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【第5話】いざ行かん冒険の旅へ

次の日の朝。


聞き慣れた、声変わり途中の声ではなく、

女の子の可愛らしい高音が耳に届く。



「起きろー!」


「いてっ」



バシリと頬を叩かれた。

そのおかげで完全に目が覚めたオレは、

ベッドから起き上がりながら愚痴をこぼした。



「ショート、女の子になってから

 暴力的になってないか?」


「ここらへんな魔法生物とかいて危険だからな。

 日々鍛えてたらそうなったんだ」


「へー・・・ってそれ、本当なのか?」


「とりあえずご飯にするぞ!

 それから旅の準備だ!」


「はぐらかしたな、ショート・・・」


前の世界の記憶を取り戻したショートは、アイリを探す旅に出たいと言った。

アイリもまじない・・・というより呪いにかかって

大変な目にあっているかもしれないから、という理由らしい。

オレも一緒についていくことにした。


今度こそ幼馴染を守る。

魔法でもなんでもいいから力を身に着けて強くなるんだ。

それでもってハーレムも作る。


ちなみにハーレムについて、ショートは「協力してやるよ」と言ってくれた。

前の世界では結構モテてたし、この世界では女の子として生きてきたから

恋愛のアドバイスならたくさんできるぜ、と

なんとも頼もしいことを言っていたので(モテてたってのがちょっと引っかかるが)

頼ることにした。さすが、持つべきものは幼馴染だな!



ショートが用意してくれた朝ごはんをぺろりと平らげ、

オレたちは旅に必要なものを買い出しに町へ出ることになった。

ショートの家から数十分あるいたところに町はあった。

活気が溢れており、様々な商店が軒を連ねている。

元いた世界とは比べ物にならないほど個性的な格好をした人々や

二足歩行であるく人間に近い生き物(たぶん魔法生物だろう)で

町は賑わっていた。



「私の両親はここより更に遠いところまで出稼ぎに行ってて、

 今は兄と二人であの家を守っていんだ。

 兄は夜の間、この町の酒場で働いていて・・・あ、あそこ」


ショートが何かを見つけ、ある一軒の店に駆け寄った。

なんて書いてあるのかはわからないが看板がかかっている。

ここがショートの兄の店なのか。

壁は黒い漆喰で塗られており、酒場というよりは酒蔵のような印象がある。

手前にある扉ではなく、店の後ろに周り込むんだショートは重厚そうな扉を開けた。



「兄ちゃん、いる?」


「!・・・ショートか。となりの男は誰だ?」


店のカウンターの近くに、背の高いスラッとした男性が立っていた。

ショートと同じ黒髪をしている。この人がショートのお兄さんなのだろうか。


「あっオレはショートの・・・」


「ただの私の友達だよ」


オレの言葉を遮ってショートが前に出た。


「幼馴染って説明なんかしたら兄ちゃんが混乱するから、

 最近出会った友達って設定にしといてくれよ」


ぼそっと耳元でショートがつぶやく。オレはこくりと頷いた。

そうか、この世界のショートの兄は、転生のことなんて知らないもんな・・・。

今はショートの話に合わせよう。


「あのね、私ちょっと旅行に行きたくて」


「旅行?」


「遠くの友達に会いに行きたいんだけど」


「どこのどいつだ?」


「西の国にいるアイリって女の子」


に、西の国?

アイリはそんなところにいるのか?

ていうかそこはどこだ?


「あそこに行くだけでも最低一週間はかかるぞ。

 危険だから俺もついていこう」


「いいよ!大丈夫。友達が守ってくれるから!」


ショートの兄はオレの方をチラリと見て


「信用できない」


と、きっぱりと言い放った。


「じゃあもう一人友達連れてく!それでいいでしょ?」


「メイのことか?」


「うん!メイなら強いし、私と仲いいし、

 兄ちゃんも信用してるだろ?」


「・・・それなら。」


どうやらショートの兄は納得してくれたようだ。

メイちゃん、というのは女の子なのだろうか?

強い・・・柔道とかやっているのかな。

なんてことをぼんやり考えていると、

いつの間にかショートと兄の会話が終わっていた。


「・・・おい、行くぞ!」


ガシッと腕を掴まれる。


「ん!?おう?」


「旅行の準備だ!」


にやり、とショートが笑った。

オレはよくわからないままショートに着いていくことにした。


店を出て、しばらく町を歩く。

ガヤガヤと賑わう人通りを眺めていると、

突然ショートがこちらを振り返って言った。


「兄ちゃんにはいろいろ嘘をついてしまったけど、

 たぶんこの旅行・・・っていうか旅は一週間なんかじゃ終わらない。

 だから多めに荷物を準備するぞ。

 アイリの居場所もわかってないから、とりあえず人が集まる貿易の国、

 “西の国”に行って人探しをしようと思ってる。

 子どもだけで行動するのは危険だけど、私の友達も仲間に加えるから

 安全は一応守られる。だからタイチは安心して私に着いてこい!」


「お、おう・・・その友達っていうのは?」


「メイっていう同い年の女の子だ。

 ちょっと性格に難ありだが、イイやつだぞ。

 仲良くしてやってくれ。」


「わかった」


「ちなみにメイをハーレムに入れるのは難しいと思うぞ?」


一瞬、頭の片隅で考えていたことをショートに見透かされていた。

うぐぐ・・・となりながらも、メイという女の子のことを考える。

あのお兄さんが信用していて、しかも強くて、性格に難ありな

女の子か・・・。一体どんな人なんだろう。


「・・・ま、まぁハーレムは置いといて、

 その子と仲良くなれればいいなとは思ってるけど・・・」


「あ、噂をすれば」


そうショートがつぶやいた瞬間、オレの後頭部に強い衝撃が走った。




なんというか・・・


鈍器で殴られたような感覚が・・・






オレは意識を手放した。

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