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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

勇者は世界を見捨てる

作者: ザギルレン

配信者ですので、言葉のミスが目立つかもしれません。悪しからず。

 はしゃぎ疲れて昼寝した俺は、母の息苦しい声を聞き、目を覚ました。


「はぁ・・・はぁ・・・はぁ」 瞼の上から感じる日差しの強い光が遮られると、僕はそっと目を開けた。

「おはよう・・・おきた・はぁ・はぁ、はぁ」 見下ろす母の麦色の髪の三つ編みが、するりと解けていく。「ごめん・・・ね。こんな世界で、産んでしまって」

 糸よりも細くシルクのように滑らかな髪が、頬に触れると、生暖かい水が母から溢れた。

「ごめん・・ね?・・・おかあっさんの、わがままで・・・あなたをっっゔっ!ゔんでしまって」

 嗚咽混じりの母の声は、必死に何かを伝えようとしていた。しかし、あの時の、幼い俺には上手く聞き取れず、母の息が弱々しいなっていくのを、ただじっと見ていることしかできなかった。

「つよくっ・・・はぁ・・・はぁ・・・生きて・・・ははのっ・・・さいっご・・・のっねがい!」

 古木の屋根から降り注ぐ夕暮れの日光が母を照らすと、三つ編みが全てほどけ、体は崩れる事なく、母は俺を見ながら息を引き取った。

 俺は冷たくなった母の膝から起き上がり、毛布をかけてあげようと母を見た時、鳥肌が立った。

 お腹にポッカリと空いた大きな穴の先には、ボロボロのキッチンがあったはずの壁が無くなっており、荒廃した外の景色が見えた。

 僕は、この家には必要がなくなってしまったドアをそっと開けると、その先には石に変えられた父が、剣を持って構えていた。

 そこから俺は、人間は絶滅寸前なことと世界の絶望的な状況を知った。

 そして現在、俺は全てを成し遂げた。だが全ては遅すぎた。

 俺は、呪いを振り撒ける悪魔を根絶し、全てを征服しようとした神を殺し、人々を外的から守る為に肉食動物を絶滅させた。俺は、人間と一種族、草食動物を残して全てを根絶させた。

 だが、俺は全てを終わらせたあと知ってしまった。人間の害的になる物を消したこの世界には、人間が俺しかいないことを。

 だが不思議と、今は心地がいい。まるで母に近くで見守られているような安堵を、久しぶりに感じられる。 後ろから抱きしめられる重みがのしかかる。

「なにを考えてたの?」

 女の子のような声が耳元で囁かれると、俺の天使が背中にいる事を理解した。

「この世界の事を考えてた」 素気なくそんな事を口にすると、俺の天使は「またそんなかっこいい事言っちゃって〜♪」と頬を突きながら茶化してきた。可愛い。

「でもこの世界・・・一体どうなっちゃうんだろうね」

 俺の愛する天使が、少し不安をもらすと「ま、もう俺たちには関係ない事だ」責任を放棄する発言を堂々としてやった。その答えに俺の嫁は女神の微笑みの声を上げた。愛らしい。

 天使は、餅のように柔らかくスベスベな頬をすりすりしてきた。そのあまりの心地良さと甘いミルクの香りに俺の脳は思考停止してしまった。

 緩い微風が枯れ葉を連れて通り過ぎると、色々な事を思い出す。

 魔物と悪魔を根絶やしにしている最中に出会った俺の天使との思い出。最後の一匹の悪魔が死際に放った呪いで世界が終末へ向かったこと。神の最後の足掻きで放った雷で人類が俺だけになったこと。

