モモちゃんは冬がちょっぴりしか好きじゃない
冬になると森は真っ白な雪で覆われます。
くまさんはモモちゃんが寒くないように、雪うさぎの毛皮を集めて外套と長靴、それから可愛らしい帽子を作ってくれました。それらを身に着けた小さなモモちゃんは真っ白で、雪の中では見分けがつきません。
ある日モモちゃんがいつものように雪の中を駆け回っていると、雪に車輪をとられて動けなくなっている一台の馬車に気が付きました。人間には近寄ってはいけないと、くまさんはいつも言っています。モモちゃんをどこかへ攫って行ってしまうかもしれませんから。
モモちゃんは馬車を動かそうと尽力する雪まみれの男たちをを見て、それからそっぽをむいて雪うさぎを探しに弓を抱えて走り出します。
今までも、たまに商人たちが商品を運んでいくのを見かけることはありました。たまには人間を積んだ檻を乗せた荷車だって見かけました。皆がみな、狐の様に抜け目ない狡猾な表情をしていて、赤くて嫌らしい顔をしているようにモモちゃんには見えました。
だからモモちゃんは森に来る人たちが苦手です。モモちゃんは人がたくさん住む町が嫌いです。この時期、くまさんはいつも寝ていますから特に。
モモちゃんはその日の夜、おおかみさん達を招待してウサギのシチューを振舞いました。通り道、男たちの置いていった馬車に乗ったと小さなオオカミの仔が自慢げに話していました。赤々と燃える暖炉の火は、寧ろ冬の方が暖かいような、そんな錯覚を抱かせます。
くまさんが目を覚ますまでの夜、モモちゃんはこっそりとくまさんのベットに入り込んで眠ります。くまさんのお日様みたいな匂いがモモちゃんは大好きです。
「春が来た!」
ある日小川のそばを散歩していたモモちゃんは雪の下から顔をのぞかせたふきのとうを見つけて叫びます。
「春よ!みんな、春が来た!」
モモちゃんの勢いに鳥たちは驚いて飛び立ちました。
そういえば、少しずつ雪が降る日は減り、今ではもうほとんど降りません。やっとくまさんが起きる季節。
目につく限りのふきのとうを摘み取るとコートに包んで持ち、モモちゃんは走って小屋へと帰ります。
起きたてのくまさんはいつもお腹がすいています。くまさんが起きてしまう前に、沢山の料理を作らなければなりません。
数日かけてたっぷりの食事を用意したモモちゃんはくまさんのベッドに文字通り飛び込むのです。
「くまさん、起きて!春だよ!」
おいしいものを食べながら、冬の間のこと、それから長い眠りの間に見た夢について話し合いながら一日は過ぎていきます。