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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

百年の恋が終わった

作者: どらどらとんとん

 (わたくし)はリオドネル王国で王族を除いた貴族では最も高位である公爵令嬢ですのよ。

 かく言う私の結婚相手ともなりますと王国の王族か他国の王太子で無ければと両親より厳しく教育を受けまして私の婚約者は幼い時に我が国の王太子殿下と決まりましたの。

 特別な祝福を受けた家門なので当然なのですけど。


 ❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎


「アンリエッタ・モルタリア公爵令嬢、今この時をもってリオドネル王国王太子ローランド・リオドネルとの婚約を破棄するものとする」


 パチパチパチパチ⋯⋯周りを取り囲む側近と言われる面々とローランド殿下にべったり張り付いたショッキングピンクの髪が目印の男爵令嬢モーリーン・バルバス令嬢が下品にも歓声と拍手を挙げていらっしゃいます。


「やった!言えた!」

 等と聞こえてきますが王太子ともあろうお方がそんな調子で大丈夫なのでしょうか?


「婚約破棄と言うことで宜しいのですか?」

 私は問いかけます。

「そうだ」

 興奮冷めやらぬ五人に向かって疑問を投げかけます。


「何故、何の落ち度もない私が婚約破棄などされなければなりませんの?」

「貴様、言うに事欠いてこの可憐なモーリーン嬢を追い詰めたであろう」

()れはどう言うことですの?」

此処(ここ)にいる側近達によって全て真実であると確認されている、申し開きがあれば申してみろ」

 何だかお芝居でも見ている様ですわ、中央の五人でワァワァ盛り上がっているのですもの。


「申し開きも何も思い当たる事がございません。もしかして男性にその様に、はしたなく体を寄せてはいけませんといった事でしょうか?それとも胸部をその様に出してはいけませんと言った事でしょうか、それとも⋯⋯」

「こ、()の方は権力を笠にきて私を虐めるのです。助けて下さい、殿下ぁ〜」

「認めたとみなす。よって此処に婚約の破棄と新たな婚約を宣言する!」

「⋯⋯」

「私、ローランド・リオドネルは男爵令嬢モーリーン・バルバスを新たな婚約者とすることを此処で宣言する!」

「殿下カッコイイ〜」

 ワァワァ中央の五人だけで盛り上がっておりますわ。

 今日は卒業式、他の貴族の親達も我が子の晴れ舞台を見ようとわざわざ時間を作っておいでになっているというのに。

 皆さんの見ている中での宣言でしたわ。

 卒業式を台無しになさりたいのかしら?

 一生一度の思い出になるこの場を。

「確かに婚約破棄の件了承(りょうしょう)致しました。後悔はなさいませんように」

「何を言う、百年の恋だと言うのに」

「百年の恋ねぇ。分かりました、見せていただきます」


 ❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎


 私はそう言うと中央の五人を同情の目で見た、精々(せいぜい)百年の恋楽しんで。

 くるりと(きびす)を返すと中央の扉から堂々と出る。

 会場は水を打ったかのように静まり返り気のせいか、皆がジリジリ後ずさっている。


「今日は卒業式でもあるが私の新たな婚約の記念日となる。皆も祝ってくれ」

 そう言った途端中央に陣取っていた五人の容姿が激変する。

 風も無いのに自慢の金髪が塊となって落ちていく、それに伴って頭がヒヤリと寒い。

「⋯⋯私の髪?私の髪では無いかぁー!」

 王太子は髪がサラサラ抜け落ちて残った頭髪は僅かになった。


 宰相の息子であり後継と目されているバーナードは鼻がみるみる内に横に成長し顔の大部分を占めた。

 フガフガ言ったりどう言う事かブヒとか言っている。


 騎士団団長の近衛騎士を父に持つジョイベルドは長かった足だけがみるみる縮んだ、それに伴って身長も縮み余ったズボンの裾でスッテンコロリンと無様(ぶざま)に転んだ。


 国内一の商会の息子ルイスは顔がみるみる風船の様に膨らみ目鼻口が中央にギュッと勢揃いした。

 何とも子供に人気の出そうなユーモラスな顔付きに変わった。


「ぎゃぁー化け物達近寄るなぁー!」

 それを間近で見た男爵令嬢モーリーンは悲鳴を上げて観客と化していた皆さんの方向へ逃げようとした。

 ところがバリバリバリバリと聞いたこともない様な大音量でブチィーと凄い音がしてコルセット諸共ドレスが裂けた。

 その上で巨大な脂肪がブルンと飛び出して元の三倍ほどの大きさになった。

「いやぁーーーー」

 あれほど注意したのにこれ見よがしに見せつけていた胸は下から酷使された胸パットが四枚ほどポロリと落ちて見るものの涙を誘った。


 ❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎


「呪いか、呪いなのか?」

 見る影も無い頭を抱えながら王太子ローランドが叫ぶ。

「言ったじゃありませんか、モルタリア公爵家を敵に回してはいけませんって」

 家臣の一人が叫ぶ。

「何の事だ?」

「敵意を持つと発動するんです、自動的に。子供でも知っています。常識ですよ」

「⋯⋯もしかして女神の呪いか」

「その通りです。今迄はアンリエッタ様が抑えていらしたんですが、婚約を破棄されたので抑えるのを止められたのです」


 あちこちから悲鳴が上がっている。

 王太子ローランドの言う百年の恋とやらは一瞬で醒めた。


 しかし彼女は言ったのだ。

「百年の恋ねぇ。分かりました、見せていただきます」と。


「見せなければどうなる?」

「さぁ?三代前の時は元には戻られなかったと聞いております」

「一生このままか?」

「私には何とも⋯⋯」

「神よ髪を返したまえぇー!」

 虚しい祈りの声は()に届かなかった。

もしよろしければ他の作品もありますので遊びに来て下さい。

「ラブレターを~」100話完結のシリアス謎解き?系。

「間引き草」は毒親持ちの恋愛系、現在連載中。

「からくり知れば」は短編側妃苦悩系、です。

お好みに合えば嬉しいです。

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― 新着の感想 ―
[一言] 彡⌒ ミ (´・ω・`) また髪の話してる
[一言] 王子、髪がなくなるだけって他のメンバーより軽目ですね。 髪の毛だけだったら鬘とかもあるし、いっそ、体毛全てとかのほうが他との釣り合いいいような気がしました。
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