終わりからの始まり
初めて書くので、至らぬ点もありますが、よろしくお願いします。
「俺の人生ロクなもんじゃない。」
そんな事を叫びたくなるような毎日である。
誰だって思った通りいかない事なんてあるだろう。
ましてや人生とは思った通りいかないものだなんて言う人もいる。
だからといって全てが全て思った通りにいかないのは流石にひどいと思う。これまでの人生ホントにロクなもんじゃない。神さまがいるならぶん殴ってやりたい。
物心ついた時からすでにそう思っていた。小学、中学、高校と毎日思って生きてきた。我ながら本当に笑えない事ばかりだ。
そんな中でも俺の心の支えになっていたのは幼馴染の里香だった。よくマンガとかであるような、結婚の約束とかもしたし、仲も良く、毎日のように遊んでた。
だが一昨日。彼氏ができたらしい。17歳にもなって本気で泣くかと思った。
「彼が嫉妬するからあんまり会えなくなっちゃうんだ。ごめんね星弥!」
そう謝って彼氏と一緒に帰っていった。
一人落ち込みながら帰っていると、交通事故に遭った。そして俺は一回死んだ。
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目を覚ますと、なんかどこにでもいるようなおじさんがいた。周りには何もなく、ただ真っ白の空間が広がっている。
自分の状況から、死んだことを理解した上でそのおじさんに話しかけた。
「俺は死んだんだろ?」
おっさんは、満面の笑みで
「もち!」
もち!じゃねーよ。まさかこんなノリで返されるとは。
「俺はどうすればいい?」
おっさんはすごく楽しそうに
「君ちょっと冷静すぎない?普通死んだって言われたら少しぐらい驚いていいと思うんだけど。」
そんな落ち込まれながら言われても困るんだけど…
「まあ想定外には慣れてるんで」
小さい頃からトレーニング?の成果で、数年前からあまり動揺というものをしなくなった。
「あ〜確かにひど過ぎる人生だったね〜」
さっきからノリが軽すぎやしないか?人に言われるのはなんかイラつく。
「よし!やり直させてあげよう!!」
こいつは何を言い始めた?やり直す?冗談じゃない!
「勝手に決めないでください。どうせなら異世界転生とかにしてくださいよ。」
「それでもいいけど、君の思い通りにいかないのはもう体質みたいなものだからどの世界でも似たような結末になるよ?いいの?」
それもそれで嫌だな…
「それに君はあの子を取られて本当に良かったの?」
嫌なところを突いてくる。正直やり直したい気持ちはある。しかし体質と言われた以上、また似たような人生になる可能性が高い。だが、取られたままで終わるわけにはいかない。
「やり直すってどのあたりからですか?」
「ん〜、君のやりたいところからでいいよ!」
やりたいところからか…なら
「5歳からでお願いします。」
俺の両親が離婚する一年前だ。これも俺のせいでの離婚だった。
「よし分かった!じゃあすぐやるね!」
すぐ?ちょっと考える時間が欲しいな…
そう思った瞬間には5歳になっていた。
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5歳になってからはや3日、様々なことに悩んでいた。
まずは、行動を5歳にすること。ある意味これが一番辛い。中身が17歳では大変恥ずかしい。コナンにはだいぶシンパシーを感じる。よくやってるなあいつ。
次にあのおそらく神であろうおっさんが言う、体質。
すでにだいぶ慣れてはいるが、キツイはキツイ。
5歳らしく絵を描くと紙は破れ、工作していると必ず誰かが転んで壊す。相手が泣いてしまう分、さらにやりづらい。
そして両親の仲。離婚した理由は、俺。というのも、俺が何かするにも体質のせいで落ち込んでばかりいたのを母が慰め、父が甘やかし過ぎだと怒る。そんなことがたびたびあり、離婚してしまった。だから、まずは俺が落ち込まないことから始める。これらのことをしながら、里香との仲も深めていかなくてはならない。
正直、思ってたよりもだいぶキツイ。
3日たって、休まる時間がないことに気がついた。
この5歳の体では限界がある。ていうか限界だ。
そう思いながら寝ると、神おっさんが夢に出てきた。
「君ヤバイね」
大爆笑である。なんだこいつ。
「そう思うなら、なんか神パワー的なので助けてくださいよ」
「そうそれ!君に渡すの忘れてたんだよ!」
まじで殴るぞこのおっさん。忘れてんじゃねーよ。
「まずは見た目は変わらないけど、体力は17歳に戻してあげる。あとは、君の残念過ぎる体質をすこーしだけ直してあげる!」
まじでいいおっさんだ。俺は信じてたぞ!
