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学園生活ってパラダイス!?2

「つ、疲れた……」


「午前中の授業、お疲れ様でした」


休暇明け初日、やはりというかなんというか、今までと言動の違う私に皆驚き戸惑っていた。


そりゃそうよね、授業には真面目に参加しているし、高圧的な態度も我儘な発言もない、取り巻……いや、少し前まで仲良くしていた令嬢達とも距離を置いているんだもの。


なにか企んでいるのか?と遠巻きに見られているのも仕方のないことなのだ。


いつも通りに見えるミラだって、内心では訝しんでいるのだろうし。


「本日のランチはいかがなさいますか?」


ちらりとミラに視線を移せば、ぱっと目を伏せられてしまった。


学園内には、生徒用の食堂がある。


食堂……といっても、前世の学食のような場所ではなく、高級レストランに近い。


お貴族様の通う学園だからね、カフェテリアなんてオシャレな場所もある。


ふたりで食堂に移動し、席に座ると、もう一度じっとミラを見つめた。


取り巻……いや、友人の誘いを断ったため、私は今ぼっちだ。


いつも取り巻……友人に囲まれて噂話に花を咲かせている私が今日はなぜ?と周りからの視線も感じる。


良くも悪くもディアナは目立つ存在だったから、しばらくは仕方がない。


そんなことを考えながら黙って見つめていると、さすがのミラも居心地が悪そうな様子だ。


そんなミラを見て、そうだと思い付き、口を開く。


「ね、ミラも一緒に食べない?」


「!?わ、私もですか?」


私の提案に、珍しくもミラは素直に驚きを表した。


まあ、そうよね。


今までそんなこと一度もなかったもの。


でも別にそれは変なことではない。


お付きの者が主人と同じテーブルにつくなんて!と思う人も一定数いるにはいる。


学園の外に出たら、それが常識だから。


けれどその場合、侍女や侍従はいつ食事をとっているのかという話になるわけで……。


そういう人達は、授業中に主人の元を離れて食事をしている。


しかし学園が認めている侍女や侍従はひとりだけ。


交代制というものが取れない。


つまり、授業中も主人の元を離れたくない、もしくは離れないようにと言われている侍女や侍従は、ランチを共にしているのだ。


もしくは主人が友人達とランチを楽しんでいる側で、自分達も食べる。


だから今も、そこかしこでランチを食べている侍女や侍従の姿が見られる。


「良いじゃない。多分、これからしばらくぼっちランチだろうし。ひとりじゃ味気ないから、付き合って」


「ぼ、ぼっち?いえ、はい……」


戸惑うミラと共に、スープとブレッドのランチセットを注文する。


お昼ご飯としてはちょっと物足りない気もするが……。


まあ、貴族のご令嬢としてはこんなものなのだろう。


食べ過ぎると夜会などでドレスを着る際、コルセットを締められる時にえらいことになっちゃうしね……。


そう納得しながら向かい合って席に座り、まずはスープを一口。


うん、相変わらず味はすごく美味しい。


ちらりと向かいを見ると、ミラがスプーンに手を付けようとしていなかったため、食べるよう促してみた。


おずおずとスープを口にするのを見て、ほっとする。


「……なぜ、笑っているのですか?」


「うん?うーん、ひとりの食事は味気ないから、ミラが付き合ってくれて嬉しいなぁって思って」


にこにこと笑って答えると、ふいっとミラが顔を逸らした。


あ、耳がちょっと赤い。


照れているのかしら?


ふふ、ちょっと距離が近付いたみたいで嬉しいわね。


「……お嬢様、スープが冷めてしまいますよ」


「本当ね。あら、パンもとても美味しいわ」


あんなに憂鬱だった学園生活の始まりだったが、ミラのおかげでちょっとだけほっこりしたのだった。






食事を終えた私達は、早々に食堂を出て学園内を散歩していた。


だってこの学園、昼休憩が二時間もあるのよ?


こちとら早食いに慣れていますからね、あれっぽっちのランチ、ゆっくり摂っても十五分もあれば充分。


お貴族様が通う学園だからゆっくり休憩を取らせているのかもしれないけど、ぼっちに自由時間をそんなに与えられてもすることがない。


スマホやゲーム、漫画があればいくらでも時間は潰せるが、生憎この世界にそんな娯楽は存在していない。


だからって食堂にいても、周りからの視線が痛いだけだ。


それならばと、学園内を探索することにしたのだ。


ディアナの行動範囲は狭かったからね、知らない場所がたくさんある。


そんな中見つけた庭園には、良く手入れされている花々が咲き乱れていて、素直に感動した。


こんな場所でおままごとや色水遊びをしたら楽しそうね……と思ってしまったのは、職業病だと思う。


ここでそんなことをしたらお坊ちゃまお嬢様達に驚かれてしまうわ……と思い直した。


庭園を抜けたところには何があるのだろうと思い進むと、うしろからミラが声をかけてきた。


「あ、お嬢様、そちらは……」


「え?ひょっとして進入禁止エリア?」


そうではありませんが……と言い淀むミラを不思議に思いながら、とりあえず覗いてみようかしらと足を進める。


そうしてしばらく進むと、段々賑やかな声が聞こえてきた。


立派な建物があるし、一体なんだろう?


建物を曲がり、声のする方を覗くと、そこには。


「ああーっ!それ、わたしのよ!」


「なによぅ!わたしがつかってたのよう!」


……ぬいぐるみを取り合っている女の子達?


前世でよく見慣れた光景に、目を瞬かせる。


そしてちらりとふたりの女の子の着ている服に目をやると、サイズは小さいが、今私の着ているものと同じデザインだ。


「学園の制服を着てるってことは……もしかして」


「はい、ここからは学園の幼等部エリアになります」


やれやれといった様子のミラに尋ねると、なんとなく予想していた通りの答えが返ってきたのだった。


……なんかこんなこと、前にもあった気がする。


そんなことを考えながら、子ども達の姿を見つめた。

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