─キミがスキ─
「や、やめてくれぇええ!……………っぁが……」
ぐちゃっ…
『任務完了…だな。
人とはもろいな。
こんな鉄の塊を撃つだけで死んでしまうのだから………っふ、
かという僕も人間なんだがな、一応』
青年……いや、少年と言ったほうが正しいか、
その少年は今殺めたばかりの男の腹に銃弾を2発撃ちながらそう一人ごとを呟いた
エピソード1 出逢い
『…………ん~~~っ、
よく寝たぁ……』
私、玲嬢かのん
高校1年生
ごく普通の……って言いたいけど、
そういうわけにもいかないな
だって、私には重い心臓病があるんだもん
それが普通だったら苦労しないよね
でも大丈夫!
私はそんなの気にしないし、
今の人生………残り3カ月の人生を楽しめればいいじゃないか
お母さんとお父さんが授けてくれたこの命、
大切にしなきゃって思うんだ
『さぁ~て、
朝ご飯の準備でもしますか!』
なんて独り言も言ってみたりしてる
私にはお母さんとお父さんがいない
私が小さい頃に離婚して、どっちも引き取ってくれなかったんだ
親戚のおじさん達が引き取ってはくれたけれど、ろくに面倒なんか見てくれなかった
煙たがられていたんだ
私は高校生になると同時に、家から追い出されてしまった
お願い、家賃とかは払うから出ていって、と
こんなお荷物、
誰だって引き取りたくなかったはずだよね
そう私はお荷物…………
お荷物……
『あぁ!
何鬱な気になってんの!!
私のとりえって明るいとこでしょーが!』
笑顔、笑顔
笑顔が一番だよね、うん
今日もお馴染みの朝食でいこう!
………………と、
その前に。
アレをしなきゃ!
私はベッド越しの窓を大きく開けて深呼吸した
『気持ちいいなぁ』
ここが私のステージだ
誰も通らない路地裏に向かっていつも歌っているんだ
私は将来歌手になりたかった
だからこうして毎日歌うことを止めなかった
すぅっと息を吸って──
『
─あなたの声に名前を呼ばれて目を覚ます
この海のどこかであなたも見ているのかな
いつまでも
ずっと変わらないラブソングを歌い続ける
海の向こうのキミへ
大好きなキミへ
届くと信じながら─』
ふぅ…
今日も気持ちよく歌えたなぁ
よし!
料理始めなきゃ…
『続き歌わないの?』