「ありがとうございます。助かります。」
「いいんだよ!いい暇つぶ…神の役目だし!」
俺のこと暇つぶしとか言いかけたなこいつ。まあ正直その二つは助かる。ありがたく頂いた。
「またなんかあったら夢に出てくるから!頑張って理想の人生送りなよ!」
夢から覚めると、体から力が溢れてくる。17歳すごい。
そしてそこから1年、両親の仲を取り持ちつつ、里香との仲も深めていった。17歳の体力のおかげで、楽にこなすことができ、とりあえずは離婚の危機はなくなった。
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7歳の誕生日の1ヶ月前、父と離婚した母は仕事を増やし、帰る時間が遅くなっていたところで石油ストーブが故障して火事が起き、家が焼ける。これが前回の出来事だ。次はこれをなんとかする。といっても今回は母が家にいるし大丈夫だと、そう信じてた。それが間違いだった。
結果的には家は半分ほど焼けた。
母がいたおかげですぐに発見はされたものの、すぐに燃え広がり、火事になった。俺は自分の体質を忘れていた。5歳になってからの約2年が、あまりに順調すぎた。家がないので、とりあえず家族3人で、里香の家に泊めさせてもらった。前回は泣いていた俺を里香が慰めてくれていた。そしてその時、里香が俺を守ると言って、結婚の約束をするという流れだったが、今回は逆だった。一緒に寝てると、里香が俺の布団に泣きながら入ってきた。
「まだ…起きてる?」
震える声で聞いてくる。
「うん…どうしたの?」
分かってる。しかし聞かなければならない。
「星弥くんが死んじゃったらどうしようと思って…」
声が小さくなり、ポロポロと涙が溢れている。
「大丈夫だよ。僕は里香ちゃんを残して死んだらしないよ…」
恥ずかしさを我慢して伝える。俺の本心を。
「ふふ…ありがとう!」
彼女の顔に涙が戻った。そして約束をする。
「将来さ…僕たち結婚しようよ!」
「うん!約束だよ?」
そうして、一緒の布団で寝た。
そして夢を見た。またあのおっさんだ。
「調子はどう?まあだいたいはわかるんだけどね!」
またヘラヘラしている。だが、俺は真面目に伝える。
「俺は自分の体質を忘れていた。それによってまた一つ後悔が増えた。」
俺は続ける。
「あの時、体質を少しだけ改善させたと言ってたけど、それはどのくらいなんですか?」
「あれでも普通の人は何一つ不都合なく人生を送れる量減らしたんだけど、君にとっては1割いかないぐらいかな〜」
俺どんだけやばいんだよ…
「まあ、一番の目的は果たせたんで良かったと思います。この調子で頑張っていきたいです。」
そう告げると、満足そうな顔で笑い、夢が覚めた。
家は建て直しをするそうで、その間、里香の家に住むことになった。里香は大変嬉しそうにしていたが、そう楽しんでいるわけにはいかない。なぜなら、小学生の間にあと2つやることがある。
3年生の冬、クラス全員が乗ったバスが事故に遭う。
みんな軽い怪我で済むが、里香は、まだ側に座っていて、俺のことを庇い、ガラスによって右腕に一生残る傷を負う。高校生になっても、それを隠すようにして生活していた。そんなことを起こさないようにする。
そして6年生の夏、俺のおじいちゃんが亡くなる。
しかも、お盆で帰省する5日前にである。その前におじいちゃんにあったのは俺がまだ4歳の頃で、久しぶりに会おうということで行くことになっていた。そのおじいちゃんは、4歳の時に俺が描いたであろう破れた絵や、壊れた工作、母が送った写真などを宝物と書かれた箱に入れていた。そんな俺もおじいちゃんのことは大好きだったが、住んでる場所がだいぶ遠く、会いたいと言い続けてやっとの思いで会えると思った時だった。この事は、里香の次に後悔している事だ。
そして3年の冬、俺は真っ先に席に座った。そこはクラスの中で、一番怪我をしてなかった子が座ってた先である。
そして里香を呼ぼうと思った瞬間、隣に1人の男子が座ってきた。
「隣に座ろーぜ!」
遠足でテンションが上がっている、よく知らない男子。
そして里香は女子の子と一緒に座っていた。こんな時でも俺の体質が出てしまったのだ。どうする?そんなことを考えていると、事故を起こした現場に近づいてきた。
この先にある、カーブを曲がりきれず、道から外れ2メートルほど下に倒れ落ちてしまった。
すると、1人の男子が
「すげーはえー!!」
これはチャンスだ。すぐさま俺は運転手に聞こえるような声で言った。
