98 墓守
「まさか……これで特に裏も無いだけでリエルも普通だったら僕は何も言わずに帰ったよ。仕事に私情は挟まない主義だからね」
やっぱりそうか。
何か裏があると思って付き合わないとシュタインとはやってなんていられない。
ある意味……ルナスと似たような奴なのは間違い無い。
ルナスの方が裏表無いから安心感はあるけどさ。
「となると何か理由があるのだな?」
「まあね。で、その話題に繋げるんだけど勇者ルナスさん……面倒だからルナスさんと呼ぶけど、僕が何で君みたいなタイプの執行人であるのかが関わってくるよ」
「私の様なタイプの執行人か」
「さて、君みたいな人が最も相手にすると厄介なのはどんな相手かな?」
「ふむ……勇者の怒りで味方を犠牲にして乱用する外道が敵か……わからんな」
勇者の怒りに弱点があってシュタインはそれをピンポイントで狙える力を持っているって事……なのか?
昔馴染みだけど、俺はシュタインがどんなスキルを所持しているか知らない。
ただ、執行部隊なんて所に所属しているって事は相当優秀なスキルを持っているって考えて良いよな。
しかしルナスの言う通り、思い付かないな。
贔屓目を付ける以前に勇者の怒り状態のルナスの強さは尋常じゃない。
あれに勝てる奴がいるのか疑問だ。
そりゃあ迷宮のもっと深い階層に行けばその内現れるかもしれないが、人間でルナス以上の相手を見た事が無い。
「僕の所持するファーストスキルは墓守さ。これで分かるんじゃないかい?」
「他に俺の把握をすり抜けられる潜伏スキルを持ってるだろ」
「ご名答。外道冒険者の暗殺が仕事だからね。潜伏しないと始まらないよ。セカンドスキルが隠密さ」
うへぇ……潜伏系上位のスキルだぞ。
墓守の方はわからないけど隠密ってだけでレンジャー系じゃ上位に入れる。
シュタインの奴、とんでもない当たり構成をしている。
教会所属になった時点でそうなんじゃないかとは思っていたけど、エリートって奴だな。
「ふむ……」
ルナスが何か分かったような顔して実は何も分かってないって態度を取っている。
「わかりやすく説明するための前段階の説明が必要だね。ルナスさん、あなたは盗賊とか人間を殺めた事はあるでしょ?」
「無論だ。冒険者をやっていれば自然とそうなるだろう」
「そうだね。ならリエルと一緒なんだし、勇者の怒りの過剰火力で仕留めた際に感じた事は無かった?」
っと、シュタインはルナスが仕留めた魔物の亡骸を指さして訪ねた。
「人はどれだけ強力な攻撃を食らわして殺しても死体がしっかりと残る。絶命直後は傷つけられない、という奴だな」




