掴み取る
「琉兎を…返せ…!」
その時、幽霊がこるねに向かって杖を向ける。
「コルネさん!多分これやばいやつ来ますよ!」
ルナが叫ぶ。しかし聞いてないかのように、
こるねは前傾姿勢で幽霊へと突っ込む。
「はぁぁ…!!」
こるねが剣を振り下ろす。
「制裁!」
その瞬間、魔剣は杖もろとも幽霊を貫いた。
ぐぁぁぁ…!
幽霊の苦痛な叫び声が響く。
そして、その幽霊はちりとなって消滅してしまった。
「…はっ…はぁっ…」
こるねが床に座り込む。
見事幽霊を倒し、こるねとルナは安堵する。
しかし、
「…!てか琉兎は…!?」
「幽霊倒しちゃったから…どうすればいいんですか!?」
『それは流石に大丈夫だ。」
「この声…」
「またあいつですね…」
ノイズ混じりに脳内に響く声。
魔王の手下だ。
「お前たちは見事にあの幽霊を消滅し、この勝負に勝った。その強さは認めよう。
ただ、お前たち…特に藍沢こるね。
その「魔剣」を失うとお前たちの負けは
確定する。肉体自身も強くするべきだな。」
「上から目線だな…」
魔王の手下の声はそれ以上聞こえてこなくなった。
しかしこるねはあのアドバイスの仕方が普通に気に入らないようだった。
すると、こるねの目の前にゲートのようなものが
現れた。
*
「……っ!」
あれ、ここどこだ…?
確か俺はなんか幽霊に食われて…
…まさか死んだのか?そんなわけ…
…にしても暗すぎる。何一つ見えないぞ…?
…というか目隠しされてる?あれ?
手も縛られてるし口もガムテープのようなもので
塞がれてるし耳も…確かイヤーマフだっけ?
のようなもので覆われている感覚がある。
「おい!どうすんだよこいつら!」
「そんなの俺にもわかってる!」
2つの声が聞こえる。イヤーマフをしているが、
若干聞こえるのだ。そして、怒鳴っている。
俺をどうするかについて話し合っているようだな…
「けどとりあえずボスの命令に従わないと…!」
ボス…多分魔王のことだろうな…
で、こいつらは魔王の手下。ってことに
なるだろう。
しかし、さっき俺のこと「こいつら」
って言ったか?俺以外にも誰かいるんじゃ?
その時、魔王の手下らしきひとの口から…
「ニュースでなんかやってるぞ…?」
「謎の存在「魔王」から政府に謎のデータが
送られ、慎重に捜査を進めている…?」
その後、おれは気を失った。
*
「やったー…だけど結局琉兎は
見つからなかった…」
「ルトさん…」
こるねとルナはあの謎めいた空間から
抜け出すことに成功し、今は元来た船に乗っている。あのゲートはこの世界に戻ってくるための
ものだったらしい。
「…とりあえずクリタさんに連絡を…」
こるねが走り出そうとした時、
「またこれかぁぁぁ…!!!!」
天から降り注ぐ声の雨。この光景…
同じ人じゃなければ3回目な気がする。
「琉兎!!」「ルトさん!!」
こるねとルナは同時に空を見上げる。
するとそこには…
「…また落ちてる…」
上から落ちてくる琉兎の姿が。
「うわぁぁぁ!!!」
琉兎は叫びながら手足をジタバタ動かしている。
幸い、落ちてくる場所は海の真上。
落下して死んじゃうなどの心配はない。
そしてついに琉兎は海に落ちた。
「琉兎!!」
こるねは船の手すりに捕まって身を乗り出している。そして琉兎は海から顔だけを出して
こう言った。
「新しい情報を掴み取ったぞ!」
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