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異世界と破壊された村  作者: 天片
序幕 異世界と俺と美人な親子
7/30

7 不思議な少女


 通されたのは、広いリビングのような部屋だった。


 立派なレンガ造りの暖炉が目につく。


 それ以外の家具は最低限の生活ができそうな物しか置いておらず、テーブルや椅子も装飾がほとんどない簡素なものだ。


「……私、ハイラです」


 リビングに入るなり、美女が自己紹介をしてくれた。苗字はないのか、それとも名前だけを名乗ったのかわからないが、こちらも同じように自己紹介を返しておく。


「俺はレオと言います」

「レオさんは、どこかへ向かわれる途中だったんですか?」

「ええ……まあ、ちょっとこの辺りに用事があったんですけど」


 どう答えたらいいか決めかねて、俺は言葉を濁した。


「なるほど。用事ですか」


 ハイラは特に詮索することもなく、俺の言葉に納得した様子。俺は不信感を持たれないうちに話題を変える。


「あの……村の中が大変なことになってますけど、何かあったんですか?」


 この村がミナーヴァに破壊されたことはベイルから聞いていたが、偶然通りかかった旅人という設定なら、一応知らないふりをしておいたほうがいいと思ったのだ。


 俺の問いかけを聞いたハイラは少し表情を曇らせ、ぽつりぽつりと語り出した。


「突然空に巨大な影が空に現れて、光が射してきたんです。光の柱のようなものが空から降ってきて。気が付くと村はあんな状態になっていました。……私たちはこの家に隠れていて、なんとか無事だったんですけど、他の人はおそらく……」


 空に巨大な影? それがミナーヴァってことか。そんなにデカいのか。


 ハイラの話を聞いた俺は不思議に思ったことを問うてみる。


「……私たち、ということは他にも生き残った人がいるんですか?」

「えっ、あ、いえ……」


 何か聞いてはいけないことを聞いてしまったのか、ハイラが慌てている。失言はしていないはずだが。


 そんなことを思っていると、廊下から足音が聞こえた。


「……お母さん?」


 次いで廊下から子供の声。振り返ってみると、六歳くらいの少女が廊下からこちらを覗いていた。


 他にも人がいたようだ。


 髪の色が茶色であることを除けば、ユノはハイラと瓜二つだった。人形のように整った顔立ちが印象的だ。ユノの瞳と目が合う。猫のように大きく丸い瞳は、吸い込まれそうなほど深い紅色だった。


 その瞳を見つめていると、俺は妙な既視感に襲われる。


 なんだ、この感覚は……。


「ユノ。出て来ちゃダメっていったでしょ……」


 ハイラは困ったように言い、ユノと呼ばれた少女を廊下の奥に追いやろうとするが、身をよじって嫌がり、俺の許へ駆け寄ってきた。


 そしてなぜか俺の服を手で掴み、じーっとこちらを見つめてくる。


 何かを語りかけてくるような強い眼差し。この瞳、やっぱりどこかで見たことがある。


 どこかで会ったかな?

 

 いや、でも俺に子供の知り合いなんていないし。妙だな。勘違いか。


 ユノの身長は一メートルほどで、俺の腰くらいしかない。


「ちょ、ちょっとユノ……す、すみません、レオさん。たまによくわからないことをするんです」


 どうやらハイラは酷く混乱しているようで、おろおろと手を宙に漂わせる。


「いえ。大丈夫ですよ」

「……レオ?」


 首を傾げるユノ。レオって名前なのか、そう問いかけれているような気がした。


「こんにちは。ユノちゃん」


 俺は目線の高さを合わせるためにその場で屈み、ユノと向かい合う。


 あまり表情の変わらない子だな。でも、そこが人形みたいで可愛い。


「……こんにちは」


 ユノは小さな声で挨拶を返してくれた。


 天使のようだ、と思った。

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