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【コミカライズ】前世は保育士、今世は悪役令嬢?からの、わがまま姫様の教育係!?〜姫様のお世話で手いっぱいなので、王子様との恋愛はまた今度!〜  作者: 沙夜
わがまま姫様の教育係編

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癇癪令嬢とわがまま姫様2

気まずそうに若干俯きながらも三人が頭を上げてくれたのを確認し、ほおっと安堵の息をつく。


良く考えたら、こんな人目のあるところに呼んだ私も悪かった。


「ごめんなさい。ランチがてらにと思っていたのだけれど、ここじゃ落ち着かなかったわね。せめて防音魔法を張りましょうか?」


「い、いえ。ディアナ様にそこまでして頂かなくても!」


真ん中に座っていたキャロル嬢がぱっと顔を上げて慌てる。


三人の中で一番伯爵家と位が高く、気の強い令嬢だ。


思い出してみれば、ディアナの我儘に一番同調していたのは彼女だった。


「そう?……じゃあ、話、聞かせてくれるかしら?」


囁くような声で伝えれば、キャロル嬢は目に涙を滲ませて震える口を開いた。







「話、聞かせてくれてありがとう」


「いえ。……本当に、申し訳ありませんでした」


最後にもう一度頭を下げて、キャロル嬢達は教室へと戻って行った。


三人を見送り、ほっと一息つく。


「お疲れ様でした。じきに午後の授業が始まりますが、大丈夫ですか?」


疲れているように見えたのだろう、ミラが気遣ってくれた。


「ああ大丈夫よ、ありがとう。彼女達とちゃんと話せて良かったしね」


確かにちょっと疲れはしたが、気持ちはスッキリしている。


話の内容だが、結論から言えば、彼女達がユリア嬢に嫌がらせをしていたのは本当だった。


とはいえ、危険に陥れるようなものではなく、私という婚約者がいるアルフォンスに馴れ馴れしくするものではないとか、令息達を侍らせてはしたないと苦言を呈するような感じ。


まあね?


ちょおっとばかり暴言もあったみたいだけれど。


でも、嫌がらせかと言われたら微妙な気がする。


だって内容は至極真っ当なことだもの。


それに、なぜそんなことをしたのかという理由を聞いたら、個人的には彼女達を責められなくなってしまった。


『……だって、悔しいじゃないですか。クロイツェル公爵令息の婚約者は、ディアナ様なのに』


唇を噛むキャロル嬢に、私は目を見開いた。


『あなたになにが分かるの!?って言われるかもしれませんけど、私はディアナ様の気持ち、分かります。ひねくれたくなるのも、当然じゃないですか』


よくよく話を聞けば、貴族には珍しいことではないが、キャロル嬢の両親も政略結婚で不仲なのだという。


そんな彼女は、ディアナと通じるところがあって、なにかと気にかけてくれていたらしい。


まあディアナはそんな優しさに気付かず、侯爵令嬢という肩書に惹かれたただの取り巻きだとしか思っていなかったのだが。


そうでなければ、休暇が明けてすぐに『これからは別行動しましょう?』なんて言わなかったのに、キャロル嬢には悪いことをしてしまったわ。


『急にそんなことを言われて、どうして?と思わなくもありませんでしたけど……。ああ、これまでの行いを清算して、やり直そうとされているんだって思いました。だから、私達もディアナ様に関わるのを止めたんです。陰ながら見守ろうって』


な、なんて良い子なの……!


そう思いつつ、なにも知らずに一方的に離れようなんて言って、申し訳ない気持ちでいっぱいになった。


『でも……。失礼ですが、クロイツェル公爵令息には本当に幻滅いたしました。まさか、あんなことまで……』


アルフォンスの話に移ると、キャロル嬢の顔が歪んだ。


せっかくディアナ()が改心しようとしているのに、堂々と浮気し、蔑ろにしているのがどうしても許せなかったらしい。


たぶん良からぬシーンでも目撃しちゃったんじゃないかしら。


ちょっと顔、赤くなってたし。


言葉を選びながら、言い淀んでいる感じもしたもの。


『嗜める程度にしようと思ってはいたのですが、つい、カッとなって強い口調になってしまったのは、認めます。それに、そのせいで結局ディアナ様にご迷惑をおかけしてしまって……』


くっきりとした、少しキツく見える目が涙で滲む。


『……そう。ありがとう、私のために怒ってくれて』


震えて謝るキャロル嬢の手にそっと自分の手を重ね、私はお礼を言ったのだった。


そうして結局昼休憩が終わるギリギリまで話していたのだが、きちんと話ができて良かったと思う。


「もっと早く彼女達と向き合えば良かった。あんなに私のことを考えてくれていたのに」


「……そう、ですね」


教室に向かう途中の私の呟きに、ミラは素っ気なく答えた。


いや、違う。


ちょっと落ち込んでる?


表情があまり変わらないから分かり辛いけれど、申し訳なさそうな、気落ちしているような、そんな声色だ。


「……キャロル嬢は私と似た家庭環境だったからね、誰も気付けなかった私の心の機微に、気付くことができたのよ」


「それでも。お嬢様のことを考えられなかった我々にも、落ち度はあります」


やはり以前までの私への態度を気にしているようだ。


そんなの仕方ないのに、ミラは真面目ね。


「良いのよ。こうして誤解も解けて、今は家族とも仲良くやれているのだから。拗れていた糸を解くには時間がかかるものだし、時々間違うことも、やり直すこともあるわ」


ちょっとしたきっかけでするりと解けることもあるしね。


冗談めかしてそう笑うと、ミラも少しだけ表情を和らげてくれた。


本当に、お互いの気持ちを伝え合うって大切なことだ。


『自分の気持ちをちゃんと言葉にしないと。お友達がなにを考えているのか、わからないでしょう?』


子ども達にはそれを口酸っぱくして言い聞かせているのにね。


大人になってもなかなかそれができないのだから、難しいものだ。


「ミラとも、今度ゆっくり話したいわ」


「……お嬢様はこれから忙しくなるのですから、たかが侍女にそんな時間を割いて頂かなくても結構ですよ」


アイリス様のことを持ち出されて、確かに忙しくなりそうねと苦笑いをするのだった。

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