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小箱クッキー

大変遅くなりました。


最終話まで投稿予約済みです。

 敵情視察をしてからというもの。うちのパン屋さんには更にお客さんが来なくなってしまった。退屈なので私はパンの材料の残りでクッキーを作っていたのだけど、とてもいいアイデアが浮かんだ。


「お父さん、お父さん、お父さん!」


「なんだ?」 


 同じく退屈そうにしているお父さんに早速アイデアを見せてみる。それは四角いクッキーの周りを、溶かした砂糖で固めて立方体を作ったものだった。


「これはなんだい? エレノア」

 お父さんが優しく、しかし何かわからず困ったように聞いてくる。


「これはね、え〜と、小箱クッキー!」

「小箱クッキーか。面白いな」


 お父さんはちょっと興味を示したのか、持ち上げて側面や底面を観察してくれた。そうすると、中からカランと音がする。


「中に何か入ってるのか?」

「そう! そうなの!」


 お父さんがちゃんと気がついてくれて嬉しい。軽く振ってみたりしてくれる。


「お父さん! 何が入ってるか当ててみて」


 そう言って推測させるが、『わからないな〜。降参だ』とすぐ諦めてしまった。


「これはね〜……」

 と、焦らすように言いながら、クッキーを一枚噛んでみる。


 そうすると、中からハートのチョコレートが出てくる。


「どう? チョコレートが入ってるの。売れると思うんだけど……」


 そう言って上目遣いで聞いてみる。

 お父さんは次第に真剣な表情になる。


「……そうだな。試してみよう。これは面白そうだ」


 そう言ってくれたので、この日から小箱クッキーの販売を始めた。





 何回か試作をして早速商品化。試作と言ってもシンプルなつくりなので、つなぎ目にする砂糖の配分を変えてみたくらい。クッキーは今までうちのパン屋でおまけのように売っていたものの形を少し変えて使う。


 中に入れるチョコの形を変えたりしてみたり、何が当たるか分からないという商品にしても面白いかも。かわいくラッピングして売れるように、袋とかリボンも新しく用意する。


 さっそく販売してみたら、爆発的なヒット……にはならなかった。でもご近所さんにはひっそりと流行ったみたい。近所のお姉ちゃんにも『贈り物に最適!』とほめてもらった。


 よく軒下で椅子に座って、煙草をぷかぷか吸っているワニのおじさんにもあげてみる。しげしげと小箱クッキーを眺めた後、ポンポンと頭をなでてくれた。






 以前ほどは客足は戻らないけれど、常連さんはぽつぽつと戻ってきてくれている。

 大繁盛しなくていい。このパン屋が続けばそれでいい。私が大人になってもここで働いていられるといいな。

読んで下さり、ありがとうございます。

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