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163 捕まった


ー---ガッキィーン!


 プルちゃんを連れて転移した先でオレたちは見えない壁にぶつかった。結界が張られていたんだ。戻れないとオレの転移がバレてしまう。壁に弾かれてどうしようかと首を捻った。


 高い壁に阻まれているけれど、ここは王城の近く、もしくは一角らしい。かがり火や塔の上の明かりが見える。遠くから人の声が聞こえてくるのは、音か結界の反応でオレたちを探しているのかもしれない。どうしよう。


「おい、どんすんだよ! だれか来るぞ! 俺様、見つかったら殺される」

 一匹慌てた隠密スカが、ぴょんぴょんとオレの周囲を飛び回った。そのうちに大きめの石を見つけ出し、穴を掘って隠れようとする。うん、いい案だ。オレも穴を掘ろう。

 そう思って地面に手をつくと、スカの近くで赤く発光した太い杭が転がっていた。

「スカ、それ何?」

 穴を掘るのに邪魔だとスカが抜いて捨てたらしい。ピチチとオレに寄り添っているソラが上を見上げて言った。

「多分、結界石。コウタ、今なら戻れるはずよ。結界が消えている」

「えぇ? 本当?」


 ー--ーシュン!


 ソラの言う通り、自分の部屋に戻ってきた。外では幾人もの兵だろう声が響いてちょっとした騒ぎになっている。ささとベッドにもぐりこむと、メイドさんが扉から入ってきたので、オレは瞬時に眠ったふりをした。


「ああ、よかった。ちゃんとおやすみです。まさかと思ってきましたが、杞憂に終わってよかったです」

 小さなつぶやきを頬を硬直させて聞いた。ふう、よかった。ぐったりと疲れたオレは朝までぐっすり眠った。



「こ、これは素晴らしい! なんという輝き! あの方もお喜びになります」

 

 転移にはたくさんの魔力が必要なのは本当みたい。翌朝、オレの首飾りは金の魔力で満たされて、ぽろりと首から外れたのだった。新しい物の準備が追いつかないと朝食もそこそこにメイドさんは扉から出て行った。オレは再びベッドにもぐりこんで、スカとプルちゃんと作戦を練った。


 大きな魔法、大きな魔法。

 顔を洗う時、水がめの水を使わずに手桶をたっぷりの水で満たした。こんなんじゃだめだ。思い切り!


「きゃー---! 滝のような雨!」

「違うわ、2階で水が溢れているのよ。」

「赤ちゃんたちは無事かしら?」


  大丈夫。洪水になったのはオレの部屋だけ。火を使うのは危ないから、水たまりになったところを凍らせて。濡れたところは温風をかけて・・・・・


 そうだ! 歌を歌ったら、美味しいフルーツがたくさん実ったんだった。ここの庭にも果物の木があるかしら? 植物の成長をイメージして、母様から教えてもらった歌を歌う。小鳥の歌や花の歌。蜂や動物の歌をたくさん知っているよ。この国に来てから家畜以外の動物はあまり見ていないけれど、幻獣になる前の動物さんたちをオレはたくさん知っている。


「なんだ! これは! 草がどんどん成長していく」

「助けて――! 木のつるが絡まった」

「なっ? トレントが入り込んだか?」

「いや、違う。魔物じゃねぇ。木が、木がすげー速度で成長してんだよ」


 しまった。やりすぎた。迷惑をかけるのはいけないね。大きな魔力を使うって難しいなぁ。

 あんなに広いと感じた部屋も、窓から見える景色も、魔法を使うには狭すぎる。どうしようかなぁ。


 プルちゃんが転移するときは、きっと大きな魔力が動く。魔力を感じる人がいるかどうか、分からないけれど、すごい魔道具があるから油断大敵だ。それなら、オレが普段からたくさん魔法を使って、大きな魔力の動きは当たり前の状態にしよう。これで、いつでもプルちゃんが転移できるね。そう思ったのだけれど、ただ騒ぎを起こしただけだった。ごめんなさい。


 結界の中から外に出る分には問題なく行けそうだ。だけど、帰りが難しい。プルちゃんとスカだったら、門の近くで待ち構えていれば、門の外からくる人と一緒に入って、瞬時に転移。この方法なら、結界石を壊さなくてもいけそうだ。バレるまではそうしよう。


 オレは、ディック様達との繋がりを確認できてとても嬉しい。一人でも、頑張れるよ。そして、誰が何のためにオレを欲しいのか? オレの魔力をどうするのか? どうしたらオレがディック様の元に帰れるのか? 絶対に犯人を捕まえるんだ。


 それから......。オレや赤ちゃんのきれいな魔力。何に使うのだろう。とっても嫌な予感がする。だから、魔法は使うけれど、魔法を溢さない。自分の内にしっかり閉じ込める練習もするんだ。メリハリってやつ。そうすれば、オレも徐々に体力を取り戻せる。


「コウタ様、今日のお勉強は文字の練習からです。先生がいらしゃいましたよ」

 桃色の頬のメイドさんが、頭に線が描かれた男の人を連れて来た。眼鏡をかけていて神経質そうな先生。ソラが頭の上を旋回すると嫌そうに追い払った。


「コウタ、コウタ。 この人、髪の毛を伸ばして頭の上で橋を作っているわ。面白い」

「は、橋?」

 思わずブッと吹き出してしまった。けれど先生はそんなこともお構いなしに、分厚い本を開くと、薄い紙と木ペンを机の上に置いた。それから、部屋の中の本棚を見回すと、ベッドでコテンと横になっているスカを見つけてむんずと掴んだ。


 スカ?! 



 


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