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ボディータオル

 この夜、『前田女子寮』の二期生六人は、全員『前田湯屋』で入浴することになっていた。


 普段は、女子寮に内湯があるのでそれを利用しているのだが、今回は無料で大きな湯屋に入れることになっている。

 体を洗うための新しい道具を用意したから、その使い勝手や感想を教えて欲しい、という、彼等の雇い主である前田拓也の要望なのだという。


 彼女たちにしても、広くて、薬湯やシャワー、さらにサウナまで完備しているこの『前田湯屋』に無料で入れるメリットは大きい。

 全員、きゃっきゃとはしゃぎながら、脱衣所で裸になり、大浴場へと入っていく。


 この前田湯屋、以前はこの時代の他の湯屋と同じく混浴だったが、現在では脱衣所の時点で男女別に分かれている。また、番台も今は年配の女性なので、その視線を気にすることもない。


 夕方は『前田美海店』で新作のお菓子『苺大福』を食べ、そして夜は大きな前田湯屋を無料で利用できる。まだ若い静、沢、里、咲、杏、桜の六人にとっては、『大当たり』の日だった。


 そしてこの六人に支給されたのは、『ボディータオル』だった。

 布でもなく、紙でもない。

 綿でも、麻でも、絹でもない、不思議な素材。

 教えられたとおり、これをお湯で濡らせて、仙界から持ち込まれたという『石鹸』をつけて体を洗い始めると……モコモコと、なめらかな泡が沢山湧き出てくるではないか。


「すごーい、不思議!」


「なに、この泡……良い匂い……でも、たべちゃダメなのよね……」


「ふわぁ、顔につきましたぁ-!」


 大はしゃぎだ。

 他の女性客もいたのだが、今まで手ぬぐいを使っていたときはここまで泡だっていなかったので、みんな不思議がって集まり、その泡を手に取って珍しそうに眺めていた。


「……でも、ちょっとこれ、強く擦るとひりひりして痛いですぅー」


 最年少の桜が、桃色のボディータオルを広げてそう口にした。


「そう? 確かにちょっと刺激があるけど、それほどでも……って、私のと色が違うし、別なのかしら? ちょっと換えてみて」


 桜の二つ年上の沢が、自身の持っていた緑色の物と交換して試してみる。


「……ほんとだ、こっちの方が目が荒いというか、ざらざらしてて、力を入れるとちょっと痛い……」


「そうでしょう? うん、この緑色のはちょうど良い感じ」


「私のはまったく痛くないんだけど……」


 沢と同い年の里が、自分の持っている白色のボディータオルを指差してそう言った。


「じゃあ、取り替えながら全部一通り使ってみましょう!」


 と、仲良く様々な色、目の細かさのボディータオルを貸し借りして使った。

 結果、目の荒いボディータオルでも、力をそれほど入れなければ痛くないし、適度に刺激があって気持ちいい、という結論に達した。


 洗い上がりの肌もスベスベになり、評価は上々だった。

 目の荒さは好みによるが、緑色の物が一番人気で、六人中四人が選んだ。

 白と桃色は一人ずつだ。

 これは自分の物にしてもいいということだったので、よく水気を切って、籠に入れて持って帰ろう、と話しあった。


 そして全員、仲良く大浴槽に入浴。

 この時間帯、まだお客は少ないので、大浴槽は貸し切り状態だ。


「ところで……さっき、大福食べながら話してた『身体測定』の件だけど……」


 最年長、満年齢で十六歳の静が、みんなに小声で話しかける。

 後の五人は、どきっとして、彼女のすぐ側に集まった。


「裸でっていうのは、どうやらそうじゃないらしくて、何か上に着物を羽織るらしいの」


「え……でも、そんな事したら、体の重さ、増えるじゃないですか。仙界、行けなくなっちゃう……」


 満十四歳の杏が、心配そうに話す。


「そうよね……それに、拓也さん、検査には立ち会わないっていう話だし……」


「えっ……そんな……だったら、『健康診断』も『身体測定』も、意味ないじゃないですか」


 同じく十四歳の咲も不満げだ。


「……『あわよくば(めかけ)に』なんてのは、まあ冗談半分で、ないだろうとは思っていたけど、私達が病気をしていないかどうかに拓也さんが立ち会わないっていうのは……」


 静がみんなの気持ちを代弁する。


「……じゃあ、誰が私達が病気でないか、診てくれるんですか?」


「多分、仙界で修行してきた凜さんなんじゃないかな……」


「……確かに、凜さんもすごい人だっていうのは分かりますけど……凜さんは、仙人様じゃない……」


「そうね……拓也さんに、ちゃんと体を診てもらいたいね……」


 沢はちょっと落ち込んでいる。


「……あ、そういえば、ナツさんが言ってました! 『あの人は、女の子は俺に体を診られるのを嫌がっているんじゃないかなって気にしている』って!」


 里が少しだけ声を大きくしてそう口にした。


「……拓也さん、そんなこと言ってたんだ……」


「確かに、男の人の中には、女の子の裸をいやらしい目でジロジロ見る人いるから、そんな人に見られるのは嫌だけど……拓也さんはそんなことないのにね」


 沢があっけらかんと話した。

 この時代、裸を見られることに対しては抵抗は少なく、現代で言うところの水着を見られる程度でしかない。


「でも、そういう事を言ってくれるっていうことは、やっぱり拓也さん、私達のこと、気遣ってくれているのね……」


 これはしっかり者の里の意見だ。


「……でも、私達としては、やっぱり仙人である拓也さんに、みんなが病気かどうかちゃんと診てもらいたいね……どうする? 着物、着て診てもらう?」


「ううん、みんながいいんだったら、裸でちゃんと診てもらうよ」


「うん、私も!」


「私も!」


 この時点で、二期生達は全員一致で、検査着着用はせず、かつ、拓也に立ち会ってもらって、きちんと診察してもらおうと取り決めた。


 そして彼に診てもらうにあたり、失礼のないよう、支給してもらったボディタオルで体を洗って清潔にしておこうと、笑いながら話し合ったのだった。

※健康診断の様子は、近日公開の『身売りっ娘 俺がまとめて……[ハーレム編]』の『健康診断(身体測定)』にて詳細を書く予定となっています(^^;。

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