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【コミカライズ】前世は保育士、今世は悪役令嬢?からの、わがまま姫様の教育係!?〜姫様のお世話で手いっぱいなので、王子様との恋愛はまた今度!〜  作者: 沙夜
わがまま姫様の教育係編

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王子様のはかりごと4

「ユ、ユリア!急になにをしているの、殿下から離れなさい!」


「あ、ごめんなさいディアナ様。少し殿下にお話があったので」


立ち上がり声を上げた私に、ユリアは殿下から顔を離し悪気のない様子で微笑んだ。


「も、申し訳ありません殿下!」


「いや、構わない」


ユリアの言動を謝罪すると、殿下は顔色ひとつ変えずにそう答えた。


「それよりも今日はブルーム侯爵令嬢と、話がしたくてね」


「え……?私と?」


ユリアの無礼を咎めないのかと不思議に思っていると、急に殿下がそんなことを言い出した。


「ああそれと、そこの新しい護衛の意見も少し聞きたいかな」


「……俺、ですか?」


しかもレンまで呼ばれた。


一体なんだろうと思いつつ、興奮していた心も落ち着いてきたため、ゆっくり腰を下ろす。


びっくりした、けど……。


どうしてあんなに胸が騒いだのだろう。


ユリアがあまりに失礼な振る舞いをしたから、よね、きっと。


「――――聞いているか?ブルーム侯爵令嬢?」


「はっ、はい!?」


はっとして顔を上げれば、訝しげな表情の殿下と目が合った。


「えっと……。すみません、もう一度お願いします……」


殿下の話を聞いていなかったなんて失礼、人のこと言えないわ……。


しょぼんとしながら殿下に軽く頭を下げる。


「いや、別にそんなに落ち込まなくて良いのだが……。と、とにかくもう一度聞くぞ、君、孤児院の慰問には興味がないか?」


「慰問……?」


思ってもみなかった話に、きょとんとする。


よくよく話を聞いてみれば、王族の女性は公務として王都の孤児院の慰問に行くことが稀にあるのだという。


アイリス様も随分落ち着いてきて、王族としての振る舞いも身につけつつあるため、そろそろなにか公務を……という話が上がったのだとか。


同じくらいの年の子どもと接することには少し慣れてきたし、孤児院の慰問はどうだろうかと殿下が思い付いたらしい。


「君は幼い子どもと接し慣れているし、アイリスも君が一緒だと心強いだろうと思ってね。同行してもらえないだろうか」


「わ、私で良ければ、ぜひ!」


レンから孤児院の話を聞いた時からなにかしたいと思っていたのだ、殿下の提案は願ってもない話だ。


「それと、子どもたちがどんなことを喜ぶのか、意見も聞きたくて。そこの護衛の君も意見を聞かせてくれるかな?」


にっこりと殿下がレンに微笑みを向ける。


「……あんた、なに考えてんだ?」


「ちょ、ちょっとレン!?」


あまりに不作法なレンの態度に、慌てふためく。


「何度もそう慌てなくても大丈夫だよ、ブルーム侯爵令嬢。先程も構わないと言っただろう?さて、護衛殿。別に他意はないさ、そう難しく考えないでくれ」


はらはらとした気持ちでふたりのやり取りを見守る。


殿下はともかく、レンは疑いの眼差しを緩めない。


「そ、そうよレン。子ども達が喜ぶことを一緒に考えましょう?」


きっとあの馬車の中での私とレンのやり取りを聞いて、殿下が考えてくれたのだろう。


慰問というとお金を寄付して焼き菓子などを配るイメージだが……。


実際に孤児院にいたレンの意見が聞けるなら、もっと実りあることができるかもしれない。


「……なら、読み書きと計算を教えてやってほしい」


ぼそりとレンが呟く。


「それができないと、大人になってもロクな仕事に就けないからな。孤児院の教師はいつも人手不足で、そんなことに手が回らない。紙やペンもないしな」


「なるほど。手配しておこう」


レンの言葉に、殿下が頷いた。

 

「あ、なら絵本とかを贈るのも良いですよね!見ながら文字を覚えられますし」


そこへユリアも声を上げた。


「それは喜ばれそうね。すごいわ、ユリア」


「創作意欲を燃やす子が現れるかもだし」との呟きが聞こえた気がしたが、そこは無視した。


「でしたら、色付きのペンも良いのでは。絵を描くのが好きな子も多いですし」


「……ああ。地面に棒で絵を描くのが精々だからな。きっと喜ぶ」


ミラの提案に、レンも同意する。


すごい、みんなから色んな意見が出てくる。


「私、幼等部の子ども達用に作った文字表や折り紙の折り図も用意するわ。一緒に遊んで、教えてあげたい」


身分は違えど、同じ子ども。


きっと興味を持ってくれるだろう。


それも良いな、これはどうかしらと次々と話が進む。


そんな私達の話し合う姿を見て、アイリス様がおずおずと手を上げた。


「私、またポプリを作って孤児院の子達に贈りたいわ。お兄様、庭園のお花、摘んでも良いかしら?それとディアナ、そこの侍女達も。……また一緒に作ってくれる?」


とても優しい、かわいらしい提案に、その場のみんながもちろん!と賛成したのだった。


「……お姫サマも、ありがとな」


そしてレンのそんなぶっきらぼうなお礼に、私は小さな笑みを零した。







「――――ではこんなところで良いかな。とても有意義な時間だったよ。また慰問についての日程など、詳しいことが決まったら連絡させてもらう」


「はい、よろしくお願い致します」


慰問についての意見もまとまり、殿下が腰を上げた。


仕事に戻るのだろう、挨拶をしようと立ち上がると、思い立ったように殿下が私の方を向いた。


「そうだ、少しそこの新しい侍女を借りてもいいかな?聞きたいことがあってね」


「え……。ユリアを、ですか?」


そうだと殿下は答える。


構いませんとは言いつつも、なぜだろうという気持ちが湧き上がる。


「ああ、心配しなくても大丈夫だ。本当に少し話したいことがあるだけだから」


ユリアに悪態をつくのではないかと私が心配していると思ったのだろう、そんな風に言って殿下は苦笑いした。


そういうつもりではなかったのだが、この胸のモヤモヤはなんだろう。


「大丈夫ですディアナ様!じゃあちょっと行ってきますね〜!」


「すまないが、もう少しアイリスの相手をして待っていてくれ。それではな」


そう言うとユリアを連れて殿下は退室してしまった。


私やみんなの前では話せない、っていうことだよね?


なんだろう、嫌な感じがする。


「ディアナ?じゃあもう少しお茶に付き合ってくれる?」


「あ、ええ、もちろんです。侍女の皆さんも新しいお茶、ありがとうございます」


首を傾げるアイリス様に、笑顔を作って応える。


殿下とユリアのことを考えると、こんなことばかりだ。


こんな気持ち、嫌だな……。


そんな悶々とした思いを胸に、私は新しく淹れてもらったお茶に口をつけるのであった。

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