夜の笹船
騒がしい深夜番組
流しっぱなしの音声
真夜中のテレビは
昼間より鮮やかに乱れていて
ありきたりな夜に
ありきたりな眠気を
孕ませた瞳が
そっと窓の外の雨に気づいてる
テレビを消して
ひとりが
シンと深まって
煙る雨
ほの暗い部屋
目を瞑れば
私は夜の川に流れる笹船
夢の岸辺へ
細雨の中をゆく
濡れた窓も
押し黙るテレビも
静かに川底
沈んで行って
優雅に泳ぐ透きとおる魚
私を追い越す
誰かの眠り
霧雨
雷雨
星月夜
ひと恋しさの中に
住み着いた夜もあって
言付ける
昨日は去った
君も私も
流れゆくのは
ひとりとひとり
同じ岸辺へ着かなくても
同じ川を渡って行く