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ヒロインの陰謀2

「お父様!どういうことですか!?」


その日の夜、帰宅したばかりのお父様を捕まえて、私はそう詰め寄った。


「なぜ私があんなやつの……!!」


「ディアナ、落ち着け」


興奮MAXの私に少したじろぎながらも、お父様はそう言って宥めてくれた。


とりあえず座ろうと言われお父様の執務室に移動し、ソファに腰を下ろす。


侍女にお茶を淹れてもらってひと口飲めば、少しだけ落ち着きを取り戻した気がした。


……のは、お父様の発言を聞く前までだった。


「たしかにあのクロイツェル公爵令息(ポンコツ息子)からそのような申し立てがあったことは事実だ」


はぁぁぁぁ!?


一体なに考えてんのよあいつは!!


一気に怒りが蘇ってきて、叫びこそしなかったが、盛大に顔を顰めた。


「だが私とクロイツェル公爵が即座に却下している。安心しろ、公爵令息(クソ野郎)の思い通りになどさせん」


「そ、そうですよね!?」


良かった、さすがお父様とクロイツェル公爵!


内容が内容だけにものすごく動揺してしまったけれど、よく考えたらふたりがそんなことを良しとするわけないわよね。


ふう、これでようやっと本当に落ち着いて話が聞けそうだ。


「当然だ。クロイツェル公爵には申し訳ないが、あんな令息(ウジ虫)などにディアナはやれん」


……冷静になってから思ったのだが、先程からお父様のアルフォンスの名前につけるルビが段々ひどくなってきている気がする。


表情はいつも通りだから気付かなかったけれど、なんならお茶の入ったカップを持ち上げる手も、怒りに震えているような……。


「おまえはなにも心配せず、普段通り過ごしていれば良い。ああ、エリーゼの相談にも乗ってやってくれ。最近おまえが忙しそうで構ってもらえないと嘆いていた」


「ああ、モイストポプリの件ですね」


心配しなくて良いとの言葉を信じるとして、とりあえず今度は私がお父様の静かな怒りを宥めよう。


そう考えた私は、お義母様の事業のことへと話をシフトすることにした。


結論から言って、モイストポプリは今社交界で非常に話題を集めている。


もちろん品物自体が女性のツボを押さえていることもあるが、アイリス様と殿下、そしてなんと王妃様にまで支持を得たことが大きい。


なぜ王妃様まで出てきたのかというと、きっかけはアイリス様が自分で作ったモイストポプリを見せたことから始まった。


子どもが自分で作ったものを褒めてもらいたくて親に見せるのは、ごく自然なことである。


そしてアイリス様は、そのまま私が殿下にポプリを贈ったことまでお話しされたらしい。


その後王妃様が殿下を訪ねて詳しく話を聞きたい!となり……殿下の持つモイストポプリだけでなく、お義母様の企画書まで王妃様の目に触れることになったのだ。


侯爵夫人としての責務をこなしながら事業まで興したお義母様に、元々王妃様は良い印象を持っていたらしいが、今回のモイストポプリもとても気に入って下さり、私も支援しましょう!とおっしゃった。


願ってもない話ですと目を輝かせたお義母様と、完全に意気投合したというわけだ。


「癒やしの魔法を付与したものも販売しようという話が上がっているそうですね」


「ああ、おまえが殿下に献上したものを見て、王妃様からご提案があったそうだ」


殿下に贈ったモイストポプリには、ハーブの効能に合わせて精神安定の魔法を付与していた。


おかげでぐっすり眠れて疲れも良く取れると殿下には大変好評だ。


それを聞いた王妃様が、商品に付与しても良いわね!と閃いてしまったのだ。


「しかし魔法付与できる魔導師は少ないし、そういった精神に影響を及ぼす魔法を使える者もひと握りの人間しかいない。付与なしのものは安価で、そして付与したものは高値で売るつもりらしい。かなりのプレミアになるだろうと言っていたな」


「それはその……。私に、手伝ってほしい、ということですよね……?」


まあそうだろうなというお父様の答えに、がっくりと肩を落とす。


さ、最近私ってばあちこち引っ張りだこじゃない……!?


普通の貴族令嬢は、もっと毎日ゆったり優雅に過ごしているはずなのだが。


「大変なら学園に通う時間を減らしても良いぞ。おまえが大変優秀で教えることがないと学園の教師から嘆かれているからな」


「いえ……でも、そうです、ね」


学生の本分は……という気持ちがないこともないのだが、たしかに隠れチートだった私に学園の授業は退屈だ。


幼等部のみんなに会うことと、時々キャロル嬢達とおしゃべりすることを楽しみに通っているだけ感がある。


だからといってアイリス様との時間を削るわけにはいかないし、騎士団の演習を断れば殿下が怖いし、事業については王妃様とお義母様の圧がすごい。


「……午後から通う日がたまにあっても良いかもしれませんね」


「ああ、それくらいならば学園も許可するだろう。おまえの優秀さは知られているのだし、王宮の関わる仕事があるからと言えば反対する者もいないはずだ」


なんてことだ、完全に周りに踊らされている気がしてならない。


子ども達とのんびりまったり過ごせればいっか〜と思っていたあの頃が懐かしい……。


「合間にグエンの相手も頼む。私が頼まなくてもおまえは構いに行くだろうが……。使用人の子ども達と一緒に遊ぶのも良いだろうな。最近おまえが遊びに来ないと寂しがっているそうだぞ」


そうよね、タクトやメイちゃん達ともなかなかゆっくり遊べていない。


グエンはよくあの子達と一緒に過ごしているみたいだけれど……。


「分かったわ、程良くグエンや子ども達と遊んでリフレッシュしながら頑張ります」


「ああ、無理はしなくて良いからな」


お父様とこんな風に話ができるのって、なんだか不思議。


やっぱりあの時きちんと話をして和解しておいて良かったなと思いながら、私はお父様の執務室を出たのだった。


アルフォンスのことについては、すっかり安心して。

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