 俺がどんなに死にかけ、過酷な道を選んだとしても、俺の愛しい人はいつも側にいてくれた。


 崖から世界が荒廃していくさまを見ていると、追い風に煽られ麦色の長い髪が、俺の視界にはいる。 俺の天使が唾を飲み込む喉越しを間近で聞いた。正直興奮した。

「僕、君に言わないといけない事があるんだ」

 白く細い柔らかな腕が離れていくと、俺は天使に振り向いた。

 白い無地のワンピースを着た俺の天使が一瞬、目を逸らした。

「覚えてる・・・かな。悪魔を二人で滅ぼしてすぐ、君に告られた後のこと」

「あぁ、覚えてる。俺が子供が欲しいと言った事だろ?」

 俺は天使にプロポーズし、オッケーをもらった。そして、悪魔を消したのをきっかけに子供を欲しいと伝えた。その時彼女は、天使は多種族との交尾では孕めないと俺に告げた。

「それならもう気にはいない。体質的なものなら仕方がないからな」白い羽が美しい俺の天使は、手を重ねて合わせてソワソワし出した。「実は、あれ、嘘なんだ」

 俺は込み上げる期待と喜びのあまり、何故あの時、嘘をついたのか言及する事をせず。流れに任せるように一言だけ「うそ?」と告げた。

「うん。うそ。人間と天使の間で、赤子を授かったっと言う事例もあるんだよ?」

「なら、本当は子供を」

「でもごめん。僕は無理なんだ」俺は、てっきり子供を作りたくなかったのだと思った。しかし、次に放った俺の天使の言葉で俺は納得した。

「僕は、男だから」

 ワンピースを捲り上げながら言ったその言葉は、疑う事すら出来ないほどに、どうしようもない真実だった。「僕も、本当は孕みたい。君と僕の子供を産みたい。君と僕の血が交わった愛の結晶である子供達と遊びたかった。でも、それは無理なんだ」

 天使は、ワンピースを捲り下ろす。

「本当は、僕が男である事を告げるのも怖かった。僕の大好きな人が、離れて行ってしまうかもしれないと思うと、胸が締め付けられて、考えるだけで苦しかった」

 俺は泣き出した天使が、何か言おうとした瞬間、そっと抱きしめて「愛してる」と告げた。

 俺の天使は、それ以上言うことを止め、その純白に輝く羽で俺を包み込み「僕も、大好きだよ」と俺にだけ伝わるほどの声でーーーーー・・・・・・・・・



「ほら!起きて!早くしないと、学校に遅れるよ!」

 俺は目を開けるとと一人暮らしをしている事を思い出した。そして、あれが夢である事を理解すると、何故か気持ちが凹み、のろのろとベットから起き上がった。

 寝室から出ると、こじんまりとした一人暮らしには丁度良いぐらいのリビングに、ニトリで買った机が目に入った。

「もー、相変わらず。マイペースだね。君は♪」

 台所で洗い物をしている女性の声からは、どこか嬉しそうな感じが伝わってきた。

 俺は席に着き、用意された理想的な朝食の前に、箸で卵の黄身を割った。

「お前はいつも楽しそうだな」

 ソーセージを濃厚な黄身と絡ませ口に運ぶと、女の表情筋が動いた。

「え〜、そうかなぁ〜♪」

「少なくとも俺といる時は、いつも嬉しそうにしてるな、なんでだ?」

 俺の問いに中学からの同級生の女は、頬を赤柄め「君の側に居られるだけで、私は嬉しいんだよ」と、顔を傾け、金髪の長い髪を揺らした。

「ご馳走様」

「あ、食べ終わった?ならその食器ちょうだーい。私が片付けるから、さきに制服着替えちゃって」

 こんな夫婦みたいな生活をしているが、一応これでも一人暮らしであり、合鍵を渡している理由もピッキングして無理矢理入られるぐらいならと渡しただけだ。

「よし、着替えたぞ」

「あ、ちょっと待って!洗濯機だけかけちゃうね」

 だが最近、俺は不思議な感覚に陥る事がある。

「よし!準備出来たよ♪」「じゃ行くぞ」

 俺は、この生活が永遠に続けば良いと思っている。人間嫌いの俺が、この女となら居てもいいと思っているのだ。一体この女の何処にそうさせる要因があるのか、今の俺には分からないが、そんな事は考えなくてもいい気が、最近はするのである。

 玄関のドアノブに手を置いた瞬間「ちょっと待って」と女は言い、一生懸命背伸びして、俺の耳元で囁いた。

「この世界では、孕めるよ♪」

 俺は夢の事を思い出しゾワゾワと鳥肌が立つと共に、俺の心臓はバックバクに鼓動した。

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