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【コミカライズ】前世は保育士、今世は悪役令嬢?からの、わがまま姫様の教育係!?〜姫様のお世話で手いっぱいなので、王子様との恋愛はまた今度!〜  作者: 沙夜
第一章 悪役令嬢編

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お馬鹿さんな婚約者をどうしましょう2

なんとか笑いを収めた私は、ランチ後いつも通りミラとともに幼等部へと向かった。


「でぃあなさま!こんにちは〜」


「でぃあなさま、きのうのつづき!おりがみ、いっしょにやりましょー!」


姿を見せるや否や、あっという間に子ども達に囲まれた。


ああ今日も癒やされる。


「昨日の続きね。じゃあ今日はなにを折ろうか?お花が良い?果物が良い?それともお家?お家は難しい折り方があるわよ〜」


「うーんと、わたしおはな!」


「おれ、おうち!むずかしくてもできる!がんばる!」


おりがみなんて知らない!というみんなに教えたのはつい昨日のことなのだが、一枚の紙がぱぱっと形を変えることに目を輝かせた子ども達は、すっかり折り紙にハマってしまった。


きっちり折らないと形が崩れてしまう折り紙は、集中力もつくし手先も器用になる。


平面に慣れてきたら、立体のものも教えてあげたい。


きっと驚くだろうなぁ。


「順番にね。ほら、折り方の図も持って来たから、一度私と折って覚えた子は、これを見ながらお友達に教えてあげてね」


分かりやすいように折り順を描いた折り図、昨夜作ってきたものだ。


これがあれば折り順を思い出しながら折れるし、慣れてきたら大人がつかなくても子どもだけでこれを見ながら折れるようになる。


大きい子が小さい子に教えてあげたり、自分ひとりで考えながら折ったり、とても便利なものなのだ。


「なるほど……。これがあれば、ディアナ様がいない時にも遊べますね」


「はい。もちろんこれは差し上げますので、どうぞご利用下さい」


「まあ!ありがとうございます、助かります!」


幼等部の教師も興味津々で覗き込んできた。


こういうものがあると大人がびっちり付かなくても良いのねと、なにかヒントになったみたい。


そうそう、そうやって工夫すれば教師の負担も減るし、子ども達の学びや人間関係の勉強にもなって、一石二鳥だ。


限られた数の保育者しかいない、手の足りない中で、どうやれば子ども達が安全に楽しめるか、同僚達とよく考えたっけ。


「食後のこの時間、今までは本当に大変だったのですが……。ディアナ様のおかげで、子ども達が好きな遊びを見つけて集中して遊んでいるので、私達も心に余裕を持って接することができるようになりました」


「もちろんトラブルは時々ありますが、他の子が落ち着いて遊んでいるので、きちんと話を聞いて対応できるようになりました」


教師達がしみじみとそう話す。


「……私は遊びを提供しただけですから。そうやって、この子達と向き合いたいって思う先生方の気持ちの方が、ずっと素晴らしいと私は思います」


そりゃ貴族の子息をお預かりしているという責任感もあるのかもしれないけれど。


余裕ができたからサボれる!とか、そういう思考にならないのは素直にすごいと思う。


人間とは、やっぱり楽な方に流れてしまう生き物だから。


「ありがとうございます!ディアナ様にそう言って頂けると、すごく嬉しいですぅぅぅーっ!!」


思ったことをぽろりと口にしただけだったのだが、なんといきなり教師達が泣き始めた。


「えっ!?先生方、ど、どうされたんですか!?」


「そうなんです!!いつもいつも幼等部の教師は馬鹿にされがちで、学園内でも肩身が狭くって……。私達はこんなに子ども達と向き合おうと努力しているのに!ですから、ディアナ様のお言葉、本当に嬉しいです!!」


わうわう涙を流す教師達に、既視感を覚える。


『もうやだ、こんな割に合わない仕事……』


前世で命を落とす前に呟いた、あのひと言。


ああ、あの時の私と、同じだ。


「……いつもありがとうございます、先生方。子ども達が元気に一日過ごせるのは、先生方のおかげです。馬鹿にされても肩身が狭くても頑張る先生方に、子ども達は救われているはずです」


褒められるために働いていたわけではないけれど、私だって保護者の方にこう言われたかった。


誰かに自分の頑張りを認めてもらいたい。


そう思うのは、自然なこと。


「私はちょっとお手伝いしているだけです。毎日この子達と向き合っているのは先生方ですから。どうか自信を持って下さい」


信頼できる園長先生に、前世の私がかけてもらった言葉。


ほとんどそのまま、受け売りだけれど。


そう言ってもらった時、本当に嬉しかったから。


「……本当に、ありがとうございます、ディアナ様」


教師達の笑顔と、前世の自分が重なった。






* * *


同時刻。


「ほら、こっちこっち!」


「おい、走るなって。迷うぞ」


アルフォンスは淡い桃色の髪の少女を追って、学園の庭を歩いていた。


綺麗な花が咲いているのを見つけたのだという少女に誘われたアルフォンスの表情は、ディアナに対するそれとは全く異なり、頬も緩んでいた。


そう、アルフォンスは最近この少女がお気に入りだった。


はじめこそ低位貴族である少女を蔑んでいたが、徐々にその無邪気で清らかな心に惹かれるようになった。


その容姿も可憐で、親に決められた婚約者との違いが目につくようになり、「あいつもこれくらい可愛気があれば……」と思うこともしばしば。


そうして今はすっかりこの少女に好意を抱くようになっていた。


「ほら、アルフォンス様、見て下さい!お花、とってもかわいいでしょう?」


色とりどりに咲き誇る花々の中にいる少女の笑顔こそ、とても美しい。


うっとりとその光景に目を奪われていた時、アルフォンスは少し離れた場所から聞き慣れた声がするのに気が付いた。


(?たしかこのあたりからは幼等部の敷地内だったはずだが……?)


こんな所であいつの声が聞こえるはずがない。


そう思いながらも、気になって声にする方へと歩みを進めた。


「!こんなところで、なにを……」


「どうしたんですか、アルフォンス様?……あれ?ディアナ様?」


アルフォンスと少女が茂みから覗き込んだその先にいたのは、ディアナと幼等部の子ども達。


楽しそうに子ども達と遊び、幼等部の教師とも親しげに話すその姿を、アルフォンスははっ!と笑い飛ばした。


「高等部の令嬢達に相手にされなくなったから、こんなところで低能な奴らとつるむようになったということか」


馬鹿にするような目でディアナを見る、そんなアルフォンスに少女は眉を下げた。


「ああ、すまない。ユリア、そろそろ戻ろう。あいつのことは気にしなくて良い。やはり俺には相応しくない女だったようだ」


ふん!と鼻で笑いユリアと呼ばれた少女の肩を抱き、アルフォンスは高等部の校舎の方へと歩き出す。


戸惑いながらもユリアはそれに合わせて歩き、そっとうしろを振り返る。


「ディアナ様……」


子ども達の中で優しく微笑むディアナを見つめ、ユリアはそう呟きを落とした――――。


* * *

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