2話:小さなジュリア
真夜中の3時である。
都市が眠らない街になったといっても町外れのベットタウンでは、誰一人街中を歩く者は、存在しない。
いや、存在しないはずだった。もう住む人が居なくなった廃マンションの駐車場で10人以上の人が集まっていた。どれもサラリーマンやOLふうの恰好をした何処にでも居そうな人達だった。この真夜中にこれだけの人達が集まるのは、異常である。
その人達の中心には、サラリーマンでもOLでも無い者達が2人存在していた。
その二人は、この場には相応しくないほど浮いている。
一人は、見かけの歳は、25歳ぐらいの男。身長が180cmは、超えている体つきが良い大男だ。
もう一人は、この大男とは、正反対の小さな少女。身長は、100cmにも満たない。見かけ上の歳は、
10歳ぐらいの女の子。だが、この少女は、普通ではなかった。
首から上は、人間の顔と見分けがつかないが服の袖から伸びる両腕は、黒光りする金属そのものだった。
そして、フリルの付いた可愛いスカートから伸びる両足さえも金属で出来ている。
そう、この少女は、アンドロイドである。それも異星人セムリアが作り上げたアンドロイド。
金属の腕と足、胴体をもつ戦闘用アンドロイド・・・人間に擬態し、蛋白質の皮膚に覆われた観察用
アンドロイドとは違い、より衝撃に強い金属の外骨格を持つアンドロイドは、戦闘と言う目的に特化している。
その戦闘能力は、観察用アンドロイドの数十倍と言われる。
「ジュリエッタ(小さなジュリア)・・・この人数は、一寸骨が折れる」
少女の隣に居た大男がそう口にするとニヤリと不気味に微笑んだ。
「マテリアル・ナノマシンを散布します。効果時間は、10分・・・キー・コードは、ジンに」
小さなジュリアと呼ばれた少女は、冷やかな表情でそう呟いた。
そして右手を前方に伸ばすと手の付け根から霧状のナノマシンを散布し始めた。
「うほぅ、気が利くじゃないか」
ジュリエッタにジンと呼ばれた大男は、そう嬉しそうな声を上げた。
「あたりまです。ジンは、単純ですから、考えている事・・・まる解りです」
「相変わらず一言多いんだよ。お前は・・・」
ジンは、ふてくされた様に言うと腕を構えて戦闘態勢に入る。
すると彼らの周りワラワラとサラリーマンとOL風のアンドロイド達が二人に襲い掛かってきた。それを見たジンがニヤリと笑みを浮かべた。
「マテリアル・コード・エフ・・・・燃えろ」
そのジンの言葉に大気中に散布されたマテリアル・ナノマシンが反応を示した。マテリアル・ナノマシンは、大気の組成を組み替え通常では起こりえない自然現象を引き起こす。
ジン達二人に襲い掛かってきたアル・デュークのアンドロイド達は、一斉に炎に包まれた。
その隙をついてジンは、一人にアンドロイドの顔を右の拳で殴り飛ばす。
ガン
と言う音を響かせてコンクリートの地面に叩きつけられて動かなくなる。
「ジュリエッタ・・・一言多いのは、俺の教育が間違っていたのかもな。これが終わったら、お仕置き
してやる」
「さっ、それは、どうかしら。ジンが私に勝てるとは、思えないけど・・・」
ジュリエッタは、それがさも当然であるように言う。
ジンは、冗談のつもりで言ったのだが、まとにとられては言い返す言葉が見つからなかった。事実・・・・ジュリエッタは、ジンより強いのだから。
ジンの攻撃で炎に包まれたアル・デュークのアンドロイドは、4体。残り6体のアンドロイドがジンの動きを警戒しながら、ジュリエッタに近づいてくる。その内の一体が痺れを切らした様にジュリエッタに襲い掛かった。
ジュリエッタは、冷静にその一体のアンドロイドの右ストレートを左に避けてかわすと、右手で空気を
掴むように内側に動かす。
するとそのアンドロイドの胴体が真っ二つに丁度胸の辺りで上下に切り裂かれた。キラリと光りの加減で辛うじて見えたのは、ジュリエッタの右手から伸びている透明な糸。
先程のアンドロイドは、この糸によって切断されたのである。残り、5体のアンドロイドを排除しなければならない。しかし、彼らの実力をもってすれば負けることはない。時間が掛かるが確実に一体づつ排除していく能力を彼等は、持ち合わせていた。