「こんなスピードでカーブとかって曲がれるのかなー?安全運転がいいなー」
すると運転手は、少しスピードを下げた。そして無事にカーブを曲がりきった。そしてトイレ休憩の時、席を変わってもらって里香の隣に座った。
帰りのバスの中で俺も里香もウトウトしていると、あることが頭をよぎった。順調すぎる。俺の体質はこんなもんじゃない。嫌な自信があった。絶対何か起きる。そう思っていると、バスが急ブレーキを踏んだ。やばい!俺はとっさに里香を抱きしめた。すると、特にぶつかることもなく、そのまま走っていった。
「よかった…」
ボソッと呟いた時、ふと冷静になった。側から見ると、急に里香を抱きしめたことになっている。そっと里香を見ると、真っ赤になっていた。恥ずかしかったが、それよりも里香が怪我をしなかった喜びの方が大きく、流石に抱きしめたままはいけないので、手を握り、そのまま帰った。その後数日間、里香の反応が面白かった。
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5年の夏、おじいちゃんの家に行くことになった。俺もびっくりしたが、実は前回も5年の夏に行く予定だったが、母の仕事の為いけなかったらしい。今回は離婚せず、母の仕事も少ないため、行けることになった。前回も合わせると実に約20年ぶりの再会である。そして今回も何事もなくおじいちゃんに会うことができた。泣きそうになるのを堪え、その日は泊まった。一緒の部屋で寝たいと言ったら、おじいちゃんがすぐに準備してくれ、一緒の部屋で寝た。
「おじいちゃん体の調子はどう?」
「わしのことを心配してくれてるのかい?優しい子だね」
ここからどう伝えよう?確か死因は心筋梗塞だった。ならば予防しろと言うしかない。
「体は大事にしてね?特に心筋梗塞とか最近多いらしいし…俺おじいちゃんが死んじゃったらほんとにやだからね?」
おじいちゃんはびっくりした顔をして、少し泣きそうな声で
「そうかいそうかい。星弥がそう言ってくれるなら少しは運動とかしようかね」
「言ったからね?来年来るまで健康でいてね?」
「うん、わかったよ。約束するよ」
「うん…約束…」
そうして眠りについた。
夢の中で、おじいちゃんと遊ぶ夢を見た。本当に楽しかった。
朝、目を覚ますとまだおじいちゃんは寝ていた。俺は朝ごはんを食べると、母が聞いてきた。
「おじいちゃんはまだ起きないの?」
「俺が起きた時にはまだ寝てたよ?なんで?」
この時俺は少し嫌な予感がしていた。ただ、そんなはずない。そう思い続けた。
「いつもは6時には起きるし、遅くても8時には畑に行ってるんだけどね〜」
心配そうな母を見て、父が
「それじゃあ俺が起こしてくるよ」
そう言って俺の隣から立ち上がり、歩いて言った。
ドクン、ドクンと少しずつ鼓動が速くなっていくのを感じた。きっとたまたま寝てるだけだ。だって昨日の夜約束したんだから。そう思った矢先、父がひどく辛そうな顔で戻ってきた。
その瞬間、僕は立ち上がり、おじいちゃんの部屋へ走った。
「おい!星弥!」
父の声も聞かず、戸を開ける。
「おじいちゃん!」
返事がない。体を揺らす。
「おじいちゃん!おじいちゃん!」
肩が冷たい。いや、体全体が冷たかった。まただ。俺の体質のせいだ。前回も同じように順調で安心していた。バスの事故も起こらず、少しは良くなったと過信していた。でも違う。俺が回避できるのは知ってる範囲のことだけで、それ以外は今まで通り思った通りにいかない。分かっていたはずだったのに、分かっていなかった。
その後、警察が来た。死亡時刻は僕が昨日寝た1時間後。後悔という言葉では足りないくらいの思いが胸の中をぐるぐるしている。そして俺は心に決めた。里香だけは絶対に諦めない。これがなくなったら俺は本当に何もなくなってしまう。
そして家に帰ると、夢でおっさんが出てきた。ひどく真面目な表情だった。
「今回は流石におちゃらけないよ。君も今回でより一層わかっただろ?変えられることと変えられないことがある。もし変えたことで前よりもっとひどい結果が待ってるかもしれない。それでも君は彼女のこと…諦めないかい?」
「当たり前ですよ…里香のこと諦めたら俺は本当に何にもなくなるんです。2回目の人生を送ってそのことをより一層感じました。諦めません。絶対に。」
おっさんは満足そうに
「ならいいんだ。頑張れとは言わないよ。君はもうとても頑張ってるからね。だから一言だけ。諦めるなよ。」
「はい!」
返事をすると、夢は覚めた。覚悟はできた。俺は里香を幸せにする。そう決めた。