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9話:覚醒

 人は、数ある動物の中でも極端なほど寂しがり屋である。


だからこそ、人間は、人同士の繋がりを求める生き物なのだ。


好き嫌いの感情を、愛しい感情を優先的に処理して、他人を求める行為は、正しい。


しかし、例え好きでなくても愛して居なくても繋がりさえあれば満足してしまうのも人である。葉月翔太が井原要に肉体的な繋がりを求めた様に。井原要が戸崎燐に精神的な繋がりを求めた様に。


それは、動物として正しいのだ。


だが、戸崎燐は、何も求めようとしない。井原要は、その事にようやく気づく事ができた。


要は、自分、翔太、燐は、人を愛せないと言う事が共通点だとそう思っていた。燐は、何も求めなかった。


それが自分と翔太とは違う何か別のモノの様に感じた。何かを他人に求めると言う点でそれは、動物的な思考であるに対し、何も求めないと言う行為は、機械的である。要は、ようやくそれを理解する事ができた。


何人もの同級生を犠牲にして、返り血を浴びて、教室を血の海と肉塊に染め上げて、ようやく理解できたのだ。




 ウィルス型ナノマシン『デウス・マキナ』C型。このデウス・マキナは、人間に感染する。主な感染は、粘膜接触による感染である。


高確率的に感染するのは、やはり血液による接触感染であろう。デウス・マキナは、人の血液に対して活性反応を示す。血液に僅かに含まれる窒素、鉄分、硫黄、尿素、酸素、炭素を合成して、デウス・マキナは、恐ろしいスピードで増殖していく事になる。


デウス・マキナの数がある一定の血中濃度に達すると、骨からカルシウムを溶かし、代わりカーボン・ナノチューブを編み込んでいく。人体の80%以上の骨がカーボン・ナノチューブに置き換わると次は、筋組織と神経組織の改造を始める。


筋組織は、3次元フォトニック・モーターに置き換わり、心臓は、3次元フォトニック・エンジンに置き換わる。そして、平行して改造が行われるのは、神経組織の光りファイバー化である。3次元フォトニックの動力元は、光エネルギーである為、光による動力制御を行う事が可能であるのだ。そして、最終段階は、やはり脳の電子頭脳化である。




 要は、自分の中にある欲望が次第に強くなっていく事を感じていた。


これは、自分の中にあるデウス・マキナが脳に喰らい付いた時に起きる一時的な本能と欲求の暴走にすぎない。と、理解していても激しく底なしに湧き上がる欲求の波にその暴走を止める事が出来なかった。


数ある欲求の中で一番強く要を苦しめたのは、戸崎燐に対する気持ちだった。


彼を私だけの者にしたい。


彼を独占したい。


彼に私と言う人間を理解して欲しい。




 今まで感じた事の無い理解しがたい感情が溢れてきては、要の心を蝕んでいった。そして、自分と言う人間が以前の存在とは、別の生き物になっている事を要は、少しづつ理解してく。


今までの様な後ろ向きな思考は、しなくなり、前向きで何より要の心には、高揚感が支配していた。


今の自分なら・・・何でも出来る。




 そんな根拠の無い自信が涌いてくる。要は、ふと冷静になって、教室の中を見渡してみた。


教室の時計は、真夜中の2時と少し過ぎた時間を指して居た。黒板には、びっしりと人の血が張り付いている。


少しの月明かりをねっとりした血のりが反射していた。机は、教室の角に散乱して・・・あらぬ方向を向いている。


要は、裸だった。制服は、要の足元に転がっている男子生徒達にむしり取られていた。


言う事を聞かない自分を無理矢理言う事を聞かせようと葉月翔太がこの男子生徒を使って襲わせたに違いない。


と、要は・・・そう思っていた。もうすぐすれば、葉月自身もこの教室にやってくるのではないだろうか。

そう考えると要は、可笑しくてたまらなかった。



「ははっ・・・・あはははっ」


男子生徒達に襲われた事で要は、自身の力を認識し覚醒する事ができた。それは、葉月翔太に感謝しても良いほどだと要は、思った。


そして、要は、考える・・・考える・・・考える・・・結論。



どうしたら・・・自分の思いどうりの世界を構築できるのか・・・要は、考えてみた。今までの日常から、要は、違う世界へと足を踏み入れてしまった。


もう、戻る事など不可能な世界へと。


ならば、どうする?


戸崎燐を自分の者にするには、どうしたらいい?


要の出した結論は、凄く単純で・・・シンプルなものだった。


デウス・マキナは、感染する。


そう、人に感染するのだ。


「なら・・・撒きんでしまえばいいだ。全て・・・嫌いな者も、好きな者も、両親も、学校も、同級生達も」


今なら要は、理解できそうだった。


好きであると言う感情を超えた激しい感情を。


全てを犠牲にしてでも手に入れたいと思うこの激情の源を。


人外の存在になってその感情理解できるなんて、なんと言う皮肉だろうと・・・要は、童女の様に笑みを浮かべた。




「愛しているわ・・・燐」


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