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022 勉強会


「さぁ、いくつあるかな?」

 

 さやに入った乾燥豆を取り出し、1個2個3個と数える。なかなかの量だ。まずは十ずつの塊にして、次は百ずつで・・・・。


 オレと兄さんパーティの面々は、執務室の隣にある会議室みたいな部屋に集まっている。中央に大きな机があって、10人くらいが座れる椅子があるよ。サイドボードにはティーセットがあるけれど、書庫や地図の巻物なんかも置かれて大人になった気分。


 乾燥豆を数えることに意味なんて無いけど、オレがどれくらい理解してるかを知るために必要なんだって!


「子供は子供同士で育つもんだが、明らかにおかしいだろ、こいつ。常識ってもんを教えてやってくれ。村ん奴らに放り込んでも誤魔化せる程度で十分だ」


 なんてディック様が言うんだよ。失礼しちゃう!! オレ、今まで仲良くできなかった人いないよ?


 兎にも角にも始まった勉強会は、みんなに褒められて、刺激があって楽しい。仕事をしてる父様と過ごした時間を思い出す。


「うん、数えるのは何処まででもって感じかな? さりげなく掛け算までやっちゃってるし。少なくともニコル以上ってとこかな」


 キールさんが頭を撫でてくれた。うふふ、嬉しいな。ニコルはブウと頬を膨らませ、ガシガシとビッグナッツに齧り付いている。そりゃ、ただの三歳児と比べられちゃね……。誰だって怒るよね。


「お金は分かるかな?」


 キールさんが皮袋からジャラジャラと硬貨を出した。わぁ凄い。父様達が使っていたのと模様が違うけど、キールさんお金持ちだねと絶賛した。でもこのお金はパーティ資金なんだって。個人のお金はまた別にあるらしい。大人の事情ってやつだ。


 うーん、銅貨が10枚で銀貨? 銀貨が10枚で金貨。これでいいのかな? ちょっと大きい金貨があって、これは金貨の10枚分だっけ。 あれ? この白い小さいのは……?


「うん、それは白金貨。結構な額だからね、普通は見たことがなくて正解。大金貨百枚分かな。ここに来る前にアイファがね、ちょっと絡んできたガラの悪い盗賊をやっちまったら賞金首でさ。おっと、ちびっ子には早い話だが、お金も問題なさそうだね。大抵は銅貨1枚か半銅貨で事足りるよ」

 そう言って手の上に乗せてくれたのは、半分に割られた銅貨。これで牧場のミルク一杯分らしい。


「時間は分かるかい?」

 漠然とした質問にうーんと頭を捻る。


「朝とか昼とか分かるくらい。だってお日様とか影とかって季節によって変わるでしょう? オレのいたところと同じかどうか分からない。時計がないんだもの」


 キールさんとアイファ兄さんが顔を見合わせる。オレ、何か不味いことを言ったのだろうか? 時間が分からないのは困る? 不安になってしゅんと眉尻を下げた。


「あ、いや、コウタ。逆だ逆」

 慌てて慰めてくれたキールさん。ニコルが憤慨したまま机の上に小さな丸い時計を出した。


「あっ、時計! これなら分かるよ! 今は3時20分くらい」


 懐から従魔の “ヘビ” を取り出して腕に這わせたニコルはチラと嫌そうな顔をして言った。


「普通、時計なんて知らないし、そもそも分まで言い当てるなんてお貴族様くらいだよ。しかも日光とか影とか季節とか、学校に通ってやっと理解する内容を何で三歳が分かるんだ?」


 ニコルの胸の幾つものポケットに潜っては小さな顔を出す()()。指や首、緩急をつけて這いずり回る姿に視線を奪われつつ、ほおと納得する。

 だって山では時計は普通のことだったもの。コロコロ変わる山の天気では、影や日光を読むことは難しい。家の中、家の外にも時計があって、いつでも時刻が確認できたんだ。



「ーーで、時計も読めるだろ? 学校に上がる六歳だって出来ねぇぜ? お前、本当の年齢幾つだ? 詐欺してねぇか?」


 クルクルと紅茶をかき混ぜ、不機嫌そうなアイファ兄さん。

 もう、本当に三歳なんだってば! 失礼だよ! 

 ほらほら、紅茶が飛んでテーブルを汚している。お行儀が悪いなぁ。兄さんの方が子供みたいだよ。じとりと睨んでやったけど、鼻でふふんと受け流された。



「はははは……。普通の三歳児はね、豆を数えるあたりで飽きて来るもんなんだけどね……。参ったな。じゃあ、ちょっと早いけど、魔法について勉強しちゃう?」


 えっ? 魔法? キールさん、魔法について教えてくれるの?

 俄然やる気がみなぎったオレは元気よく首を縦に振る。


「さて……。魔法って何だと思う?」


 おや? 何だか難しそうな話が始まりそうだ。今までと何かが違う。


「はい! 身体の中の魔力を練り上げて、ぐるっとして、ピカッとなってドカンってなるやつです」

 手を挙げて、元気よく答えると、三人がブヒッっと吹き出す。 何で?!


「こんなとこだけ三歳児……っうぅ。 あはは、ひひひひひ」

 ここぞと笑い転げられ、面白く無いオレの頭を優しく撫でたキールさんが、話を続ける。


「半分正解。身体の中の魔力を練り上げて発動させるのは正解。ぐるっとして、ピカっとなるのは、多分魔法陣のことかな? 正しく練り上げられた魔力は魔法陣を通って力を持つんだ。でも、ドカンってなるのばかりじゃ無いからね。この辺りがあと一歩ってとこかな?」


 そう言うとキールさんは細い杖を取り出してブツブツ呟き、ポワンと杖先に明かりを灯した。

 ついでニコルは飲み干した紅茶のカップを手に取って、やはりブツブツ呟くと空中に水滴を浮かべて、ぽちゃんとカップの中に注いだ。


「これが魔法だよ」


 ?????


 オレは首を傾げる。それって魔法じゃないよ。だってオレもできるもん。魔力なんて練り上げないよ?


「納得いかないって顔をしてるね。でも、これが魔法なんだよ。普通じゃ起きない現象を魔力を使って起こすこと」


 ?????


「だからな、俺みたいに魔力が少ないやつは、明かりなんかつけらんねぇの。例え頑張ってできたとしても、一瞬な。だから明るくしたい時はランプとか蝋燭に頼るわけ。できねぇ奴がいるってのが魔法」

 机の対岸からオレの目を見据えたアイファ兄さんが、何だかイライラしながら熱弁を奮う。


「魔法が使えるって言ってもさ、魔力を放出しようとすると、色々条件が変化するでしょう? 例えば一杯の水でも、カップに入れるのと水差しに入れるんじゃ使う魔力も変わる。 その調整をするのが杖とか、アタシは指輪を使うわけ」

 

 ニコルも身振り手振りで話す。そしてオレンジの瞳をぐっと近づけて言う。


「で、ちびっ子、あんたはどうやるの? ライト。できるでしょう? やって見て」


 オレは何だか納得がいかないけれど……。

「ポチッ」


  ポワン!


「「「 ……やっぱり! 」」」


 頭サイズの光の玉をオレの頭上に浮かべると、何故か三人は机の上に突っ伏した。




 

 登場人物が増えました。個性的な3人なのですが、個性が表現しきれなくて未熟さを痛感します。

 


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