スプーンと流れ星 3/3
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ママのお話は、そこで終わりでした。
坊やは、悲しい気持ちでママを見あげます。
「それからどうなったの。ふたりはもう会えないの?」
「さあ、リトル・シュガーはどうしたかしら。
銀色のくつをはいて、舞踏会にいって、すてきな王子さまとおどって…… キッチンのスプーンのことは、忘れちゃう?」
坊やはびっくりして、大きな声でいいました。
「ちがうよ! お城に入らないで、ウェイビーをさがしにいくんだよ」
「それじゃあ、ふたりはまた会えたのね」
「そうだよ、ぜったいに会えたよ」
するとママは、キッチンをきょろきょろ見まわしはじめました。
お鍋をあけて、ケトルをさかさまにして、くつを隠したミルクポットものぞきこんで……
「ウェイビー、ウェイビー、スプーンの妖精くん。
お空の冒険からお帰りかしら。坊やは見なかった? やんちゃなスプーンの男の子」
「待って、ママ。スプーンだったら、きっとここだよ」
坊やはいそいで引きだしを開けます。
そしたらありました!
持ち手の先が波みたいになった、元気いっぱいのティースプーンが。
「ほら、ウェイビーはここにいる。消えてなんかないよ」
坊やがスプーンをかかげると、ママがまっくらの窓を指さしました。
「坊や、見て。キラキラの光が落っこちてくる!」
ほんとうに魔法みたいに、キッチンに星が流れました。
ピンク色をしたちっちゃなお星さま。ランプのあかりにきらめいて、
「だれか助けて!」
と叫びます。
坊やは夢中でスプーンをさしだしました。
「リトル・シュガー、あぶない!」
ころん、とかわいい音が響いて。
銀色のスプーンは、甘いお砂糖の星を、しっかり受けとめました。
「さあ、ウェイビー。
大好きなリトル・シュガーに会えました。最初になんて伝えるの?」
ママが顔をのぞきこみます。
坊やは、スプーンの精になっていいました。
「ごめんね……」
ママはにっこり笑います。
「ものがたりは、これでほんとうのおしまい。坊やも、ウェイビーみたいにいえるかしら」
坊やは、けんかしてしまったお友だちを思い出して、うなずきました。
「うん、いえる。今すぐいえるよ。夜の羽が飛んできたって、怖くないよ」
ママのあたたかい手が、坊やの手をつつみました。
「きっと、お友だちはおやすみしているわ。会いにいくのは、明日にしましょうね」
お部屋に戻った坊やは、うずうずしてベッドにもぐりこみます。
ごめんねをいって、いっしょに楽しく遊ぶんだ。
はやく朝がくるといいな……
けれど、坊やは思い出しました。
小さなスプーンと、そこにのったこんぺいとう── ウェイビーとリトル・シュガーを。
ふたりは、キッチンでひみつのおしゃべりをしているかもしれません。
「やっぱり、ちょっとだけ、夜が長くてもいいよ」
坊やは、そうつぶやくと、満足して目をとじました。
それから、ぴかぴかのお日さまが起こしてくれるまで、ぐっすり眠りました。
(おしまい)
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!