舞台装置モブ
舞台装置モブ
俺には後悔していることがある。
それは人を傷つけ過ぎてしまったことだ。
いじめられている妹を助けるためとはいえ俺は他人の首を絞めた。
そのことから標的は俺に変わった。
別にそれはなんとも思わなかった、倍以上にして返したから……俺はそのことを後悔している。
我が家の家訓が『やられたら倍以上にして返せ、返せない奴は人間じゃない』だった。
親にとって初めての子供だった俺は世間一般では虐待と言われることを受けてきた。
だから普通というものが分からなかったし常識もないクソガキ、それが俺だった。
具体的にいえば、殴られた時には殴ったやつの指を切り落としたり顔を殴られた時には目玉にハサミを刺した。
俺は小学校の六年間やられてはやり返した、過剰だと知らずに。
自分が親からやられたからこれが常識だと思っていた。
常識を知ったのと同時に己の大罪を知った。
高校からは俺は"優しい人"などと言われるようになったが、俺は毎度『俺が優しいなら全人類が優しいことになるよ』そう返した。
謙虚だと言われたがそうじゃない、俺は年齢的に捕まらなかっただけの犯罪者なんだよ。
優しいわけがないんだ
何度もやったことを後悔しては自殺を試みては親に罵詈雑言を浴びせられる毎日
分かっている、これはただ逃げているだけだと。俺がそう考えている時、目の前に一人の女神を名乗る女が現れた。
「私は転生(やり直し)したい方を救う転生の神です。貴方のような方を探していました」
「俺がやり直したいって……神には分かるってか? 転生したところで記憶があるんなら意味はないんだよ、この後悔が消えることなんてないんだからな!!」
「ええ、知っています。なので転生させていただきます」
俺の記憶はそこで途切れた。
そして次に意識を取り戻した時、俺は包丁で中学生くらいの子供を刺し殺していた。
「なんだよこれ……どうなってんだよ!!」
「ですから言ったでしょ、『なので貴方は主人公を転生させるための舞台装置にさせていただきます』と。安心してください、すぐに釈放されます。次はトラックで主人公を轢き殺していただきます、その間おやすみなさい」
「なん……だよ……それ」
俺はそれから何十人、何十万人……それ以上の人数を舞台装置として主人公とやらを殺した(転生させた)
「さて貴方のお仕事はこれにて終了です。八十年間お疲れ様でした。次の舞台装置が見つかったので、貴方には舞台装置として転生してもらいます。来世も再来世もその次も永遠に後悔してください、ではさよなら~」
ブスリ
俺の人生ってなんだったんだよ
「チクショウ」
「テメェみたいなガキが子爵だって? 信じられるかよ、なあお前ら」
今度の俺は主人公とやらを引き立てるモブらしい。
身体の言うことを聞かないのは女神の仕業なんだろうな。
しかもこいつの魂、俺が舞台装置として最初に殺した子供じゃねえかよ。
俺が生まれなけりゃこいつが死ぬこともなかったってのに……なんで俺は今も生きてるんだよ。
一体何度主人公を持ち上げればいいんだ。
俺には俺の人生が……いや三十回舞台装置としての持ち上げモブに生まれて何が人生だ。
今回は主人公に倒させて持ち上げるための世界最強の殺し屋としての転生だ。
主人公補正で俺は一撃で倒される予定らしい。
そして俺が世界最強の殺し屋(舞台装置)として生を受けて十年が経過した時
「動く、自らの意思で身体が動かせる」
そのことに気づいた俺は思わず号泣してしまった。
四分後
「俺はアンタらの思い通りには動かないからな女神!!」
俺は舞台装置としてではなく俺として生きる、それを邪魔するのが神だろうが俺が殺して転生させた主人公だろうが叩きつぶしてやる!!
この物語は舞台装置として生を受けた男が女神から最凶魔王と呼ばれ恐れられるまでの物語である。
おしまい
見つけて読んでいただきありがとうございます!!
異世界系の主人公を最初に殺す役割や持ち上げる役割などの舞台装置と言われてしまうキャラたちを見ていてこのキャラたちの話を書いてみたいと思い書きました




