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第2話

「あやさ…大丈夫?」


「ん?う、うん…夢見最悪なだけ」


「それ、大丈夫じゃないし」


昼休み

賑わう食堂の一角で、仁奈が小声であやさに話しかける

それを受けてあやさは、口に運ぼうとしたカレーライスを一旦置き、苦笑いをしながら返した

頬を軽く膨らませながら大丈夫じゃないと仁奈が言うが、あやさは苦笑いのまま水を一口飲んだ


いつも食事を共にする三葉はクラス委員の仕事があると不在で、玲央と葉琉は頼んだ品が時間を要する物だったらしくまだ食事の受け取り口付近に待機している

あやさと仁奈が2人で話すタイミングは今しかなかった


「あいつの夢でしょ?あの、最低浮気男の」


「まぁ、ね

私もだけど、仁奈も大概あの人嫌いだよね」


「親友を傷つける人、好きになる要素ゼロだって!!むしろマイナス、大嫌い」


楽しげな空気の食堂で、物騒な会話をしているが周囲には聞こえないのか気にする者はいない

この会話だけ聞いていると、あやさに恋人がいて振られたように聞こえるだろう

しかし、2人にとっては、大きな意味があるのだ


「ありがとね、仁奈

あの人の記憶は最悪だけど、こうして共感できるのは安心する」


「あやさ…っ、言って!!なんでも言っていいんだからね!!」


「仁奈、声っ、声」


「あ、あはは、ごめんなさーい」


まだ少し悲しげな表情だが、あやさはしっかりと仁奈の目を見ながらそう言う

仁奈がブンブンと首を振りながらつい声を大きくしてしまい周囲から少し視線が集まる

あははと苦笑いしながら周囲に謝れば、皆それぞれまた食事に戻って行った


「でも、不思議な縁だよねぇ」


「あいつの記憶は最悪だけど、確かにね」


「前世の記憶、なんてね」


「あやさに再開する前は、私の頭がおかしいのかと思ってたもん」


「同じく」


落ち着いたのを確認してから、あやさがポツリと呟く

気を取り直してオムライスを食べていた仁奈も咀嚼してから小さく笑った

そう、あやさと仁奈には、前世の記憶があるのだ

前世に一緒に過ごし、そして、あやさが恋人に手酷く振られるのを目の当たりにした

朝叫んでいたリアードと言う名前の男が、その恋人だった

あやさは生まれ変わった今世でも、リアードに傷つけられた悪夢に悩まされているのだ

中学で仁奈に再開するまでは、ずっと1人でこの記憶と戦ってきた

今は、こうしてこっそりとだが話ができるだけ、気持ちが軽くなる


「前世はあれとして…私はそんな教訓を生かして今回はあんな人に振り回されず、自由に人生を楽しみたいんだよねぇ

それで、バリバリ働いて老後は田舎でゆったり過ごすの」


「平和が1番よ」


少し年寄りじみた口調でゆっくりと言うあやさに、仁奈もうんうんと頷く

華の女子高生の会話とは思えないが、2人は至って真剣だ


「おー、いたいた

あれ?まだ食べ終わってなかったのか?」


「あ、おかえりなさい

えへへ…ゆっくり話し込んじゃって」


不意に後ろから声がかかり、あやさが振り向きながらそう答える

どうやら、葉琉と玲央も漸く食事を受け取れたらしい

葉琉は生姜焼き、玲央は八宝菜の定食をそれぞれテーブルに置きあやさ達のテーブルにつく

昼食もグループで食べる事は決まりではないが、なんとなく流れで学園全体が自分達のグループで固まって食べている事が多いのだ


「あやさちゃん、顔色良くなったね」


「へっ?そう、かな?」


「うん、やっぱりあやさちゃんは笑っている方が似合うよ」


「あ、アリガトウゴザイマス」


席について直ぐに、玲央があやさをじっと見ながらそんな事を言ってきた

仁奈と話して気が抜けたのか、と思いつつそうかなと首を傾げるあやさに、玲央は恥ずかしげも無くそんな台詞をさらっと口にする

若干照れながらも、カタコトでありがとうと言えば、玲央は満足そうに笑った


「ちょっと、あやさに変な事言わないでよね」


「やだなぁ、本当なのに

あ、仁奈はいつも通り面白い顔してるから大丈夫だよ」


「何がどう大丈夫なのかなぁ?それは」


「それはご想像にお任せするよ」


「あー腹立つっ」


「食事中までケンカするなんて仲良いよなお前ら」


「どこが!?」



仁奈が玲央を軽く睨みながらそう言えば、慣れているのか全く臆さずに言葉を返す

幼馴染2人の会話は、いつもこうだ

そんな2人やそれに時折茶々を入れる葉琉

そんなBGMを聴きながらあやさは朝の嫌な気持ちはすっかり無くなり癒やされている事に気付き、また笑顔になるのだった


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