92 把握突破
「いやいや……これくらいはそこまで難しくないでしょ。ルナスも下処理はしてくれたんだし」
冒険者学校で最低限のサバイバルは学ぶ……まあ、身についている人って案外いないらしいけど。
「ただ、倒した魔物を全部食べていく訳にはいかないから程々にな。ついでに迷宮に住み着く魔物だから毒とかも少しはあるんだ。まあ毒抜きするけど」
「そうだな。やっとの事、常時勇者の怒りが出来る環境なのだ。どんどん進んで行くぞ」
「それも良いんだけどクマールのスキルやLv上げも段階を追って行かないと」
幾ら安全な状況とは言ってもクマールは俺達の中で一番弱い。
どんどん進んで思わぬ所で致命傷を受けては非常に厳しい。
「ヌマ?」
「わかっている。クマール、リエルを師としてスキルをどんどん磨いて行くのだぞ」
「ヌマーヌマママ」
ルナスの言うことがわかったのか、クマールは把握を常時展開し始める。
「ヌマ?」
で、なぜか後ろを振り返り、首を傾げる。
そっちには何も居ないぞ?
「ヌマヌマ」
クマールも特に気にすることなくそのまま顔を前に向けた。
「では行こう。どんどん行くぞ! 次は魔法で一掃する。リエル、他の冒険者が居たら教えてくれ」
「ああ」
28階層は時々冒険者と遭遇することがある階層なのは間違い無い。
中級上がりの上級冒険者パーティーって事になるんだけどな。
そんな訳で俺達は迷宮内をどんどん進んで行く。
もちろん罠や宝箱、薬草なんかも発見して処理を行いつつだ。
遭遇する魔物もルナスはほぼ一撃で仕留めるようになっている。
手始めに炎の魔法、雷、氷と一頻り使える魔法の感覚を再確認するかのようだ。
「ハイホーリーファイア!」
今度は聖なる炎で5体の魔物を一掃してしまった。
「うーむ……この階層では一発で倒してしまうな。やはり歯ごたえが無い」
「そんなに無いなら勇者の怒り無しで戦うか?」
「ここまで楽だとそれも一つの手であるが……」
という所でパチパチパチ……っと拍手する音が聞こえてきた。
「いやぁ……凄いね。素直に賞賛するよ勇者ルナス」
何!?
俺の把握を抜けて近づく奴がいた!?
「何奴!」
「おっと、これは失礼だったね。僕は君達と敵対するつもりが無いからこうして姿を現したんだ。どうか話を聞いてくれない?」
っと、離れた所から声がした。
くっ……しまった。
俺の把握はやはりというか、専門性のあるスキルを持っている相手に気付く事は出来ない。
把握というのは範囲が広いだけで詳しいというスキルじゃない……これが俺の才能が低いと言われる所以だ。
今回もあちらから現れただけで、そのまま離脱されたら気付かなかっただろう。




