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スプーンと流れ星 3/3

‥…¨°∵☆。°゜‥¨°∵☆。°゜‥…


 ママのお話は、そこで終わりでした。

 坊やは、悲しい気持ちでママを見あげます。

「それからどうなったの。ふたりはもう会えないの?」


「さあ、リトル・シュガーはどうしたかしら。

 銀色のくつをはいて、舞踏会にいって、すてきな王子さまとおどって…… キッチンのスプーンのことは、忘れちゃう?」


 坊やはびっくりして、大きな声でいいました。

「ちがうよ! お城に入らないで、ウェイビーをさがしにいくんだよ」

「それじゃあ、ふたりはまた会えたのね」

「そうだよ、ぜったいに会えたよ」


 するとママは、キッチンをきょろきょろ見まわしはじめました。

 お鍋をあけて、ケトルをさかさまにして、くつを隠したミルクポットものぞきこんで……

「ウェイビー、ウェイビー、スプーンの妖精くん。

 お空の冒険からお帰りかしら。坊やは見なかった? やんちゃなスプーンの男の子」

「待って、ママ。スプーンだったら、きっとここだよ」

 坊やはいそいで引きだしを開けます。


 そしたらありました!

 持ち手の先がウェイブみたいになった、元気いっぱいのティースプーンが。


「ほら、ウェイビーはここにいる。消えてなんかないよ」

 坊やがスプーンをかかげると、ママがまっくらの窓を指さしました。

「坊や、見て。キラキラの光が落っこちてくる!」


 ほんとうに魔法みたいに、キッチンに星が流れました。

 ピンク色をしたちっちゃなお星さま。ランプのあかりにきらめいて、

「だれか助けて!」

と叫びます。

 坊やは夢中でスプーンをさしだしました。

「リトル・シュガー、あぶない!」



 ころん、とかわいい音が響いて。

 銀色のスプーンは、甘いお砂糖の星を、しっかり受けとめました。



「さあ、ウェイビー。

 大好きなリトル・シュガーに会えました。最初になんて伝えるの?」

 ママが顔をのぞきこみます。

 坊やは、スプーンの精になっていいました。


「ごめんね……」


 ママはにっこり笑います。

「ものがたりは、これでほんとうのおしまい。坊やも、ウェイビーみたいにいえるかしら」

 坊やは、けんかしてしまったお友だちを思い出して、うなずきました。

「うん、いえる。今すぐいえるよ。夜の羽が飛んできたって、怖くないよ」

 ママのあたたかい手が、坊やの手をつつみました。

「きっと、お友だちはおやすみしているわ。会いにいくのは、明日にしましょうね」



 お部屋に戻った坊やは、うずうずしてベッドにもぐりこみます。

 ごめんねをいって、いっしょに楽しく遊ぶんだ。

 はやく朝がくるといいな……


 けれど、坊やは思い出しました。

 小さなスプーンと、そこにのったこんぺいとう── ウェイビーとリトル・シュガーを。

 ふたりは、キッチンでひみつのおしゃべりをしているかもしれません。


「やっぱり、ちょっとだけ、夜が長くてもいいよ」

 坊やは、そうつぶやくと、満足して目をとじました。

 それから、ぴかぴかのお日さまが起こしてくれるまで、ぐっすり眠りました。



 (おしまい)

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

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