幽霊船
「いや船内広!暗!」
「確かに…けど妙に静かだね…」
敵兵の動きを止めて煽ったあと、
俺らはすぐさま船内へと進んだのだが…
広いし暗いし静かだし…
船内への入り口は船の側面にあり、
少し階段を使って登るような感じに
なっている。
本当は上から飛び乗りたかったんだけど、
この船めちゃめちゃデカくて…
高さ6mぐらいかな…そんなの飛び乗れるわけねぇ
ってなったから大人しく地下らしきところの入り口から堂々と入ったのだが…
「てか窓とかないのか?この船…」
「確かに…上からの光も上へ繋がる階段のところしかないし…」
「人の気配もないですし…このまま上に行って奪還しちゃってままですよね。」
「じゃあそうするか。」
俺たちは暗闇の中を進む。
船内には特に目立ったものもなく、ただ
タルが所々にあったり、お酒の瓶などが柱の下に
あるぐらいだ。
…いやほんとに何もないの?この船…
俺は謎のモヤモヤを抱えながら進む。
その時こるねが、
「琉兎、一つ気になったんだけどさ…
この船、異様に大きくない?」
「え?うんまあ普通に大きいけど。」
「いやそうじゃなくて、なんか…
さっき見た外見と船内の大きさが噛み合ってないような気がするんだよね…」
「あー…なんか見た目より船内広くね?ってこと?
…確かに広いな…あんまり気にしてなかったけど、
船の先っぽの部分みたいなのが全然
見えてこないんだけど?」
この船、なぜか外見と内装の大きさが
合わない。
さっき俺たちが入ってきた入り口から
大体20秒ほどゆっくり歩いているが、
外見からすると、もう少しで船の先っちょが
見えてもいいはずだ。
怖くなった俺たちは一回船の屋上?部分に上がってみることにした。
「だ…誰かいる?」
「…いやいないね。人の気配を全く感じない。」
「てか…なんかこの船さっきと違くないか?」
「しかも周りが白い霧で覆われてて何も見えないし、桜島も見当たらない…」
そこにあったのは、さっき見た船とは全く違う船。
そしてこの船は乗った時は少し桜島に
乗り上がってたはずだ。しかし、
その島の姿はなく、ただ霧に囲まれているだけに
なっている。
「これどうゆうこと?」
「あ、あの!ルトさん、これ私聞いたことが
あります!これいわゆる幽霊船ですよ!」
「「幽霊船?」」
幽霊船、よく海賊映画とかに出てくるよな。
沈んでしまった船などのことを指すらしいのだが、
…確かに雰囲気は幽霊が出てきそうな感じだけど…
その時、脳内にノイズみたいな声が響いた。
「お前らは魔王様からの指名手配を受けている
やつらだな?」
「「っ…!?」」
この声…聞き覚えがある…そうだ…
こいつ、俺たちを一回殺した人だ…
1ヶ月前ほど前、俺たち…俺とこるねは
一回こいつらに殺されている。
一瞬にして八つ裂きにされた…
俺たちの背筋が凍りつく。
「今日はお前らを殺しにきたんじゃない。
というか、この空間じゃ、痛みも感じないし
死にもしねぇけどな。」
「…なにが目的だ?」
「力試しだよ。」
「力試しだと?」
するとその時、誰かが空から降ってきて、
目の前に着地した。
そこには、いかにも海賊という名にふさわしい
格好をした人が力無く立っている。
「こいつは幽霊だ。この船に呪いとして
縛りつけられたな。こいつとお前らが
戦って、どちらかが消滅したら
負けだ。」
「消滅…?」
「そうだ。この世界で魔物を倒したらどうなる?」
「っそうゆうことか…」
この世界で魔物を倒した時、その魔物は
すぐ消えてしまう。けど、それは魔物だけとは限らないってことか?
「とりあえず、戦ってくれ。おれは上から眺めとくわ。」
「おい!!お前…!」
「琉兎待って!とりあえずこいつを瞬殺してから、
あいつ…誰かわかんないけどそいつに
一発殴りに行こう。」
「…そうだな。じゃあ…やるか」
「今回は容赦しないからな…魔王の手下…!」
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