シグナルセイバー【50】
「くっ…」
「こるね!あまり体力を消耗するなよ!」
現在、謎の幽霊船にいる幽霊と対峙中。
こるねは前に出て魔剣で攻撃を仕掛け、
ルナはバフ要員、俺は水魔法で援護しながら
カメラで相手の動きを止める機会を待っている。
しかし、その幽霊は華麗な身のこなしで、
こるねの魔剣の斬撃を綺麗に全て避けている。
魔剣の力は絶大だ。神の使いの悪魔と
契約を結んで力を得ているのだから、
それは当たり前だと思う。しかし、使用者は
どうだろうか。
こるねはまだ12才。体力はそのまま12才なので
あまり動きすぎると疲れてしまう。
実際、今こるねは剣を振り回しながらも、
ハッハッと呼吸が荒くなっている。
これ以上こるねを無理させるにはいかないだろう。
そう思った俺はすぐさまこるねと幽霊が
戦っているところの後ろ側に周り込み、
「ルナ!俺に火玉を
打ってくれ!」
「ルトさんにですか…!?けど、ルトさんには
必ず何か策略があるはず…!
わかりました!行きますよ、せーの!」
「火玉!」
「水吹!」
俺とルナは同時に魔法を放った。
この技はヘルタのコロシアムでも実践した
技だ。それが…
「よし…!水蒸気煙幕!」
炎と水を当てて水蒸気を大量に出し
視界を遮る技だ。
俺はその隙に幽霊のそばへ行き、シャッターを押す。
パシャ
「勝った!」
「待って!」
こるねが叫んだ。なんで?って思ったが、
よく考えたらそうだ。
幽霊は写真に明確には映らない。
このことに気づいたこるねが俺に叫んだのだろう。
しかし、もう手遅れだった。
幽霊は大きく両手を広げ口を大きく開けていた。
「あっ…」
「琉兎!」「ルトさん!」
その瞬間、俺はその幽霊に取り込まれ、
一瞬にして消えてしまった。
と思った時、急に幽霊がドロドロに溶けてしまった。
「え…?」
「と、溶けた?」
「ちょ、ちょっと待って琉兎は?!」
こるねが焦る。その時、
溶けた幽霊が徐々に戻っていく。
しかし、さっきとはまた違う形だ。
しかも、その形にはこるねとルナは見覚えがあった。
「ちょ…え…?」
「琉…兎…?」
その幽霊が琉兎の形になっていたのだ。
「ルトさんは…?」
「………」
こるねは俯く。
そして何か覚悟を決めたかのように前を向いたその時。
「シグナルセイバー【50】」
その瞬間、こるねの持っていた魔剣が赤黒く光だす。
「コ…コルネさん?」
次第にこるね自体にも赤黒いオーラが纏われ、
髪も銀髪から黒くなっていく。
そして、ついには…
バサッ
「っ…!?!?」
ルナが絶句している。なぜなら、
こるねの背中に赤い片翼が生えていた。
シグナルセイバー_____
最初の方(序章)にも登場したことがある技。
この技は悪魔から契約の力を強くしてもらい、
使用者を悪魔へと近づける技だ。
【50】とあるが、これは「シンクロ率」。
調整できるものでもあり、元から決まっているものでもある。これが増えれば増えるほど悪魔そのものへと近くなる。
しかし最初の方のときの技はシンクロ率は
設定しておらず、技だけを悪魔からもらったものらしい。
シグナルセイバーを使ったこるねは
全く別の雰囲気を纏っており、血の匂いがする。
そしてこるねが口を開く。
「琉兎を…返せ…!」
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