プロローグ
「先輩。私と、しりとりしませんか?」
放課後。教室。
俺──高校三年生。
一番後ろの廊下側の席。
4/20日。木曜日。
ホームルームが終わって、三分と経ってない。
教室の廊下側、視線の位置にある横這い窓をコンコンとノックし、俺が窓を開いて視認したのを確認して。
こいつは言った。
「しりとりしましょう。私と。縛りはなんでもいいですよ。何にします? 英単語縛り? それとも歴史縛りとか。生物縛りはちょっと。あと化学も。そこまで得意じゃないですから。あぁ、あと文字数縛りなんかもありますか」
「まず」
俺はその子の言葉を遮って、聞いた。
「きみは、どなた?」
「二年三組、加藤若葉。誕生日は四月十日、十七歳。髪は地毛」
見ると。
銀とも白ともつかないショートの髪。その髪型に似合う頭の輪郭。可愛い四割、美人四割、かっこいい二割の美貌。青と白のグラデーションみたいな瞳。小さい唇。背も高い。制服に赤のシンプルなネクタイ。ブラウスの胸の部分が突っ張ってる。
二年三組の、加藤若葉。
「……えーと。どなた?」
「加藤若葉です。先輩の後輩の」
「それは見ればわかるが」
いや後輩であることは彼女の言を信じただけだった。
けど今はそこ以外が知りたい。
例えば、ここが三年生の階なのは?
「先輩に会いに来ました」
「なんで?」
「しりとりしましょう。さぁ。行きましょう」
「……圧倒的に言葉が足りないような……」
表情のない抑揚のない声。でもその空気の振動は気分を少しも害さない。
彼女の声。
「…………」
高校三年生の教室に、高校二年生が訪ねてくるというだけでも奇怪なのに。
先輩男を訪ねる、後輩女とは。
もちろん、初対面である。
なんだろう、この状況は。
この女。
何が目的なのだろうか。
こうして。
俺は、加藤若葉と出会った。
この面白い女と、出会ってしまった。
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