあ、がんばれよな!」


ポン、とショートに背中を叩かれる。

オレはがっくりと肩を落とした。

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