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04 そもそも




「ダコタ……!」


 大きく見開かれた青い瞳がこちらを見る。

 ルイーズはエディから慌てて身を離して、ダコタの方へ駆け寄って来た。柔らかな手がだらんとぶら下がっていたダコタの手を持ち上げて、握り締める。


「ごめんなさい、ダコタ!誤解なの……っ!」


「誤解………?」


 ルイーズの後ろでは見物人であるクラスの生徒に交じって、エディが青い顔をしていた。


「こうなるつもりはなかった…!貴女とエディが付き合う前に私たちは少しだけ親密な関係になっていて、でも、些細なことで喧嘩してしまって仲違いしたのよ。それで……その、エディが私への当て付けで貴女と付き合い出したから………」


「……え?」


 ポロポロと透明な涙がルイーズの頬を流れる。

 ダコタは自分が悪者になったような気がした。


 徐々に重たくなる心臓をどうするべきか決めかねている間にも、ルイーズは嗚咽を漏らしながら「魅了魔法でエディは貴女を好きになったの」「まさか魅了が解けるだなんて」と話し続ける。


 泣きじゃくる彼女の話によると、ルイーズと喧嘩別れしたエディが自暴自棄になって魅了魔法を自分に掛け、彼女の友人であるダコタと付き合うに至ったらしい。ルイーズはその事実を知らず、ただ好きだった男の心が離れていったことに苦しんでいた。


 そして三ヶ月の時が経ち、魅了が解けたエディはルイーズへの愛を思い出す。晴れて気持ちを確かめ合った二人はこれにて関係を修復したと。



「本当にごめんなさい……実は私たち、」


 そう言って言葉を止めたルイーズの視線を追う。


 ダコタの手を握るルイーズの薬指の上には、品のある控えめなダイヤが輝いていた。眩暈がする。頭の中に砂が流れ込んできたみたいに、何も考えられない。


「婚約することにしたの」


「あ……そうなんだ……」


「この三ヶ月の間、とても辛かった。ダコタは私の大切な友人で、幸せになってほしかった。だけど、エディの名前を聞くたびに本当は悲しくって……」


「………ごめんなさい、知らなかったから…」


 再び泣き出すルイーズを前に、どうしたら良いのか迷う。クラスメイトたちも皆、同情するような目をルイーズに向けている。


 恋人を失ったのはダコタの方なのに、今この場においてはどう見てもルイーズが悲劇のヒロインだった。愛する人と友人が仲睦まじく談笑する様子をそばで見守るしか出来なかった、可哀想な美女。


 完全に邪魔者はダコタの方なのだろう。


 本音を言うと、そもそも魅了なんて厄介な魔法を自分に掛けたエディが悪い。魅了魔法は法律で他者に使うことを禁止されている。今回は自分に使ったというからお咎めにはならないのだろうけど、ダコタからしたらいっそ、彼がルイーズに魅了を施して自分に夢中にさせたら良かったのにと恨んだ。



「ルイーズ……色々ごめんね、おめでとう」


 空気に耐えられずに、まったく心のこもっていない祝福を述べたタイミングで、一限目の魔法生物学を受け持つレイトン先生が教室に入って来た。


 止まっていた時計が動き出したように、皆散り切りと自分の席へ戻って行く。ダコタがそばを通ったとき、エディはこちらを見ずに気まずそうに顔を背けた。



 一週間休んでいた間に、確かに話題は切り替わっていた。


 だけどそれはダコタにとって良い内容ではなくて、こんなことなら一週間も部屋で泣いて過ごしたりせずに学校に来れば良かったと思った。


 エディはどうやってルイーズにもう一度告白したのだろう。ダコタが聞けなかった婚約のためのプロポーズの言葉は、いったい何だったのだろう。


 一人で学校に来るのが寂しくて、彼にもらったイルカに縋って登校してきた自分がまるでバカみたいだ。本当に、心の底からそう思う。



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