95 ドラーク残党
「……いや?」
シュタインの探りにルナスは素知らぬ態度で答える。
「まあ正直に云うと勇者ドラーク一行の縁者が勇者ルナスさんに疑惑を上げたんだけどさ」
うわ……勇者ドラーク一行の残党、迷宮に一緒に居なかった奴がいたのか。
考えて見れば派閥とか人員とか考えるとあり得ない話じゃない。
新入りの宮仕え勇者を派閥に取り込むなり処理するなりの話はしていただろうし、迷宮に潜って行った勇者ドラークは戻らず、俺達がひょっこり戻って当たり前のように過ごしていたら何があったのか察する事は出来ずとも勇者ドラークが返り討ちにあったんじゃないかって疑惑は強まる。
しかもあれからどれだけ日数が経過した?
「で、勇者ドラークに来た依頼を達成して戻ってきちゃった訳でしょ? これは何かあるんじゃないか? って事になってね」
挙げ句、ドラークが達成しなきゃいけない仕事もやってしまった訳で……ドラーク派閥の連中からしたらルナスは敵としか思えないだろう。
派閥の大将を何かしらの手段……勇者の怒りで返り討ちにしたんだろうって想像するのは容易い。
頭を失ったドラーク派閥の縁者がどう動くかと言ったら、な。
まだ残っている権力で弾劾を行う……か。
「随分と想像力が豊かなのだな。勇者ドラークが予想外に迷宮に挑んでいるのではないか?」
「そうだね。そんな意見もあるけど、縁者の者は権力を駆使してあなたを潰そうと躍起になってるよ。それで派遣されたのが、僕って事になるのかな」
ケロッとした声音でシュタインが答える。
「そんなあっさり暴露して良いのか?」
「まあいきなり僕が派遣されるなんてね。あっちも出す物出して全力で潰そうと躍起になってるって事だよ。真相が何であるかは別にして……勇者ルナス、それとリエル。王宮の勇者闘争は戦いだけじゃないから、ここでしっかり迎え撃たなきゃいけないよ」
「それを君はリエルの友人として忠告に来てくれたのかな? そもそも君が派遣されるとはどういう事なのだ? 君の立場からして聞かなくては判断も付かんな」
「ああ、そっちの自己紹介がまだだったね。僕は教会所属、外道冒険者執行部隊なんだ」
教会ってプリーストに始まり、神様を信仰する所だ。
俺は……まあ、死んだフリなんてハズレのファーストスキルを授かった所為で信仰心なんて消し飛んでしまったけれど、プリースト関連の職業の元締めな所なのは変わらない。
「ほう……風の噂で聞く執行部隊とやらか。実在したのだな」




