94 外道勇者疑惑
「なに? 男だと?」
「そうそう。俺に解呪の方法とか教えてくれた知人だよ」
「ふむ……私は君の言葉ならなんでも信じよう。おい少年、ちょっと」
「はいはい。まあ勘違いされやすいからねー」
ルナスがシュタインの方へと行き、なぜかシュタインと一緒に背を向けて何やらごそごそとし始めた。
「……なるほど、貴様が男であるのはわかった」
何度も頷きながらルナスが俺の方に戻ってくる。
おい。何を確認してきた?
何を納得した。
なんとなく想像が出来るけど平然と確認出来るルナスの感性はどうなっているんだ。
というか信じた割に確認を取ったな。
「それでリエル、コイツは一体何なんだ?」
「何なんだと言われても……同郷の友人だよ」
俺に呪いの解き方とか色々と教えてくれた友人でもあり、まあ……故郷に居た頃は色々と遊んだ、腹を割って話せる間柄だった。
スキルを授かって色々とあった内に疎遠になって音信不通になってしまったんだけどさ。
最後に聞いたのは……教会所属になったという話だ。
「リエルと会うのは5年ぶりかな?」
「そうだな。お前はあの頃と全然見た目が変わってないな」
「祖母がエルフだからねー。シュタイン=フラウィスと言うよ。以後よろしくね、勇者ルナスさん」
「ヌマ」
「ふむ……で、そのリエルの昔馴染みがこんな迷宮の深い所でいきなり現われるというのはどういう事だ」
確かにそうだ。
これが地上の何処かで偶然再会したとかなら、特に疑問にも思わなかった。
だけどシュタインは迷宮の28階で突然姿を現して声を掛けてきた。
疑問に思わないはずはない。
「それには色々と理由があるんだけど、まずは順番に話していかなきゃいけないかな? こっちの話を聞いてもらいたいからね」
「ほう……聞こうではないか」
「まず何を話すべきかと言うと、勇者ルナスさん。君に王宮内でとある疑惑が掛かっている感じだね」
「疑惑?」
なんとなく嫌な匂いがする。
勇者ドラークが話していた王宮内の派閥争いとかそんなきな臭い話の匂いだ。
「勇者ルナスさんが所持しているスキルは勇者の怒りで、仲間を犠牲にして今まで困難な依頼を達成してきた外道の問題勇者なんじゃないかって疑惑だね」
ああ……やっぱりその辺りの疑惑って王宮側も疑いを持つよな。
「聞いたかリエル、王宮が私を疑っているそうだぞ。やはり私のスキル構成というのは疑いを持ちやすいのだ。生憎私はそのような事はしていないがな」
確かにルナスの言っている事は間違い無い。
何せ俺の死んだフリでその力を振るって窮地を乗り越えてきた訳だしね。
マシュアやルセンに関しては突然パーティーを抜けたって扱いで処理してある。
まあそれが疑わしいのは事実だが。
「そうだね。ちなみにその疑惑に声を上げた勢力がいるんだけど、心当たりはある?」




